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【累計700万PV突破!】タワーオブチューン “人類で唯一人ダンジョンを攻略した男” ☆第10回ネット小説大賞『コミックシナリオ賞』を受賞!!  作者: 鰺屋華袋
第一章 塔の破壊、承り〼

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出来る男のアフター5

 

 全部は聞こえ無かったが……確かに奴等は“今日はギルドには預けない”と言っていた。


「でも……一体どうして?」


 オイラは出来るだけ気配を殺しながら観察を続ける。


「なるほど……掲示板(スレッド)を使う気っすか」


 自由販売掲示版(スレッド)は余裕があれば使うに越した事はない。でも、スレッドの使用はギルドで保管しない理由にはならない。さっきの会話では何かしらの調査が理由みたいな事を言っていたが……


「ええい、分からん」


 これ以上オイラが考えても正解なんか分かりゃしない、それに今重要なのは……


「………良し!」


 奴等は角を持ったままカウンターを離れた。同時にオイラも携帯電話を取り出し、急用を装いつつ査定カウンターの列を離れる。

 

 オイラは気取られない様に注意しつつ待機しているリーダーに電話を掛け……そのまま駐車スペースでメンバーと合流する。


「おい、お宝持ってる奴とあの小娘が一緒に居るってのはどういう事だ?」


 車に乗り込んだ途端、脳筋リーダーが気色ばんだ声で問い詰めてくる。ちょっとは自分の首から上を使えばいいのに……


「そんな事オイラにも分かんないっすよ。でも奴等が一緒に居るって事は、もう正攻法の交渉は絶対無理って事っす。今は奴等を見失わない様にするのが先決っすよ」


――――――――――


 俺は本間さんに案内されて“一攫千金(ゴールドラッシュ)”の駐車スペースに愛車を停め、幌の中から一泊用のボストンとズタ袋だけを手に持った。のだが……俺はほんの少しだけ荷物に細工をして、改めて入口に向かった。 


 既に日は沈んで、少し離れたメインストリートからは歓楽街独特の喧騒が微かに伝わって来る。


「へいらっしゃい!! 何処でも構わねぇから座ってくれや」


 暖簾を分けて引き戸を開けると、カウンターの奥から威勢の良い歓迎が聞こえて来た。それを聞いた本間さんが、


「もう、お父さん! お客さんを連れて行くって言ったじゃない!!」


「おうっ、おかえり環奈……ってお前、世話になってるってのは男か?! おらぁてっきり女のコかと……」


「男の人ならどうだって言うのよ。私の方がお世話になってるのに失礼じゃない!!」


「いや、父ちゃんは別に……」


 親父さん……見た目はゴツいし、日焼で真っ黒だし、如何にも豪快な海の男っぽいのに……どうも娘との力関係は微妙なようだ。

 

「えっと……本間さん。とりあえずその辺にしといてくれねぇかな。それと」


 俺は改めて親父さんの前に進みでて頭を下げた。


「本日はお世話になります。滝沢秋人と申します。急な宿泊予約に対応して頂いて申し訳ありません」


 俺が顔を上げると、親父さんは少し驚いた顔を見せた。が、すぐに表情を引き締めて、


「いや、こっちこそみっともない所見せてすまねぇ。なんでも娘がたいそう世話になったそうで……改めて礼を言わせて貰うよ。本当にありがとう。この通りだ」


 俺よりも更に深々と頭を下げられてしまった。


「いや、それこそ気にしないで下さい。娘さんには俺も世話になってますから」


「そう言って貰えたら何よりだ。さぁ、まずは中に入った入った。とりあえず部屋を用意してあるからそこに落ち着いてくれ。環奈、106号室だ。案内して差し上げろ」


「……は〜い」


「恐縮です。それでは後ほど……」


「ああ、飯の仕込みが終わったら声を掛けるんで寛いでてくれよ」 


「じゃあ、滝沢さん。お部屋に案内しますから……どうぞこちらへ」


 環奈の案内で厨房の隣から回廊で繋がっているスペースを進む。この手の宿泊施設には珍しく個室毎に下足スペースがある部屋がスタンダードの様だ。


「基本的にはエクスプローラーの人達向けの宿を目指して作られてます。人によっては靴やブーツなんかも高額な装備品なので」


「ああ、なるほど」


「じゃあ滝沢さんごゆっくりどうぞ。私は父の仕込みを手伝って来ますから、夕食にはお声掛けしますので……」


 環奈嬢はそう言って部屋を出ていった。俺は彼女が部屋を離れていく足音を確認し、静かにイヤホンマイクに向かって声を掛けた。


「ふう……なあP(プラネット)D(ディレクター)」 


『何でしょう?』


「今日は稼働中のタワーに初めて入った訳だが……お前さん手応えとしてはどう見る?」


『……仕留めたアーマーバッファローは討伐難易度としてはまだまだ低い部類です。しかし回収出来たエネルギーリソースはそう悪くありませんでした。まだまだデータ不足ですが……装備、訓練の見直しを行っていけば仮称佐渡ヶ島タワーの攻略はそう遠い未来の事ではないでしょう』


「そうか、そいつは良いニュースだな。ただ……これから先は、多分俺一人じゃ手が回らない事も増えて行くんじゃないか?」


『ええ、地球上のタワーを全滅させる事を想定するならタキザワ一人ではかなり難しいでしょう』


「OK、そいつが今後の課題だな。それと……今日の一件、()()()()()()()()()()()尻尾を出すと思うか?」


『そちらに付いては……確率が高いとは言えませんね。ただ、もし釣れなくてもこちらにはデメリットはありません』


「ああ……まぁお前さんにしてみればそうだよな。ただな、タワーに付いてのテクニカルな面と違って()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。タワーに挑む時に足を引っ張られたらたまったもんじゃないだろう?」


『確かにそれらに付いての情報収集はまだまだ不完全です。しかも私はあくまでも人の反応をエミュレートしているツールに過ぎませんからいくら検証を重ねても最終的な判断は下せません』


「つまりそれは俺の役目ってことか……まったく、一介の役場職員には荷が重すぎんぜ」


――――――――――


「それで……あなた方はパーティ名“佐渡ヶ島ゴールディズ”がタワーを退出するのに便宜を計ったと?」


 質問している人物の胸には【佐渡ヶ島探検者協会(ギルド)受付F・M(フロアマネージャー)・金子浩一郎】の名札が揺れている。質問されているのは、今日のタワー内担当員で1Fと2Fの退出を担当した者達だ。


 二人はタワー内部の激務を終えてギルドに戻って来た時にタブレットを本部の端末と同期して自動的に報告を上げた。さて後は帰るだけ……という所で上司である金子に捕まったのだ。


「ええ、2F退出の時には直前に滝沢氏と本間氏が個人情報保護を申請していた訳ですが……時間的にまだ情報共有されておらず、また次期退出予定者も許可していたので、捜索願が提出される前提で退出を促しました」


「1Fはそんな騒ぎがあった事すら知らされてねぇし、探検者の捜索願みたいな緊急性の高い案件と退出の順番なんて比べるまでもないだろうよ?」


「いえ……それぞれの対応に不備はありません。ただ、上がって来た報告と相反して本間環奈の“特別捜索願”は提出されていません。つまりこれが意味するのは、元々提出する気がなかったか……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのどちらかという事です」


 ただ、【特別捜索願】の未提出だけでこのパーティの悪質性を問う事は出来ない。


「ふう、どうにも手詰まりですね……」


 その時、特に注目していた訳ではないが、視界の端に映っていた新人の中川が自分のデスクから立ち上がった。どうもこちらの会話が聞こえていた様で、デスクを離れてこちらにやって来る。


「……どうした?」


「えっと……実は、さっき査定を終わらせて帰宅途中のカンちゃんからラインを貰いまして……なんでも金子さんに“俺達の査定の結果”を見といた方が良いとかなんとか……どうも良く分かんない連絡ありましてですね……」


 中川の勤務中の個人端末の使用に付いては後ほど説教をするとして……


「査定結果だと……?」

 

 デスクの端末から現時点までの更新されたフロア情報を閲覧する。目的の情報はさほど時間を掛けずに見つかった。


「これは……」

 

 その情報を見た金子は更に眉間に皺を寄せて……暫く沈思すると開口一番とんでもない事を言い出した。


「中川、今晩飲みに行くから付き合え」


「…………は??」

もし続きが気になるようでしたら☆☆☆☆☆とか貰えたら嬉しいですm(_ _)m

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