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ニセ彼氏の誕生

 初夏と呼ぶにはまだ早い五月晴のある日。

 屋上に佇むのはぽっちゃりちゃんとイケメンゴリ押し関西人だ。

 コの字型のベンチに座る二人。


「な、天音ちゃん 俺と付き合わん?」

「付き合わん?ああ……」


 この軽い告白に、うんともいやとも言わない天音。天音はこのユージと彼氏彼女になってイチャイチャしたいわけではない。ただ彼氏にはなって欲しい。その真意は幸太郎や勝太郎に自分を幼馴染だからと気にかけるのをやめさせる為である。天音なしで、幸せになる幼馴染達であるべきだと。


 ぽっちゃりちゃんは、柔らかほっぺをぐっと引き締め、決意する。


「ユージ君 お願いがありますっ」

「え」

「彼氏のふりをしてください」

「は?」

「幼馴染達と距離を置きたくて。ごめん、こんなお願い変だよね。あくまでフリだけって。やっぱいい。忘れて……」

「いーで。承った」

「え?」

「ふ 俺は天音ちゃんと彼氏彼女ごっこでもいいからしたい」


 この男は阿呆なのか、天音に惚れているのか、はたまたかなりの狼か真相は謎である。

 しかし言い出しっぺの方が動揺しているが、ニセ彼氏の誕生であった。


「じゃっよろしくな。ニセ彼女!天音って呼ぶで。ユージって呼んでや。呼び捨て ね?」

「わ 分かりました……」

 完全に押されているのは天音である。


 ユージは、天音の肩に手を回し頭に手を添え自分の肩に天音をもたれさせる。

「でも忘れんなや 俺はホンマに好きやからな」


 天音は心の中で謝罪する。ごめんなさいと……幸太郎が目標達成すればあなたの記憶から私は消えますと。


 その光景を見たのは、勝太郎であった。ユージも天音も見当たらないから探していたのだ。

 今なら双子ですねと言われるくらい衝撃で変な顔になる勝太郎であった。


 そっと屋上を後にした勝太郎に、杏里が期待を胸に語りかける。


「天音達いた?屋上?」

「…………うん」

 完全に放心状態である。だがしたたか美少女は遠慮しない。

「何してた?まさか告白とか?」

「……よ 寄り添っていた」

「えーっ!!!」


 その喜びに満ちた声に、クラスメイトは反応する。瞬く間に学年中に知れ渡るのである。もちろん幸太郎の耳に入るのはすぐであった。



 帰り道を歩くまあまあ続いているカップルは語る


「天音がユージ君ね〜」

「……ああ 大丈夫かな……」

「何が?」

「天音が」

「なんで?」

「ユージ君て、遊び人とかじゃないのかな……」

「さあ、はじめから一目惚れみたいだったよ。天音ちゃんは天使や〜って。大丈夫でしょ」

「もうっ。こうたろう君、天音の話はもうやめて。」

「あ ごめん。そうだな」



 帰り道を歩くニセカップルは語る


「天音っ俺を好きになる確率は?」

「……ん」

「ひーかなしっ。じやあさ呼んでよっ名前」

「ユージ」

「ふっ 可愛すぎっ!」

 と手をつなぐユージである。全然ニセっぽくないのは気のせいだろうか。


 そして、案の定どんどん疎遠になる幼馴染であった。一番寂しいのは勝太郎かもしれない。

 毎日、カップルの邪魔をせぬよう一人で下校することとなる。

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