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天音という女子

「おねーちゃん おねーちゃん こらっ起きろっ!」

 と天音の頭を叩くのは妹の朱音(あかね)だ。


「んーだから、おにいちゃんって呼んでくれたらさあ 直ぐに起きるからあ」

「なあに言ってんの朝から!遅刻するよ おにーちゃん」

「おはよう 朱音〜」「キモいわ」


 朝の天音のルーティーン、朱音の頭をくちゃくちゃにし戯れた後に、鏡で自身のおっぱいを確認。


「うん……美しいおなごのお山二つ……やっぱり女か」




 キーンコーンカーンコーン


「おいっ こーちゃん。なんで即効フラれてんの!」

「あ、天音 なんで知ってるんだ」

「え いや たまたま見た」

「そうか……声かけてくれたら良かったのに」

「いやいやけっこうションボリして帰ったじゃん」


 と笑い飛ばす天音は次なる作戦を立てるのに日夜頭ん中は大忙しである。


「天音ーっ先輩が呼んでるよ」

 と呼びに来たのは隣のクラスの加美屋 杏里(かみや あんり)

 天音の推しである。天音にとっては杏里は美少女そのもの、性格もよし。つぶらな瞳で前髪の隙間からちょいとのぞくおでこはスリスリしたいツインテール。


「杏里〜今日もかわゆいねっ。」とまじまじと杏里の顔を見つめる天音。

「ちょっと、ほら先輩が下駄箱に来いって、バスケ部のえっとね、足立(あだち)先輩」

「バスケ?勧誘?え僕ら二年だよね」「さあ、ねーその()やめなよッ。」

「あ、また出た……。」

「わたし」

「おっけー」


 天音は、ぼけっと下駄箱に降りていく。


「おはようございます。斉木です」

「おはよう。あのさ、俺のこと知ってる?」

「ああ……足立先輩」


知りもしない先輩に失礼の無いよう、名前を前もって杏里に聞いておいて正解だったのか期待を持たせてしまうのかは天音にとってはどうでもよい。


「お おう 俺さ、君に一目惚れした」

「……………」


この沈黙は告られた為におこる動揺ではなく吐き気のようなものである。

天音の感覚は至ってノーマルな男なのだから。


「あっわりい……いきなりこんなこと言って。また遊びに行こうよ」

「う いやあ あの」

「じゃあな」


 

 天音には告られる事態は珍しくなかった。性格こそガサツではあるが、なんと言ってもルックスが男子の注目の的である。

 白く透けそうな美肌に目が合うとドキッとする強めの二重の瞳は薄茶色。色素が薄いのだ。毛染め禁止の校則に違反しない天然ブラウンヘアである。

 ただ自分の容姿というものはなかなか客観視が出来ないもので、天音はもっぱら自覚していない。

 興味もない、興味はただ一つ『幸太郎にサチあれ』である。



「はあ めんどくさいな」

 とぼやき、やる気ない空気を漂わせ席につく。

 そんな天音を隣の席から幸太郎は気遣う。

「天音 大丈夫?おなか痛いのか」

「ちがうわっ。大丈夫っ。なんでもない。」


 休み時間、また勝太郎がやって来る。


「おいっ こう! まじヤバい ノートかして英語の。俺やってない課題っ」

 と、穏やかな顔でノートを差し出す幸太郎に《《待った》》が入る。


「ダメ!しょーたろ!自分でやれっ。自分の事は自分で」

「なんだよっ天音 おかんかっ。いーよ。杏里のうつすから」

「ダメ!杏里に絡むな このちゃらんぽらんがっ!!」

「はあ?」

「んっはいっ」

 と天音は自分のノートを差し出したのだった。


 勝太郎を甘やかせば、結果いずれまた将来、幸太郎に負担がかかるのではと案ずるがその心配はない。

 天音の課題ノートは間違いだらけである。

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