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出前とヘルシー弁当

 ドゥンドゥンドゥンドゥン

「はい 右 下 回ってージャンプっ」

「ハアハアハア」


 放課後の屋上に響くのはダンスサークルのミュージックと荒々しく乱れる呼吸。

 天音はサークルに入ったのだ。入れてくれたのである。


「天音ちゃん 次の動画でさアニメのOPパロディやるんだ。絶対いい味出してくれると思うわ きみ」

「まじっすか。がんばりますっ ふふ」


 完璧にお笑い担当なのは間違いない。

 それでも天音は楽しんでいると同時に、少し近すぎるターゲット幸太郎から離れるためだ。

 一歩二歩後ろから見守ることにしたのである。

 それにイケメンに囲まれ踊るのはダイエットの近道かもしれない。脳も体も同時に刺激されるのだ。


 もれなく勝太郎もサークル入をしている。勉学に励み過ぎるのを邪魔する魂胆で引きずり込んだ線も否めない。



 ある日の昼休み


 机に出した天音の弁当に注目が集まる。

「え?朱音ちゃんのと間違えたのか?」

 妹 朱音はスリムである。小さな弁当箱の登場に幸太郎の質問は自然であった。


「私の!」

「え」

「ちょっと、控える。あれは食べ過ぎだ。」

 力強く言い切る天音が開けた弁当は、赤や緑黄色をバランス良く彩った女子らしいお弁当であった。

 ささやかにささみのチーズまきを添えたくらいである。


 対する幸太郎には、出前がやってくる。

「はいっ。こうたろう君」

 杏里の手作り弁当である。二人はいつの間にやら急接近か。しかし、付き合っているわけではない。あくまで杏里の好意として贈呈される弁当である。


 だが周りから見れば、もう秒読みだ。手作り弁当など好きでもない相手に作る者など居ない。


「ありがとう」

「あれ?一緒に食べたら?」

 天音は気使う。出前だけなんて虚しいであろう。

 しかし席がない。誰もが今日は教室で食べていた。

 天音は自分の場所を譲り、屋上に移動した。


 屋上にポツリとあるコの字型ベンチに座り小さな弁当箱を膝にのせる。自身の膝の上だとより小さく見える弁当箱である。


「何やってんの〜」

 勝太郎がやって来た。手には水木母さんの弁当。

「なんで来たの?!」

「階段上がるの見えたから。杏里だろ?」

「え、ああ。まあ 席がね」

「おまえー良いやつだな。」

 と天音の頭をわさわさ触る。

「ちょっと、崩れるじゃないっ!」

「え 洗いざらしじゃん」

「まあね。」

「こう、杏里に告られたら付き合うかな」

「さあ、そりゃさ弁当食べてんだから」

「そうだよな。天音はそれでいいのか」

「ん?なんで」

「いや なんでもない。母ちゃんさ、こうの弁当、天音が作ってると思ってんだよな」

「はあ?なんでっ」

「さあ。理想の嫁ちゃんなんだろ。だからさ俺に作ってよ」

「は?なんで」

「ははははっ嘘 俺がつくってやるよ。ヘルシー弁当」

「しょーたろ、きゅうり一本とかでしょ。」

「ははははっ」




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