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初詣

 正月 近所の神社へ初詣に行くのは幼馴染三人。しかし、気の利く天音はちゃんと杏里を呼んでいる。


「ハッピーニューイヤー」「あけおめー」

「ちょっと天音、服着すぎじゃない?」

「うーぶるっさむっ。そんな着込んでないよ。正月太りかな……」


 屋台のイカ焼き、ベビーカステラの匂いに誘惑されながら鳥居をくぐる。そこには心臓破りの階段が待ち受けていた。傾斜も急な長い長い階段。お年寄り用に坂道もあるが、若者四人は階段一択である。


 半分手前でハァハァ言って停止する天音を置き去りにし進む三人。

 幸太郎はここでも近所のお爺さんの脇の下を持ちながら一緒に登る。お爺さんには 是非とも坂道の方を選んでいただきたかったと下の方から見上げた天音は思っただろう。


「ちょ……ハアハア ちょ……待って。誰か……連れてってよ」と天音から声ならぬ声が漏れる。



 後ろにいた中学生の子たちの会話が耳に入る。


「わあ重そっ。社会のゴミだな」

「自堕落な生活してんだろな」


 なんという痛い言葉。まさか自分がそんな言われようをするなんて……優しい世界に身を置いている天音には現実を突きつけられた瞬間であった。


「くそっ」


 天音は後ろの奴らに差をつけぐんぐん登る。

 しかし、辿り着いた先で御神木にもたれハアハアハア。

 軽く呼吸困難だ。


「おみくじする?」と杏里が言うも、天音が居ない。

 天音は呼吸が整う間なく絵馬に夢中であった。


『水木 幸太郎が幸せになりますように 天』

 みんなに呼ばれ、音まで書かずに止められた絵馬は急いで絵馬掛所えまかけどころの隅っこに結ばれた。


 お賽銭をし手を合わせ一行はまたあの階段を下る。


「天音 落ちるなよ」と心配したのは幸太郎である。


 無事に下まで下山し、今度は幸太郎の誘惑がはじまる。


「おっ天音の好きなベビーカステラだ」

「いらん」

「「え?!」」

「あ、イカ焼きの気分?」

「いらん」


 余程中学生の言葉が突き刺さったのであろう。

 しかし、その隣でもう一人胸に刺さっている人がいた。杏里である。

 イジられているだけとはいえ、毎度話題の中心は天音。もどかしい杏里は可愛さ満開でアピールする。


「私りんご飴がいいなあ」

「じゃ買いに行こっ」と言ったのは勝太郎。

 すかさず勝太郎の腕を引っ張る天音。

「こーちゃん行ってあげて〜私らイカ焼き買うわ」

 結局イカ焼きに並ぶ天音と勝太郎。


 天音は遠目から杏里と幸太郎を見守る。

 財布を出す幸太郎。やっぱり容易く奢るのであった。

対する勝太郎は「何枚買うの?」

「私はいらない」「えっまじで。じゃ一枚でいっか」と必要最低限主義。言い換えればかなりケチである。


 こうしてめでたく新しい年を迎えたのであった。





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