第2話 プロからするとレイドボスも雑魚扱い
やけ食い(結局普通の食事)をした僕はせっかくなのでギルドの高級宿に泊まる事にした。
高級宿と言ってもギルドの宿なので貴族が止まるような感じでは無い。
普通の宿と比べて部屋が広くてベッドとサービスの質が良い、それくらいだ。
はやく鍵を貰おう。
「あのー、今夜こちらに泊まりたいのですが」
「あ、はい。少々お待ち下s...ッ!?影の死神様ですね!ご希望の部屋はございますか?」
露骨に対応変わったなぁ。
にしても日本の記憶が蘇ったせいか、二つ名が恥ずかしく感じてきた。
日本人の時の僕に黒歴史と言うものは存在しないのだが、それでも『影の死神』というのは恥ずかしいと思う。
『影に潜んで対象の魂を刈り取る。相手は魂を失ったことに気付かず倒れる』
...確かに影の死神だね、カッコいいから付けたとかでは無さそうかもしれない。
「あの...」
「うん?」
「お任せという事でよろしいのですか?」
「え、何の事ですか?」
「えっ?いえ、今日お泊まりになるのですよね?」
「そうですけどそれがどうしたんですか?」
「ご要望はありますか?」
...?
あっ、そっか。
関係無い事考えてて本題を忘れてた。
要望、要望ねぇ?
止まるとしたら広い部屋より狭い部屋だね。何かの性なのか広い部屋だと落ち着かないみたいなんだ。
「あまり広く無い部屋でお願いします」
「はい、承りました。では201の鍵をお渡しします。利用されなくなったらロビーに鍵をお返しください」
(利用されなくなったら?明日じゃないって事は利用し放題?え、何それ神じゃん。神対応じゃないですか)
─ギルド本部高級宿201号室─
「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛疲れたぁ」
実際のところ疲れてはいないが、ベッドに寝そべった時そう言わないといけないような気がしたのだ。
さて、一時の気の迷いで村を飛び出したはいいけど住所どうしようかな。
少しの間はギルド宿を利用するとしてもいつまでも居たら邪魔だろうし。
うーん、住居探しは後にして明日は危険度高めの討伐依頼を3個ほど受けて生活費を稼ごう。
個人的にはドラゴン退治が楽だな。
ドラゴンって特に何もない状態だと丸まって寝ているだけで鱗も柔らかいから、隠密発動させておけば脳にロングソードぶっ刺して終わりだからね。
ドラゴンの鱗は硬いってよく言われるけどあれは戦闘字にドラゴン特有の魔力を鱗に載せてるから硬くなるんだよね。
常日頃から鱗が硬いままだと魔力欠乏が発生するんだろうね。
こういう弱点があると、魔物とはいえど生き物なんだなぁって思えるよ。
そういえば荷物背負う必要なかったな。明日からは無限収納に入れとこっと。
後は特に考える事ないし寝よう。
─翌日─
おっはようごっざいまぁぁぁす!!!
うん、今のはいいシャウトだ。(声に出してはいないけど)
昨日は予想外のことが起きたりしたけど冒険者生活の中でそれ以上に驚いたことがたくさんあったので引きずる事でも無い。
僕の体内時計が狂っていなければ今は早朝。依頼掲示板が混む前に依頼受注しなければならない。
高級宿で防音性が高かったとしてもめいわくをかけるのは良くないので隠密を発動させてドタドタ走る。
─ギルド本部依頼掲示板前─
やってきました掲示板!
ドラゴンあるかなー?
金づるあるかなー?
依頼掲示板を前にして血走った目で危険度の高い依頼を探す。
おぉっ!
誰も受けなさそうな超高難易度依頼あるじゃん。
─────
緊急討伐依頼
危険度A+++
繁殖期のレッドドラゴンの番の討伐
場所:モード山 頂上
目標:レッドドラゴンキングの番1組
契約金:0c
報酬金:842,000,000c
注意事項:レッドドラゴンキングはレッドドラゴンの上位種である。それに加えて現在繁殖期なので凶暴性が増している。そのためA上級冒険者以外が受ける場合、最低でも8人組で出撃せよ。
既にガムロのA下級冒険者4名が出撃したもののそれ以降連絡が途絶えている。心してかかれ。
現在の参加者:
※この依頼は緊急依頼なので掲示板に貼ったままにしておいて下さい。
────
なんか物騒なことになっているね。
確かモード山はここから西に80km離れたところにあって雑魚モンスターの危険度がB+っていう上級ダンジョンだ。
たどり着くのにも時間がかかるし、戦闘時間も長引くから大抵は下層のところで撤退する冒険者が多い。
その分素材の売値は結構高いんだけどね。
レッドドラゴンが上層にいてレッドドラゴンキングは頂上。
頂上に行くにはレッドドラゴンを最低でも8体討伐しないといけないから実際の依頼内容は次のようになる。
緊急討伐依頼
危険度:S−
レッドドラゴン8体以上とレッドドラゴンキング2体の討伐
うーん、鬼畜。
普通のA上級冒険者なら少し面倒程度だが僕からしたらゴブリン討伐の方が面倒に感じる。
隠密が使えれば目標数の数しか壁にならないからだ。
そしてガムロっていうのはモード山から東に20km程離れたところにある街で、B中級冒険者からA下級冒険者が在籍しているツワモノ揃いである。
この依頼、今なら結構美味いな。
誰も参加していないので単独成功できたらたんまりとお金が手に入る。
そうすれば、ふふふ...。
僕は意気揚々とクエスト受注してから、反転して目的地へ全力疾走で向かった。
案の定、チートな身体能力のお陰で息切れする事なく早急に到着できた。
ここからは隠密オンで行きます。
理不尽な強さ持ってんなぁ、主人公。