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終焉のミソロジー  作者: KAMOME111
4/6

「ごちそうさま」なんて言わないで。

さて、ではお勧めアニメ紹介!

~やはり俺の青春ラブコメは間違っている~

 陰キャを極めた少年、比企谷八幡(通称ヒッキー)はひょんなことから高校にある奉仕部へ入部することになる。その部の活動は、助けを必要としている人を救う手伝いをするというもの。人と接することはおろか、人を助けることなどなかった八幡の成長を描く物語である。


見どころ このアニメが神アニメといわれるゆえんはその名言の多さ!人生とは、友達とはを考えさせられる名言にあふれていて、個人的に道徳教材に使用しても良いんじゃないかと思っています。

高校生には是非見て欲しい作品です!

 カイは、飛び散った血の前に放心状態になっていた。荒れ狂うように吹いていた風は、淵についた血を吹き飛ばすまいというように、ピタリとやんだ。サネスは彼にとってとても大事な人という訳ではなかった。しかし、やはり知った人が死ぬと人は悲しくなるように作られているらしい。

 長い沈黙。誰も何も言わなかった。涙をすする音もなかった。皆、突然の死に涙すら出なかった。そして、こういうときにこの男の思い切りの良さは頼りになるといえるだろう。


「よし!行こう!大丈夫!もう誰も死なねえ!死なせない!」


 アンガ―は、いつもの怒り口調とは違う、けどどこか強い言葉を吐いて奥の暗闇へと這っていった。それに続くように、ビシー、そして半強制的にジルが続いた。ここまでくれば、場の空気は進もうという意思へと変わっていく。そうして、俺はまたしても集団につられるかの如くぞろぞろと地を這ってそれに縋っていった。

 暗闇の中、いろいろな思いが胸をはせる。また死んだ、カオリの次にサネス・・・そして次は自分なんじゃないかという突如現れた「死」への恐怖。それに戦いつつも彼らは闇の中進んだ。

 次の部屋は、前回と違って暗かった。しかし、前回よりもはるかに広い部屋であることは何となく察せられた。奥には何があるのかわからないし、出口もわからない。そして、そこにはもう一つ、彼らの恐怖をあおる「何か」があった。何かはわからない。しかし、それは確かにそこに存在しているといえた。

 取りあえず歩いてみる。奥へ、奥へ。一歩、一歩。そしてそれを見たときには「死」を覚悟したことは言うまでもないだろう。

 鋭い爪と牙、そしてその大きなからだ。そして何よりも三つある頭部・・・そう、そこにいたのは本で読んだケルベロスそのものだった。

ケルベロス、それはギリシア神話に登場する冥府の番犬。三つ首、蛇の尾、首元から無数の蛇を生やした猛犬で、冥府神ハデスによって『地獄の番犬』として飼われることになる。そう、『地獄』の番犬として。


「あそこ、出口じゃないか?」


 コスの指さす先にはケルベロスが眠っていることによって入れない扉があった。


「でも、どうやって入んだよ」


 それもそうである。もしあれが本で書いていた通りのケルベロスなら、起こした時には彼らの魂はこの世にはないだろう。だが、起こさないと通れない。この究極の二択を考えているうちにも、ケルベロスは何度も起きかけてはまた眠りについていた。大きないびきを伴いながら。そしてその一回一回に彼らが命の危険を感じたことは書くまでもないだろう。

 そうしているうちにこの男の怒りが頂点へと達した。


「俺が行く!」


 そう言い放ったアンガ―は一直線に、何のためらいもなくケルベロスへと突撃していった。それを見て、どれだけの人が勇気をもらっただろうか。


「俺も行く!」


と吐き捨てたファートに続き、


「しゃあねえな!あいつにまかせてらんねエかんな!ジル、お前も来いよ!」


とジルとビシーが突撃する。

 そんな中カイはまだ恐怖の渦の中にいた。「死」が怖い、「死」が怖い、「死」が怖い、 「死」が怖い、「死」が怖い!


「うわああああああああ!」


 部屋の中にファートの叫び声が響く。そして犬の遠吠え。それに続く轟音。耳をつんざくような爆音で放たれたその声は命をすわんとするばかりに耳の中でこだまする。塞ぎこんでいたカイにとって、ファートの生死はわからない。その事実が彼をもっと追いつめる。「死」が怖い、「死」が怖い、「死」が怖い、自分の「死」が怖い! 人の「死」が怖い!そう、ファートには死んでほしくない!

 その一つの願いが彼が淵から這いあがってくるチャンスを与えた。


「ファートオオオオオオ!」


 気付けばカイは叫んでいた。死んでほしくない者の名を・・・


「大丈夫!俺は生きてる!腹ペコだゼ!」


「フッ、じゃあ生きてここ出たら思い切りうまい飯を食おう!一緒に!」


 不覚にも笑ってしまった。緊急事態だというのに、命をかけている最中だというのに。


「時間を稼いでくれ!俺はここを出る方法を考える!」


「カイ!俺らを忘れんじゃねえ!」


 アンガ―がファートの見せ場を奪ってイキりたてる。ただ、彼自身にそんな自覚はなかったらしく、隣りで嫌な顔をしているファートを睨みつけていた。

 考えろ、この場を切り抜ける策を・・・ケルベロスの弱点を・・・

 カイは、一歩も動かず熟考する。周りをドタンバタンと走り回っているファートやアンガーの事は視野にも入れず、彼は考えることをやめなかった。

 ケルベロスの弱点、欠点、盲点。気の緩み、これか、好物・・・


「わかった!この場を切り抜ける方法!」


 カイは、立ち上がって指をパチンと鳴らした。その顔は爽快感に満ち溢れていた。しかし、彼がその快感に酔い痴れるのもつかの間だった。


「カイ!よけろ!」


 カイが前を見ると、大きな三つ首の怪物がすぐそこまで迫ってきている。流石のカイも、これには少しばかり怯んだが、直ぐに冷静さを取り戻した。

 神をも恐れる超反応、ともいえるだろうか。彼は、間一髪でケルベロスの右手振りおろしを、右に跳びのけることに成功した。ドゴン、というすさまじい音と砂煙、これは当たっていたら木端微塵だったに違いない。


「ファート!この作戦の鍵はお前だ!」


「俺?」


 ファートは、ここで自分が活躍するとは思ってもみなかったらしく大きく動揺した。


「お前の頭の上のハチの巣を進行方向から逆の位置に投げるんだ!」


「なんだ?まさかお前ケルベロスを棒を投げたら取ってくる可愛いワンちゃんだとでも思ってんのか?」


 皆の頭の中でケルベロスを飼っているカイの姿が浮かぶ。


「ほーれ取っておいで―」


 カイはその辺で拾ったケルベロスの大きさに合わないような棒を放り投げる。しかし、ケルベロスは一向に取りにいく様子はない。その上、じっとカイだけを見つめている。この後の詳しい描写は年齢制限がかかりそうなので以下省略・・・


「こうなるじゃん!バカかお前!」


「ちげえよ!ケルベロスの好物は甘いものだ!だからハチの巣投げて蜂密にケルベロスよせつけんだよ!」


 この作戦には、皆が感嘆の息をもらした。そしてとうのファートも納得したらしく、「よし、どんとこい!」と胸を張ってケルベロスが砂煙の中からあらわれるのを待った。「扱いやすい」といえばそれで終わりだが、あいにくも彼は「情に熱かった」と言っておこう。彼らの心の中にはもう「死」の恐怖はなかった。そこにあるのは出どころのわからない過剰な自信だけであった。

 そして、時は来た。ケルベロスが勢いよく砂煙から飛び出してくる。


「今だ!ファート!」


「おう!ほーらよ!ワンちゃん!」


 ファートが自信ありげに頭からカピカピに固まってとりにくくなっていたハチの巣をもぎ取ってだれもいない方向へ投げた。

 それと同時に、少年少女達の大疾走が幕を開ける。カイは、自分の心臓が持つのかという疑問を持つほどに全力で前へと走った。そんな彼らに後ろを振り返る余裕なんてなかった。そして「そのおかげ」というべきか「そのせい」というべきか、あの結果を招いた。

 やがて、彼らは出口へと到着することが出来た。彼らの心ははずみに弾み、興奮の絶頂にいた。しかし、その数秒後にまた絶望へと落とされることとなった。


「いやあ!ファート!お前のおかげだ、ふう・・・」


「…」


「ファート?」


では、この時間軸をファートの視点で見てみよう。


 皆が走りだした瞬間、ファートは見逃さなかった。投げた一瞬にケルベロスがファートを見たことを・・・

 なんであのとき俺を見た?蜂蜜たっぷりのハチの巣はあっちに投げたし、俺はそんなに甘くねえし。いや、彼はその時苦渋の決断を迫られることとなった。大量の汗がにじみ出る。いや、蜂蜜だ。そう、このときファートは一時間以上も蜂蜜を頭からかぶって一洗いすらしていないのだ。本当に甘いのはどっちか・・・彼にとって、仲間を、カイを、インディを危険にさらすことは何よりもつらかった。そして彼は

運命の決断をすることにした。

 しれっと、列の最後尾に周りこむ。そして、1人だれにも悟られることなく砂煙へと消えた。

 

 カイ、俺の人生はやっぱり甘いな。お前の人生はきっと激辛だろうよ。俺の甘口とは違う。スパイスもたくさん入るだろうし、たくさんの人に、万人受けするだろう。ああ、駄目だ。角に来ちまった。覚悟決めてたはずなんだけどなあ。やっぱコええなあ、「死」。いてえいてえって!腕が、ちぎれるって!そうか、こいつに指ねえもんなあ。人を持ち上げるにには爪を肉にひっかけるしかねえよな。


「味わえよ、この野郎。犬め。あ、でもちょっと最後の一手間するから。待て、だ」


 ファートは、痛みに耐えながらもケルベロスに訴える。ケルベロスは、それを察したかのように涎をぼたぼたとたらしながらファートの一手間を待った。

 

 そして現在、カイは叫び狂っていた。


「ファート!ファートオオオオオ!」


「カイ!上で、超うめえ飯作っといてやる!テメエが死ぬまで何日か何カ月か何年かわかんねえけどよ、

テーブルクロス引いて待ってるから!だからテメエも死ぬ時は腹すかして昇って来い!」


「待てよ!まだ!お前との思い出が、食い足りねえ・・・もっと、もっと食わしてくれよ!超うめえ、思い出を!」


 ファートは、この言葉を思いっきり心の隅の隅まで味わい、「俺はその言葉で満腹だ。ごちそうさん」と切なめな口調で言った。そして指示を出した。


「よし」


 ファートは静かに砂煙の中で涙を垂れ流しながら、誰にも見られることなく貪られた。


二人目の脱落者、ファート クルガ―


そしてまだ塔は彼らの思い出を蝕み続ける。

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