さよなら、愛した人よ・・・そしてよろしく、新しい自分
さて、ではお勧めアニメ紹介!
~青の祓魔師~
主人公奥村燐は、父である士朗の運営している教会にすんでいる高校生です。また、弟の雪男とは勉学面等で劣っており、バカにされていました。そんなある日、燐がいつものように喧嘩をしている最中、突如相手の様子がおかしくなり人とは思えない化け物になります。それを救ったのが士朗で、士朗はこの世界には悪魔がいて、自分がそれを退治する職業、【エクソシスト】であり燐が悪魔王「サタン」の落とし子だということを告げます。そうして、父にあこがれた燐が悪魔ながらもエクソシストになる物語です。
見どころ とにかく燐がかっこいい!バトルシーンもしかり、日常のちょっとした気をつかうところとかがイケメンすぎる!バトル好きにはちょうおすすめのあアニメです!
「なんで、なんでこうなる。俺はお前に気持ちすら伝えてないのに・・・」
カイは落胆の絶頂にいた。これ以上ないほどに身体に力が入らない。何もしたくない怠惰な精神が彼を蝕んでいった。
ゴーンゴ―ンと19時を告げる時計が打った。それと同時に他のリーダーたちが入ってくる。皆、目の前で起こっているあり得ない状況をのみこめず一瞬手間取った。カイほどではないが、この異様な光景の衝撃度は皆、よほどのものだったろう。そしてその動揺をかき消したのがこの男の一言だった。
「リーダー、そんな・・・」
その声はカイの声とよく似ていたが、少し高音で聞き覚えのない声だった。皆が声のした方向を注目する。そこには、カイに容姿もそっくりな少年が立っていた。カイが金髪なのに比べ、その少年が紫の髪ということを除けば、もう本人そのものである。
「君は誰かな?」
サネスがこんなときだというのに少しも悲しむそぶりを見せず聞く。
「ああ、僕はルーア インベート。12班の副リーダーです。リーダーが昼からいなかったので代わりに来たんですが、まさかこんなことになっていようとは」
その男の口から発せられる言葉は、饒舌な詐欺師を彷彿とさせた。一見すると本当のようだが、よく考えてみると全くの薄っぺらい言葉だということがよくわかる。
しかし、リーダーたちの話題が『バルベロ カオリの死』から、【ルーア インベートという謎多き男の正体】に変わってしまったことは事実であり、その舌の回りようには感嘆するしかなかろう。
そして話は次に、ルーアの手によってまた違う方向へと変わっていった。
「ところで、この穴って何のためにあるんですか?」
ルーアが天井にあいた大きな穴を指さして言う。
「たしかに、こんな穴、元からなかったよな」
ビシーが興味を持ったように言った。他のみんなも、少なからず興味を持ったように首を縦に振っている。
「よし!ジル!行って来い!」
またしても、ジルは嫌がりびくびく怯えつつ少しばかりの抵抗を見せた。
「え、でも・・・」
「私の言うことが聞けないのか?」
しかしその抵抗もむなしく、ジルはまたもやビシーに尽くす羽目となった。
「はい・・・」
か細い声が会議室に響く。
そしてジルは会議テーブルの上に立って穴の中を覗き込んだ。彼女の膝はこれでもかというほどに震え、目には涙すら見せそうな雰囲気であった。
「おい、ジル!何かあったか?」
「階段があります。その先は暗くて見えませんが」
ジルの目に映ったのは、奥にとんでもないものがあるということを暗示するいかにもといった階段だった。階段は石製で、もうすっかり苔むしている。カイ達が会議室に初めて来たときからあったのだろう。しかしおかしなことにその階段には目立った傷はなく、人が通った形跡が一切見つからなかったのである。
「よし!ジル!行ってこい!」
下から悪魔の提案が聞こえる。ジルは耳を防ぎたかったろう。
そして、その時だった、あの事が起こったのは・・・
いきなり、ドーンというすさまじい音が轟き渡り廊下への扉が一斉にピシャッとしまった。そのとき、ファートは見た。閉まりかけた扉の奥で自分たちの寮の部屋が爆炎に包まれたのを。彼は自分の見たことを少しの間飲み込むことが出来なかった。
「クソッ!開かねえ!」
アンガ―が自分の寮へと続く扉をこじ開けようと扉に体当たりや、ロ―キックをくらわせた。しかし、扉はびくともせずにそこにたたずんだ。開いたとしてもそこには絶望しかないのに。
ここで、ひとつカイの沸点に達するきっかけとなる事件が起こった。
「まあ、いいじゃん・・・ここにビシーちゃんがいる限り俺は幸せだア―――」
その元凶となったのはこの男、ウル フィン。
「貴様!気持ち悪いぞ!」
ウルは、ビシーに罵倒されてもご褒美だといわんばかりに反省の色を見せず言った。
「まあまあ、そんなこといわずに・・・今じゃあカオリちゃんは死んじゃったんだし、浮気しないで一途に愛するからさっ!」
ゴン!会議室に惨い音が響く。その様子を見てルーアは少し微笑んだようにも、見えた。
「痛ってえなあ!カイ!」
床に伏せながらウルが涙目で言う。涙目といえど、やはりその目に反省の色は見えない。
「俺が何したって・・・」
「お前はカオリをなんだと思ってたんだ…」
カイが冷徹な口調で言う。
「はあ?な、何がだよ・・・あいつは死んだ。これでカオリちゃんの物語は終わり!おかしいのはお前だゼ?カイ」
カイが今まで握りつぶしていた拳をより一層固く握りなおした。そして殴りかかるようなポーズを取りながら言った。
「いいか?次なめたこと言ってみろ!次は一発じゃすまねえぞ」
「チッ」
ウルはバツが悪そうに起き上がり、恥隠しか自分のズボンの裾の埃を払った。
「さて、これからどうしますか?」
サネスが何事もなかったかのように司会を始める。カイはこの行動に少しばかりの遺憾を感じたがあえて触れないことにした。いちいち感じた遺憾の一つ一つを気にしていたらきりがない気がした。たとえその範囲がこの部屋だけであったとしても。
「あ、あのさあ・・・」
そして、ファートはさっき自分が見た信じられないことを恐る恐る話した。語尾に「まあ、俺が見ただけだけど」という責任は僕じゃないですよ、感のある言葉をつけたして。
「じゃあ、班のみんなは?」
皆が思う疑問をベットが代弁する。そしてその言葉をきっかけに、少しばかりの沈黙で、会議室は包まれた。皆が感じている感情は、「不安」一択だったであろう。そしてこの男が口を開いた。
「この階段、どこへ続くんでしょう。いってみませんか」
声の主はルーアだった。この男は、謎である。心配はするもどこか薄っぺらく、疑問は持つもそれすら薄っぺらい。
このときのリーダーたちの反応は大きく分けて二つに分かれた。ひとつは行きたくないがゆえに無視を続けようという者。もうひとつはこの沈黙が嫌なため新たに出来た議題に縋ろうと顔を上げる者。
「いんじゃないかな、いっても」
「ですよね、【議長】」
ルーアがサネスを鼓舞するように議長、と誇張して言う。これによって、
「は?まだ正式に長は決まってねエ!」
「そうよ、そんなの建前でしかないわ!」
他の犬猿仲間であるアンガ―とビシーが加わった。そしてビシーが加わったことによってジルが引き寄せられるのは時間の問題であり、ひとつの誇張によって一気に場の情勢が変わってしまった。その結果・・・
「いかないかい?この先」
「そうだな!此処にいてもなにもねえんだ!」
ということで議題は白票多数のまま議決され、一行は階段を上ることになった。
カツ、カツ、と皆が階段を昇り始める。
しかし、カイはまだカオリの死というニュースから立ち直れずにいた。皆が続々と「穴」へ入っていく中、彼だけはピクリとも動かなかった。いや、動きたくなかった。身体にのしかかる重々とした倦怠感。それに彼は囚われ続けていた。そんなとき、
「おい、カイ。行かねえのか?」
「行きましょうよ、カイ」
カイが顔を上げる。そこには「友」がいた。今までカオリの恋の話をして、一方的にかもしれないけどカオリの魅力を語り合って夜を更かした「友」が。
「確かに、今回のことは酷だと思う。皆の順応度に腹も立つ。俺ですら怒りに燃えてんだ。とうのお前はもっとだと思う。たださ、そういう時は俺らを頼れよ。人ってのは反省する生き物だからよ、人生とは「悔い」だと思うんだ。ただ、だからこそ人は最強の生物だ。だって「省みる」からよ。さあ、こっから俺達の人生はどんだけかわかんねえけど一緒に省みようぜ」
「そうですよ、ファートさんは気障なこと言ってますが要約すると『一緒に行きましょう、カイ』ってことです」
「要訳すんなよ!せっかく名言感出してたのによオ!」
「迷言、の間違いですよ」
「うっせえええ!」
俺は、今までカオリを生きてきた。カオリに少しでも好かれようと、こいつを幸せにしようと。ただ、俺はただ自惚れていただけだったんだ。カオリという女を一途に愛する俺という第三者を・・・
もうやめよう・・・今日から俺は、カイ イミテッドだ。6班リーダー、友はファート クルーガ―・
インディ シ―ジョン。それでいい。
俺の体にまとわりついていた倦怠感が、ほんの少しばかり軽くなったがした。
「行くか!」
「おう!」
――――じゃあな、バルベロ カオリ・・・俺の愛した女性――――
カイはそう心で唱え、カオリの顔を最後に拝んだ。
ガゴン!カイが階段を登り始めると同時に、入口が閉ざされた。この音も、カイの未練の断ち切り役となった。
カイが少し成長しました。この話ではバトルもしかり、カイの成長も書いていこうと思っているので、今後とも、カモメとカイを宜しくお願いします!