十二角形の曼荼羅
友達の助言により、バトルもんも書くことにしました!たぶん拙い文章だと思うのですが今後ともよろしくお願いします!
西暦3000年 とある大聖堂
「神よ!」
黒装束の男が両手を上に掲げて言う。周りにはたくさんの同じような修道士と、青い焔の灯った蝋燭が立ち並ぶ。床には血で書かれた赤い魔法陣が赤々と照らしだされている。
次の瞬間、魔法陣が突如赤く光り始めた。それは生命の輪廻の終焉を招くこととなった。
いつも同じ夢を見る。その感覚だけは気持ち悪く残っており、起きた後には何の夢だったのかはさっぱり思い出せない。あの日も俺は、気味の悪い感覚に襲われて目覚めた。
閑話休題、此処について説明しておこうと思う。ここには岩でできた壁を隔てて、12個の寮が隣接している。そのため寮同士の行き来は出来ない。正十二角形をイメージしていただけるとわかりやすいだろう。中央には塔が聳え立っており、塔は全ての寮に共通する天井に突き刺さっている。そして各寮から塔へと続く渡り廊下が生えている。その渡り廊下を渡った先にあるのが会議室。その会議室で各寮のリーダーが、毎月一回話し合うのである。俺は一応この班、6班のリーダーで、カイ・イミテッド。他のリーダーは、おいおい紹介することにしよう。
この場所には、一つ、どうしても守らなければならないルールがある。それは、とある建物に一日一回入らなければならないことである。その建物は各寮に設置されている箱型の小さな物置くらいの大きさで、特に変哲はない。また中に入ったからといって何かされるわけではなく、ピカッと建物中が光るだけである。
それ以外は日常の規定もなく、自由気ままな生活を送っている。俺は本が好きなので、寮内に設置されている図書室が俺のもう一つの自室と化している。俺は子供のころから此処にいる。そのため、そろそろこの図書室の本を全て読みつくしてしまうのではないかという不安を最近感じるようになった。まあしかし、たまにあいつらに決闘を強いられるため「ひきこもり」ではないと自己肯定をしている。では、6班の班員を紹介しようと思う。
班長 カイ イミテッド(14)
副班長 アンガス コンバット(14)
救護担当 ベクトル シンザー(12)
食事担当 ヒンデン タクト(13)
機械担当 ニック メッカー(14)
見習い ソルス(10)
これがこの6班のメンバーだ。皆、個性あふれる班員ばかりで俺も手を焼いているのは余談か。
「おーい!カイ!決闘だア―――!」
外から、アンガスの高ぶった声が聞こえる。あいつは決闘を生きがいとしてるような奴で、かなりの戦闘狂なのである。俺は仕方たなく「わかったよ」と口走って今まで読んでいた本をパタン!と大きな音を立てて閉じた。そしてアンガスの声のした外に向かった。
外は今日も、照明がギラギラと地面を焼いていた。天井には照明が埋め込まれており、おかげで外は明るい。
「おい!カイ!行くぞオ―――――」
アンガスが正面から突っ込んでくる。あいつは戦闘狂なだけあって、かぎづめを使わせれば右に出る者はいない。しかし、ドサッ――。カイは軽々とアンガスの突撃をかわし、横に回り込んで鳩尾にひざ蹴りを入れた。アンガスが唸る。ソルスが「いつものことですね」と呟く。俺は、確かに図書室に通いっきりの陰キャだが、別に弱いわけではない。昔、あの人に稽古を付けてもらったから。カイの言うあの人とは、アミマ コスター。彼の同じ寮の先輩だった。アミマ達は、彼らがここからいなくなったあの夜、カイに何かを告げた。ただ、それが何だったのかは、カイのみぞ知ることである。
「チクショ――――!」
アンガスが今日も悔しそうに俺の足元を転げまわる。カイはそのアンガスの様子を見て、誇らしげに微笑した。
「ねえ!アンガス君!痛そうだねえ――」
傷心中のアンガスに話しかけるのはいつもベクトルと決まっている。彼女と話すと、いつもアンガスは跳び起きるのが。そのわけは・・・
「ねえ!解剖させてよ!一回でいいから!爪一個でいいから!なんなら肝臓3分の2でもいいよ!」
そう、これが内の寮の医療班、ナチュラルサイコパス ベクトルである。ポイントは「ナチュラル」ということ。本人も、自分がサイコパスという自覚がないのだ。
「いや!いいよ!むっちゃ元気だから!」
アンガスがベクトルが近づいてきた瞬間跳び起きる。そして元気満々だとマッチョポーズをとる。カイは遠目にその様子を見ながらはあ、とため息をついた。そこに・・・
「アンガス!テメエ!怪我してんじゃねえか!今日はニンニクとショウガのソテーで決まりだああ!」
カイはなんだその超絶口臭料理、と突っ込みながらヒンデンにアドバイスした。
「あいつさ、今疲れてそうだろ?じゃあ疲労回復で有名な豚肉…」
「二ラとネギか!ありがとうカイ!忘れてたよ」
駄目だコイツ。そう、これが内の食料担当。ハードべジタリスト ヒンデンである。こいつの言う通りにすれば「ご飯は野菜しかない」といっても過言ではないため、おかずは毎回何故かカイが調理することになっている。
「はあ、何で内にはまともな奴はいないんだ」と思いながらカイはこのいつもの日常に少しほっとした気分を抱いた。いつまでもこの生活が続けばと。
その日の夜、リーダー会議が行われた。夜七時になると、寮の最上階にあるリーダー室に設置されている鋼鉄のドアが開くようになっている。そのまま渡り廊下を歩いていくと、もうひとつドアがある。ドアの前には足形があり、そこに足を合わせる。それが十二人そろうと、一斉に前のドアが開いて、会議室へ入ることが出来るのだ。中には正十二角形のテーブルがあり、それぞれの班の番号の書いてある椅子にすわる。ここで、十二人のリーダーを紹介しておこう。
1班 ウル フィン(14)
2班 サネス ナルシン(14)
3班 ファート クルガ―(14)
4班 コス トマニ(14)
5班 アンガ― リル(14)
6班 カイ イミテッド(14)
7班 ビシー マラリン(14)
8班 ベット ラッタ―(14)
9班 ジル フラート(14)
10班 コップ アラム(14)
11班 インディ シ―ジョン(14)
12班 バルベロ カオリ(14)
これが今のリーダーたちである。それぞれ、班ごとに特色も考え方も違うため、この会議が円滑に進んだのを見たことがない。皆、それなりの覚悟を持ってこの会議に参加しているのである。一応、この会議のリーダーはサネスと決まっているが、皆それに異論がないわけではない。特に2班・5班・7班はお互いにお互いを嫌っており、そう簡単に議題は決まらない。そして今日も、
「おいおいおいおい!ふざけんなよ!サネス!」
ドンッとアンガ―が会議テーブルをたたき割りそうな勢いで立ちあがる。身体が大きいため、圧倒的な迫力の前で、サネスは微動だにしない。もう、慣れているのか。
「テメエ最近調子乗ってんなあ。そろそろ俺が交代してやるよ!」
「おっと、抜け駆けはよせアンガ―」
口をはさんだのはビシーだった。自分の重たそうな胸部を手で支えるかのように腕を組み、色気のあるピンクの唇からハア、とため息を吐いた。
「お前も何か言ったらどうだ?ジル!」
「は、はい…」
ジルは、自分がとばっちりを受けるとは思ってもみなかったらしく、わかりやすく動揺した。ひとつ言い忘れていたが、ビシーの7班とジルの9班は主従関係になっていて上下関係は明白だった。閑話休題、ビシーの口出しを許すはずもなくアンガ―が憤怒した。
「テメエ!邪魔なこと言うんじゃねえ!」
「それはこっちだな。筋肉だるまが」
「それなー」
場の空気が凍るコップが口をはさんだのだ。コイツはとことん人付き合いに慣れておらず、口をはさむタイミングも、同調もとことんタイミングが悪い。今回も、彼のこの同調は反感を買った。
「テメエ!コップ!いつもてめえうゼえんだよ!」
「おいおい、部外者に口出しするのか?」
ビシーが隙を逃すまいと食らいつく。
こんなことをやっているから争いが絶えないのかと悟りつつカイはあるこの場の1人の女性に胸躍らせていた。カオリである。彼が彼女のことを好きになったのは3年ほど前のことで、カイが16になってからすぐであった。年ごろといえば年ごろなのだが、心の中で彼女専用の場所が出来たといった感じで不思議な感覚だった。
ふと、彼女と目があった気がした。いや、気のせいか。そんなことはない。確実に今目があった。あの透き通るようなサファイアのような瞳、それでいて、その奥ゆかしさ。彼女の横顔で瞳が照明に反射してか、潤んだ。唯カイはこの時まだ知らなかった。あの瞳の奥に秘められた深紅のエッセイを・・・
「黙れ!うっせえんだよパイゴリギャルが!」
「それなー」
コップは今度もわけのわからないところで同調する。之がもしこいつの作戦なのだとしたら、よく出来た策略である。カイは、そんなことはないか、と割り切ることにした。
「よし!わかった!テメエら!一緒にこれ食おう!」
この口出しするべからずの状況がわかっていない人間がもう一人いたらしい。その声の主はファーとだった。彼は懐からいろいろな食材を取り出し少しの間次々とポケットから取り出される調理器具を華麗にさばいて調理を始めた。皆、彼の行動は意味不明だったが彼の世界観についていける者はおらず、ファートは調理を終えた。
「ではどうぞ」
ファートが出来あがった料理を問題の三人に差し出した。
「いやあ、同じ釜の飯を食えば仲直りだろ?」
「ふざけんなア!」
アンガ―がキレてファートの胸倉をつかんだ。その時、
「もういいかな?まあ、君たちの心配は受け取っておこう」
「なあなあ、損害賠償払わせようゼ!なあ、リーダー長」
コスがいかにもいやらしい目つきでサネスに駆け寄ったが、簡単に振りほどかれてしまった。それどころか、サネスは反感を買うような言い方で、皮肉らしく二人をあしらった。二人は軽くあしらわれてることには気付いていたらしいが、疲れたらしく口出しはよしていた。
その後、何事もなく会議は終わりを迎えた。いつも、俺は会議後この会議室に残ることにしている。
それは・・・
「おいカイ、なんか面白いことなかったのか?この一ヶ月間」
「僕は、なにもなかったです」
このためだ。俺は、この会議室で「トモダチ」と呼べる人間は二人いる。それが、ファートとインディである。この二人とは差し所の会議の時からの知り合いで、その時から仲良くしてくれた恩人でもある。
「俺はあったぞ!そうあれは夕食がラーメンだった日のこと・・・」
「いや、テメエの日付感覚は食事かよ!」
「ハハハハハハハハハハハ」
会議室に弾んだ声がこだまする。インディがこれだけ笑うのもこの場所、このときだけである。
「お前今日もカオリちゃんガン見だったろ!ったく…お前わかりやすいんだよな…」
「うっせえなあ。でもよ!今日は目エあったぜ!」
ついつい興奮してしまった。まあ、気分が高揚しているのは本当だし、この二人には包み隠す必要はないだろう。
「ふーん」
ファートがわかりやすい視線でため息をつきながら俺を蔑んだ。
「そうだ。カオリさんなら今日は様子がおかしかったですよ。」
「確かに!今日は様子がおかしかったぜ!いつもならウルにエロい目で見られて軽蔑してんのに今日は
してなかったし」
そう。俺にも恋敵がいる。まあ、恋敵といえるかは微妙だが…それがウル フィン。あいつは極度の女たらしの変態で、ビシーにもあの調子なので若干ひかれているのが現実である。
「で?カイ大先生は夜の作業カオリでもちろんしてるよな。」
「は、はあ?バ、バカ!し、してねえよ」
カイは不意を突かれて顔を真っ赤に染め上げて言い放った。それが通用したかどうかは別だが。確かにあの大きな胸に心を揺さぶられることは俺だってある。だが俺は唯の「おっぱいフェチ」ではない。サイズだけを見ているならば間違いなくビシーに惚れ込んでいるだろう。唯カイが彼女を好きになった理由は他にあった。
「あのお、僕は…」
インディが満を持し口を開く。自分から話を切り出したのに、彼の唇は緊張で震えていた。そう、彼は極度のコミュ症なのである。
そうやってその日の夜は更けていった。少年たちの心は弾み、そして閉じた扉の向こう側で聞き耳を立てていたベットの心はいつも満足感であふれる夜だった。
結局、その夜寮に戻ったのは23時をすぎることとなった。いつもこの時間だが、その夜は自棄にいつもより遅く感じらえた。おそらくファート達と話した時間がよほど楽しかったのだろう。そんなことを考えながら背徳感と共にカイは床に伏せた。
それから日々は何事も起こることなく過ぎて行った。カイは毎日アンガスと戦ったし、そして全勝したし。しかし、それは過ちである。正しくは何事もなかったかのように、だ。
そして一ヶ月後あのリーダー会議の日になった。カイはこの期間、あの時のカオリの異変ばかりを考えていた。なんであんな視線を向けたのか、そしてあの視線の奥にある何かを・・・
いつも通りリーダー室へ向かう途中、珍しくニックにあった。彼はまるでカイを待っていたかのようにリーダー室の前の椅子に腰かけていた。
「カイ、相談があるんだ。」
カイは、こういうときは頼れる男である。仲間のためなら、簡単に私情を押し流せる奴である。
「なんだ?話って」
カイは、カオリに早く会いたいと高揚する気持ちを抑えニックの話に耳を傾けることにした。
「俺さ、生きてる意味あんのかなって…」
ニックの話は、カイの想像していた話の重量のかなり上をいった。カイ自身、ここまで重い話が来るとは高をくくってなかったため、現在絶賛動揺中である。
「そんなことねえって…」
頭に言葉が浮かばない。浮かぶのはせいぜいあるあるのテンプレのワードのみである。
「いや、俺さ、一応お前とかアンガスと同じ歳なのに地下ひきこもってメカづくりばっかでよ…自分が情けなくなったんだ・・・」
「なんだそんなことか」
カイは状況を理解した途端、声を出して笑ってしまった。この笑いがニックへの冒涜になることは知っていた。しかし、彼には笑わずには居られなかった。
「いや、ごめん。そんなんカンタンじゃん。だって問題じゃねえもん」
ニックは、カイが言ったことを少しの間理解できず戸惑った。わかりやすく動揺して、目がいつも以上にきょろきょろしている。
カイは、自分の番は終わりだと悟り、その場を静かに去った。出来るだけ音をたてないように、ニックの邪魔をしないように。そしてそこには、行き場を失った感情を残した二ックのみがチカチカした電灯の下で座り込んでいた。
カイは、ニックの悩み相談を受けたことにより気分良くなり、リーダー室の扉をガチャン!と大きな音を立てて開けた。そして電気を付ける。すると、不思議なことにもう渡り廊下へと続くドアは開いていて、見る限り会議室のドアもあいているようだった。カイは「不思議なこともあるもんだ」と呟きながら一歩一歩会議室へと歩みを進めた。渡り廊下はいつも通りシンと静まり返っていた。いつもなら気にならないのだが、その日は何かと恐怖を感じた。心霊的なものではなく、精神的な。
ドサッ――――カイは会議室に入るとたん泣き崩れた。声の出ない号泣。今まで感じたことのないほどの失望感と絶望感。何分そうしていただろうか。やがていつもならなかった天井の大きな穴の下にある血の滴る「最愛の人」の手を握りしめてただひたすらに泣きわめいた。
その日少年は神となった。このちっぽけで巨大な曼荼羅の・・・いや、曼荼羅を破壊する神に・・・
一話目でヒロインが死ぬというグロ漫画展開ですけど、「いまのところ」グロ漫画の予定はないのでお願いします!