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マグナムブレイカー  作者: サカキマンZET
第3章 西と東 赤の書編
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第97話 oasis

久し振りに更新です。今回は飲み物の話です。

「ちょっと良いかな? この辺で怪しいマスクのギャング集団を見なかったか?」


 修二はベテラン刑事の如く、通り掛かったチンピラ相手に聞き込みを開始していた。それも凄い、人を手に掛けそうな勢いのある表情でだ。

 チンピラは怯えた表情で大量に汗を流しながら数分は黙り込んでいた。


「…おい、そんな形相で聞き込みしても相手は完全に縮まってるぞ?」


 そこへ遠くから見ていた桐崎が呆れた表情で近づき、修二へ注意する。


「いや、前みたいに殴りかかれたら困るし。それに俺は普通ですよ」


「百歩譲っても、お前は普通じゃねぇよ。それにコレは何だ? コレで探そうとしてんのか? ちょっとは美的センスをどうにかしろよ」


 桐崎は呆れた表情で修二が書いた絵に対して文句言っていた。

 それもその筈、修二が紙に書いたのは子供以下レベルの落書きだった。似顔絵とも言えず、寧ろ宇宙人なのか怪物なのか分からない絵だった。


「仕方ねぇだろ? 美術の成績だけは悪いって師匠も知ってんだろ? ちゃんと覚えてんのか怪しいくらいだから、そんな感じになったんだよ」


「最初から駄目じゃねぇか!? アホかテメェは! あやふやな記憶でギャング集団探そうという行動が浅はか過ぎる。お前よく忍とか探せたな?」


「だって、殆どアッチから来てたもん」


 桐崎は怪訝そうな表情で五年前を深く思い起こしてみた。確かに、殆ど忍から動いて修二は立ち向かっただけだった。


(アイツが正体隠して品川を骨折った意味はなんだったんだ? もしかしてアイツも馬鹿なのか? 機械音痴の癖して肝心な部分が抜けるアイツは品川と同等かもしれない…)


 桐崎の中で忍は『覇気使い最強』から『覇気を使うことだけは最強』と変化しようとしていた。


「…あの~もう帰っていいですか?」


 二人の会話に付き合わされ痺れを切らしたチンピラが恐る恐る尋ねた。


「「そこにいろ!」」


 現実は非情でそうはいかなかった。


「よし、聞き直すぜ。マスクを被ったギャング集団を見なかったか? この絵は無しにして知ってるなら吐いてくれるか?」


「東京でマスク被ってる奴なんて一杯いるぜ? けど、バーとか行けば情報集まってる。この場所なら色んな変わった奴等がいるぜ」


 チンピラは懐から黒い名刺を修二達へ差し出した。

 それも豪華に金粉で『oasis』と書かれていた名刺だ。端っこで丁寧に住所と電話番号が書かれていた。


「オアシス……安らぎか」


 桐崎は名前の意味を呟いた。


「分かった。悪かったな引き止めて、もういいぞ」


「あ、あぁ…」


 修二は引き止めたチンピラに対し謝罪して、解放したのだ。

 チンピラは修二にいきなり解放されて戸惑いながら消えて行った。


「取り敢えず、情報は手に入った。皆を集めてココに出向こうぜ。安らぎの場所、オアシスっていう所にな?」


 修二はニヤリと怪しい笑みを浮かべながら、全員でオアシスへ向かおうと桐崎へ言った。

 先へ向かった修二の背中を見て、桐崎はある人物(・・・・)と重なり、驚愕していた。


(神崎忍? いや、忍はもっと背が高い。あの背中は…陸か? 幻覚見るくらい老いぼれたか? 年なんか取りたくねぇな…)


 いつの間にか桐崎は陸という男と修二を重ねてしまっていた。懐かしくもあり、悲しい気分に浸り気味だった。


(…思い出に浸っても仕方ねぇな。失った者はどう足掻いたって取り戻せはしねぇんだ。ここは今の現実に賭けてみるしか、先に進めねぇよな?)


 桐崎は(過去)ではなく修二(現実)を見て、先に進もうと決意した。失った者にすがるのではなく、今いる者へ全ての未来を賭ける事にした。

 例え、それが茨の道でも桐崎は修二に賭けたのだ。


「お~い! 早く行こうぜ、師匠。また勝手に置いて行くぞ?」


「…はいはい。そう焦んな」


 先へ向かった修二に桐崎はゆっくりと笑みを浮かべながら付いて行った。



 そして暫くしてから南雲と木戸達が集まり、なんだかんだ計画をしている内に、すぐ夜となりオアシスの前へ全員が集合していた。


「私、未成年なんだけど?」


「今更、ヤンキーが法律を気にするのか?」


「学校関係者とかに目撃されると面倒くさいから、普段は変装してるの!」


 学校事情で自由に動けないことと強調する木戸と、ヤンキーが律儀に法律を守ってるい事に可笑しく思う南雲のバトルが始まろうとしていた。


「そのエネルギーは暴れる為に置いておけよ。そんじゃあ行こうか!」


 修二が先頭に地下へ続く、階段へ降りてオアシスに入店した。

 そこに広がった光景は……七色に光るスポットライトが縦横無尽に辺りを照らし、若者の流行に合わせた音楽が鳴り、激しく自由に踊る者達が真っ白なタイルの上で盛り上がっていた。


「…成る程、バーっていうよりダンスクラブだな。ここなら荒くれ者も見つかる可能性も高いな…」


「手分けして探すか。俺と木戸はアッチ、品川と桐崎さんはソッチをお願いします」


「じゃあ二時間後に集合な? 多分、情報とか集まならなかったら勝手に遊んで終わろう」


 煙草を咥えた修二と無表情の桐崎は踊る人ゴミの中へと消えて行った。


「勝手に遊んでって…凄く臨機応変というか…なんというか…」


「アイツは昔から、あんな性格の奴だ。俺も他の連中も色々と巻き込まれたりしてな……」


 南雲は五年前や最近の事を思い返して色々とあったなと、切なくなったり、呆然とさせられる気持ちになっていた。

 もう気持ちに整理できないほど出来事が多すぎたからだ。


「他の連中? もしかして、まだ他の『覇気使い』がいたりするんですか!?」


 他の連中(・・・・)という単語を聞いて、木戸は大きく驚愕した。他にも違う能力を持った人達がいることに……。


「あぁ、いるぞ。氷、鉄、風、水、岩、爆破、毒、光、闇…よく考えたら海道って『覇気使い』の魔境だな…」


「炎とかいないのですか! 師匠のは太陽ですけど、炎仲間とかいたりしたら嬉しいです!」


「…お前、答えづらい質問をするよな?」


「え? もしかして…結構重い話でした?」


 南雲がバツの悪そうな顔に察知した木戸。

 何かしら失ったとか、重い内容だったらと少し、聞くのを躊躇ってしまった。


「いや、別に答えられない訳じゃねぇ…そんな重い話でもねぇんだ。ややこしいから言いにくいだけだ」


「ややこしい?」


「…まあ…元『炎の覇気使い』は…アイツだ…」


 親指で難色を示した表情でグイグイと指した。


「…まさか…」


 暫く付き合いで、一体誰の事か分かってしまった。

 木戸の表情は青ざめ、分かりやすく、ため息混じりで頭を抱える。


「お前の師匠、品川修二だ」


「…だから、火の使い方が慣れてたのか…」


「因みに俺は能力を失った直後にアイツに負けてしまった…」


「…私もです…それも無傷で…」


 二人は能力を使われず負けた事に酷くショックを受けていた。が、能力を失う前に一人だけ、能力は使われずアッパーのみで倒された人物がいた。

 南雲はふと思いだしたが、そんな事ないなという自分の勘違いだと信じてギャング集団を探す。


 一方その頃、修二と桐崎は……。


「…あのクソ師匠、どっか行きやがったな」


 右頬に怒りの青筋を浮かべて、カウンターに座って憤慨していた。

 それは修二が一人一人に聞き込みをしている最中、突如と桐崎が忽然と消えたからだ。


「…まあいいか。マスター、ジントニックを一つ」


 ストレスで怒る前に、落ち着いて酒を飲もうと考えたのだ。


「はい」


 注文を受けたダンディーなマスターは手際よくタンブラーグラスの中に、数個氷を入れ手早くバースプーンで回した。後からライムを搾り、ジンの酒を注ぐ。

 そしてバースプーンで回し混ざった所で、トニックウォーターを注ぎ、再びバースプーンでかき混ぜた。

 最後の工程が終わると、マスターはグラスを木製コースターの上へと置き、注文通りに修二へ提供した。


「ありがとう」


 礼を言って修二はジントニックの代金をマスターへ渡す。

 ゆっくりとジントニックを一口飲み、コースターへ置いて味わう。そして喉へと流し込み、音を立てず飲んだ。


「美味い」


「ありがとうございます」


 美味いという一言だけマスターへ伝えた。修二なりの礼と感謝だった。

いかがでしたか?

もし良ければ誤字や脱字や意見や質問等があれば教えてください。

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