第96話 足立区へ到着。
久し振りに投稿しました。今回はギャグ回です。
三人のポンコツ振りがあります。
四人は電車に座り乗りながら足立駅へ向かっていた。
「…おい、品川。邪魔したり、生意気なクソガキが挑発してきたりしたら…どうしたらいい?」
南雲は腕組みしながら真顔でキナ臭い事を修二へ尋ねた。
「先ずは情報を吐かせてから半殺しにする。逆でも良いぞ、半殺しにしてから聞き出す。ガキっぽい考えだが、こっちの方が効果的ですぐ喋る」
「…ちゃんと話を聞いてたのか」
桐崎は過去に自分が教えた方法を覚えていた事に対し、ちょっと嬉しく思い呟いた。
「……」
三人のテンションと違い木戸だけは、深刻で思い詰めた表情だった。
(三人と違って私は『覇気』を覚えたての未熟者。けれど、幾ら三人の師匠が強くても相手はギャングとか半グレ集団……もし勝ち目がない時は、私が警察を呼ぶ準備しておかないと……)
木戸だけは消極的な気持ちで、もしもの場合は警察へ頼ろうと考えていた。
「東京の町に詳しいのは木戸しかいない。案内、頼んだぞ?」
品川は東京に来たばかりで詳しくないので、地元民である木戸へ道案内を任せたのだ。
「…私が知ってる範囲でなら案内できます。」
「それで十分だ。後は片っ端から聞いて回るだけだ。もし足立区じゃなかったら、また別の所を探す。負い目を感じる事はねぇぞ?」
修二は例え失敗しても後から取り返すと木戸を責めるつもりは最初からなかったのだ。
「…はい」
真剣な眼差しで木戸は修二へ重く返答していた。
「…心配すんな。いざという時は北海道まで逃げてやるさ」
「あそこの道産子ラーメンは美味いらしいぜ。今、カップ麺で発売されてるから一度食ってみようぜ?」
「お、良いね! 結構、俺はラーメンには口うるせぇぜ?」
「任せな。俺は自称するほどのラーメン博士って呼ばれる人物だ。どのラーメンが美味くて、どのチェーン店のラーメンが長く通えるか調べ尽くした天才だぜ?」
木戸と桐崎は、そんな下らない事で天才を自称しないでくれと思っていた。
二人の口から役に立ちそうでもない情報ばかり出てくるので、二人はガッカリした表情でショックを受けていた。
(なんで、この人達に付いて行こうと思ったんだろう?)
(アホ二人の下らない会話に期待した俺が馬鹿だった。)
これから戦争へ行くはずなのに、全く緊張感がない会話で少し失望した木戸。
会話の中でヒントでも隠れているのかと期待していた桐崎だった。が、日常生活でもある普通の会話だったので、少し肩透かしな気分の様子。
暫くすると四人は足立駅へ辿り着き、治安が悪いと噂される足立区の地へと降り立った。
「…ここが治安が悪いで噂の…足立区…。」
「…緊張ほぐすために馬鹿話して来たのは良いが…。」
((全然、治安が良く平和すぎて俺が思ってたのと違う…))
修二と南雲、二人の思う心は息ピッタリで、面食らっていた。少し期待していたのと違ったので、緊張と警戒が解けてしまったのだ。
「お、おい木戸ちゃんよ! ここは本当に足立区なんだよな!?」
あまりにも真逆で平和すぎる町に、疑いを持った南雲は木戸へ尋ねた。
「ちゃんと足立駅で降りたじゃないですか。ほら、駅名も知名も足立ですよ。しっかりしてください」
「いやいや、流石に平和すぎるって……」
未だに修二と南雲は足立区だと信じていない様子だった。
「何を想像してたのですか?」
「え? 道端で中華系の夫婦がカンフーアクションで喧嘩してないの?」
「してません」
「じゃあ、カタギに見えない人が大型バイクを持って振り回す奴は?」
「何処の世界にバイクを振り回す人がいるんですか? そんな人はいません」
「「じゃあ、ピエロがナイフをジャグリングしながら暗殺は?」」
修二と南雲はハモりながら、絶対に日常では目の当たりしない事を木戸へ尋ねていた。
「あのふざけてるのですか? そんなピエロがいたら即逮捕ですよ。そんな危ない奴を野放している国家権力の方も頭がおかしいですよ」
「お前等、それは海道に限っての話だろ? 海道の常識で東京を見るんじゃねぇ!」
あまり話が進まないので桐崎が横へ入り、考え方を切り替えろと指示した。
(…私絶対、海道だけには行かない。そんな群馬県みたいで、摩訶不思議な場所に行けば身が持たないし、絶対に価値観が全て変わってしまうから行かない!)
もの凄い偏見な目と噂で群馬県を例えで出した。が、木戸は海道へは絶対行かないと心に固く誓うのだった。
「よし、じゃあギャングが居そうな場所を探すか…そう言えば木戸と師匠は携帯とか持ってる?」
「私は持ってる」
「……」
木戸はカラフルなカバーの柄なスマートフォンを取り出し、修二へ見せる。
一方、桐崎は黙って固まり何も反応しなくなったのだ。
「…持ってないんですね、携帯電話…」
「無線機しか持たん!」
何故か携帯電話は持っていない癖して、威張りながら無線機を強調して時代に取り残されていないとアピールしていた。
「今時のガキでも持ってますよ。それも普通に契約して帰るお手頃な値段ですよ…」
「あぁん!? それぐらい知っている。俺を何だと思っている? お前の師匠で最高の男だぞ? 俺は時代に流されない性格だからな! スマートフォンなんていう意味不明な携帯電話擬きは俺には不要だ!」
「そんな凄い汗を流しながら強がられても…」
修二は頬をピクッと引き攣らせながら桐崎が強がっている様子を見て、少し哀れだと思った。
「じゃあ俺と一緒に行動しましょう。それじゃあ木戸、メアドと電話番号を…」
「え? 師匠、LINE知らないんですか?」
木戸の聞きなれない発言で、修二と南雲は石のように固まり、思考停止していた。
「…ラ、ライン? 線か? 一直線の線か? それとも木戸は赤外線通信で交換しろって言ってんのか?」
「アレじゃね? 若者の流行語みたいな奴じゃねぇのか? ほらっ、タピルなんていう言葉があるじゃねぇか。それと一緒だ!」
「おぉ! でも、タピルって何だ? アレか? 避妊するために多様にピルを飲むって奴か?」
「かもしれねぇな。飲み物だと聞いた事あるし、それにヤーさんの収入源みたいになってるらしい。だから売春関係と犯罪関係でニュースが取り上げてたんだな。全く闇が深けぇ話だな、うん」
修二と南雲は何か勘違いと誤解をしており、話が在らぬ方向に進み、間違っているけど間違っていない状態へと進んでいた。
「…師匠達、まさかわざとやってるのですか?」
「「違うのか?」」
「違います。タピルぐらいググれば出て来ます。それよりLINE交換を…」
「ググれってなんだ? 何に潜るんだ?」
「これも流行語じゃねぇのか? それもコアな奴等が使う言葉だ。それもニュースとかで取り扱われて、大流行してから使わ始めた流行語かもしれねぇぞ」
「俺は潜ってから相手をボコボコにしろという意味だと思ってたぜ。成る程な、流石天才だ。色々知ってて助かったぜ!」
「フッ、そうだろ? なんて言ったって俺は天才だからな」
「お前のは自惚れかと思ってたけど、ちゃんと世間の出来事には目を向けて考えてんだな!」
「あぁ、そうだ。お前もニュースや新聞とかちゃんと見て学ぶんだぞ?」
そんな馬鹿話している二人に後頭部から軽い痛みが伝わった。
二人はダメージを与えた人物を確認する為、背後へと振り返る。そこにはハリセンを持って、怒っている木戸がいた。
「…時間ないので、早くアプリをダウンロードしてください。まさか、アプリも知らないって言うんですか?」
「…いや。流石にアプリは知っている。一応、子供が間違って高額に課金してしまった事で対応したことあるから…」
「そんな事は知ってるのに、LINEを知らないのは何故ですか? わざととしか思えないですよ?」
「安心しろ、木戸愛菜。奴等は至って真面目でふざけていない。少し考え方がズレてるだけだ。そんな息巻いて怒る必要はない!」
二人に問い詰める木戸を桐崎が静止に入り、落ち着かせていた。
「…桐崎さんも真剣にメモ取ってたじゃないですか? 見てないとでも思ってました?」
ギクッと桐崎は後ろに隠したメモ帳を握り潰していた。どうやら、三人はLINEというアプリを知らない様子だった。
「……分かりました。私が教えるので早く終わらせて探しましょう」
木戸は仕方ないという反応で、LINEを教える事にしたのだ。
そして数分でLINEの使い方を教えて、ギャング集団を探し始めた。
(本当に大丈夫かな?)
LINEや意味不明な解釈を持った人物が、無事にギャング集団を見つけられるのかと、今更ながら心配になった木戸だった。
いかがでしたか?
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