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マグナムブレイカー  作者: サカキマンZET
第3章 西と東 赤の書編
93/170

第93話 その内に…。

遅くなりました。話の構成に時間がかかりました。

 素性を知られ、不機嫌なまま森へと帰宅した修二。


「あ! 師匠、お帰りなさい」


 そこへ歓喜の表情で機嫌よく木戸が、修二へ語りかけた。


「…あぁ」


 修二は無表情のまま素っ気なく返事し、テントへと入って行った。

 そして疲れたのか、横へとなり、ぐっすりと深く眠ったのだ。


「…アイツ帰って来たのか…どうした?」


 頂上での買い物から戻ってきた南雲は修二が帰って来た事を確認した。が、そこへ立ったまま硬直している木戸に注目した。

 木戸は目を見開き、怯えた表情で涙を流していた。


「…問い詰めてくる」


 南雲は修二が何かしたのを察し、眠っていること関係なく叩き起こし、怒りで問い詰める気だった。


「違います! 師匠は普通に素っ気なく返事しただけで…」


「知ってる。アイツが、別人格みたいに表情が変わったんだろ? 分かってる。けどな? いくらなんでも、お前を泣かす態度だけは許せねぇ!」


 南雲は怒りを露にしながら修二が寝ているテントへ向かって行こうとしていた。

 けれど、木戸が南雲の前へと立ちはだかっていた。


「…駄目です。私のことで怒ってくれるのは嬉しいですけど、私の事は私で解決します! 師匠とはキッチリと話をつけて…!」


 木戸の左頬から小さく熱い物で切られる感触が伝わった。頬には擦り傷があり、そこからスラリと血液が流れていた。

 それは南雲が激情な心で放った僅かな雷撃だった。


「退け。じゃないと修行できない体にするぞ?」


 激情に駆られた南雲による本気の脅迫と警告だった。

 そんな鬼気迫る気配に圧倒されながらも、木戸は歯を食い縛り、南雲へ敵対心剥き出しで構えた。


「…それでも嫌です!」


 木戸は南雲には恐れず、立ち塞がり両手にマグマを纏わせた。完全に南雲と戦う気だった。


「…俺も舐められた物だな。ある程度の『覇気』しか使えない奴に挑まれるなんてな…昔のアイツみたいでムカつくんだよ!」


 突如として南雲から五年前の忌々しい記憶が甦る。そしてリーゼント頭の修二と木戸の姿形が重なり、更に憤慨する。

 その怒号に反応したのか晴天だった空は、突然国雲(こくうん)となり、雷雨が激しく降り始めた。

 雨が両手のマグマに触れると蒸発し、濃密な水蒸気を放っていた。


「その程度の『覇気』で、俺に勝てると思っているのか?」


 小さく儚い、今にも炎が消失しそうな『岩漿の覇気』を見て、南雲は冷静になり嘲笑う。


「南雲さんにとって、その程度(・・・・)かもしれませんが…私にはその程度(・・・・)でも、この程度(・・・・)が全力です。精一杯、止めさせていただきます」


「生意気だな? そんな生意気な所もアイツに似てムカつくぜ…もういい、お前が明日『覇気玉』ができようが関係ねぇ。ここでお前を殺せば終わりなんだからな?」


 南雲は開き直り、殺意を溢れ出させる。本当に木戸を殺す気なのだ。


(南雲さんを冷静にさせないと、このまま修行所じゃなくなってしまう。ここは怪我を覚悟で挑まないと…)


 木戸は頭の中で色々と試行錯誤しながら、南雲を止める方法を考えていた。今、自分にできるのは、決死の覚悟で自爆特攻しかなかった。


(よし、怪我とか嫌だけど…軽い攻撃ばかり繰り返したら多分、相手も諦めてくれる)


 そう決めた(・・・)木戸は顔を強張らせ、身体に膂力を込める。

 そして自分から行動開始しようとした…


「今のお前じゃあ、反撃は愚か一歩も動けずに負けるぞ?」


 そこへ何処からか森に声が響き渡る。二人は周りをキョロキョロと見渡しながら警戒し、探索する。


「こっちだ。南雲暖人、木戸愛菜!」


 上空から声が聞こえて、二人はそちらへ振り向いた。

 そこにいたのは、高所から幅が大きい枝に座り、怪しい笑みを浮かべて、埃まみれでボロボロの司祭平服に身を包んだ。

 二人を見下す桐崎流星だった。


「…うわぁ、なんか変な人が来た。」


 木戸は格好つけながら出現した桐崎に対し、引き気味な態度で反応していた。


「…お前が東京で何している? まさか、俺達が追っている物と関与しているとか?」


 面識は一度だけだで、吹雪から修二の師匠がいるという話は聞いている程度だった。なのに対し、初対面で大きな態度で出たのだ。


「お前等、初対面の大人に対してソレはなくね?」


 桐崎の言葉で木戸は失言してしまったとハッと気づいた。が、南雲だけは違い、ずっと桐崎を睨み付けていた。


「…狂犬みたいな目付きだな。まあ、俺も若くねぇからな――ガキと喧嘩するほど短気ほどじゃないし…けど、初心者相手に本気出す馬鹿を許すほど、俺は人間できてねぇよ」


 そして突如と南雲は桐崎へ向かって、ビームの様な電撃を放った。電撃は枝へ接触し、電熱で激しく燃え上がった。

 桐崎から放たれた言葉が、南雲の気に触れて攻撃されたのだ。


 木戸は容赦ない殺意ある攻撃に対して、その場で大きく驚愕した。身体は条件反射で跳ね上がり、大きく声も出ていた。

 そして唖然とするしかなかった。目前で無抵抗な一般人が死ぬ場面を…


「そんな小さい脅しで俺が引くと思ったか?」


 だが、桐崎は素早い移動で南雲の背後へと回り込んでいたのだ。


「放電ハリネズミ!」


 南雲は素早い反射神経で反応し、身体をハリネズミの如く、電流を四方八方へ流し、攻撃から身を守ったのだ。


 桐崎はバックステップで南雲から間合いを取り、木へと隠れたのだ。


「…おい、南雲暖人。すぐ冷静になればボコボコにするのは止めてやるぞ?」


「言ってろ! 『覇気』ですら持っていない、お前に俺が負ける訳ないだろ!」


 そう南雲は知っている。半年前、桐崎が修二に悪魔と戦う前、『月の覇気』を譲渡している事に…。

 『月の覇気』、五感の全てを幻覚で錯覚させる『覇気』。

 敵を無力化させることに特化した非殺傷で最強と唱われる物だが、今は所持しているので発動する事ができなかった。


「知ってるぞ。五年前に能力を使われず負けたってな? それも馬鹿な修二にな。恥ずかしい思いをしたくなかったら、早く頭冷やして『覇気』を納めろ」


 桐崎は長引く戦闘が面倒くさいので、相手からの武力解除を求めていた。


「あの時はアイツの気迫で負けたんだ。落ちぶれた貴様程度なら勝てる。」


 だが、そんな都合のいい願いなどは叶うはずもなく。南雲は勝てる戦いに逃さないと追撃しようとする。


「…しょうがねぇな本当。おい、木戸愛菜! 目と耳を防げ!」


 木戸は戸惑いながらも桐崎の指示通りに目と耳を塞いだ。

 そして指示通りに動いた事を確認した桐崎は、南雲へ向かって筒的な何かを投げ込んだ。


(閃光玉か!)


 閃光玉かと確信し、南雲は先手で電撃を放って怪しい筒を破壊した。が、破壊して出てきたのは色鮮やかな紙吹雪だった。


「な、何!?」


「パーティー用のクラッカーだよ」


 驚愕な事で呆然としている南雲の背後へと、桐崎は木の上から落ちて現れ、両腕を脇へ差し込み、抱き締めた。


「これが『覇気』なしの底力だ!」


 桐崎はコメカミに青筋を浮かべながら、成人男性である南雲を持ち上げた。

 そして勢いよく背中を反らせて、美しい軌道を描きながら、南雲の背中と頭を地面に思い切り叩き着けた。

 プロレス技のジャーマンスープレックスが炸裂し、見事に決まったのである。


「…ク…クソッ…」


 悔しい表情を浮かべながら南雲はゆっくりと気絶した。


「え? 終わったの?」


 あれから何も指示が無いので、木戸は確認するため、目と耳を開けた。


「終わったぜ。結構、馬鹿みたいに時間がかかったけどな?」


 桐崎はモゾモゾとしながら南雲を解放し、離れた。そして木戸へ近づき、いきなり不満を漏らしていた。


「…あの、すいません。貴方はどなたですか?」


 木戸は南雲という師匠を倒した人物に、律儀に尋ねていた。


「俺か? 通りすがりで、ただの怪しい神父さんだよ」


 桐崎は木戸を見下しながら、気だるげに自己紹介していた。色々とおかしいことを言いながら…。

いかがでしたか?

もし良ければ誤字や脱字や意見や質問等があれば教えてください。

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