第88話 修行の準備。
遅くなりました。(裏)編を書いてて、多分また遅くなると思います。
「東京近くに森とか山がないか?」
早速、修二は修行するため森と山を探していた。
「八王子の近くに高尾山ならあるよ?」
「よし、そこへ行く。南雲、悪いが色々とキャンプセットとか買ってきてくれねぇか?」
「分かった…他には?」
「ドラム缶と…お前、下着のサイズは?」
修二は天然な気持ちで、木戸のシャツを引っ張り下着のサイズを確認した。
「キャッ! な、何すんのよ! この変態オッサン!」
木戸は怒りと羞恥心で修二の左頬を思い切り殴った。
修二は大きく南雲の所へと吹っ飛び、背中から地面へと着地した。
「おい、殴ることねぇだろ!」
修二は身体を起こして怒りを露にする。が、南雲は素早く力強い拳骨で修二の頭を殴ったのだ。
「痛ってぇ! 何すんだ、このキモロンゲ!」
「お前が強姦罪で捕まらないだけ、ありがたいと思え。今のはデリカシーのない、お前に非がある。」
「デリカシー? 下着のサイズを聞いただけじゃねぇか?」
「それじゃねぇよ。普通覗くか?」
「見ねぇと分からねぇだろうが!」
「分かるわ! 頭悪いのは変わってねぇのか!?」
「テメェやんのかコラァ?」
修二は立ち上がり、額を南雲へ擦り付けて睨んでいた。
「やってやるよ。絶対に俺は正しいからな」
何時も通りに二人は喧嘩へと発展し、話が前へと進まなくなっていた。
「はい、師匠も逆ギレしない。南雲さんもサイズ教えるから」
そこへ苦労人となりそうな木戸が止めに入り、南雲へサイズを教える。
「MサイズのBカップの下着でいいよ」
「え、Mサイズの…び、Bカップ?」
普段から買わない女性下着に、南雲は悪戦苦闘という難しい顔をしていた。それも大量に発汗させて。
「…なんでシンプルにMサイズって言わねぇんだよ?」
ここにも女性の身体にもデリカシーも疎い修二が割って入る。
「女の子は色々とあるの! それとパンツもMサイズだから」
「ま、ま、任せろ! ちゃんと買いに行ってくるぜ!」
何故か未知の体験をするのか、ぎこちない言動で南雲は承諾していた。
「多分、スポーツ用品店にあると思うぞ」
修二が買って来てほしい物は、スポーツ物の下着だった。
「お、おう任せろ!」
南雲は早速、駆け足でスポーツ用品店へ向かった。
二人となった修二と木戸は南雲を心配した目で見ながら、見送った。
「さてと、じゃあジャージに着替えてもらうか。ジャージ持ってるか?」
「体操着でいい?」
「止めとけ、どうせすぐボロボロになるから…もしかして無いのか?」
「普段ジャージとか着ないから」
「…じゃあ俺の貸してやろう。サイズは合うかな? 一回、ホテルへ帰ろうか?」
「絶対、アンタと体格違うから無理! っていうか、ちゃんとしたジャージを頂戴よ!」
修二との体格は本格的に違うため、木戸はマトモな事で言い返した。
「しょうがねぇな。じゃあ、近くにある店で購入するか」
修二は近くにあったショッピングセンターが、目に入り、購入を提案した。
「…いいよ。じゃあ行こう」
木戸は了承し、修二と共にショッピングセンターへと入って行った。
人々で賑わうショッピングセンターに、異様な二人がいた。
赤髪とミスマッチの青いアロハシャツが目立つ、チンピラで無職の修二。目付きが悪く、不良で女子高生の木戸だった。
二人はジャージが売っている店を探して回っていた。
「…あのさ、私達浮いてない?」
「そんなに気になるか?」
「そりゃそうでしょ? 赤髪に染めてる二人がいたら、気になるのは当然でしょ?」
「俺の髪の毛は地毛だぜ? 髪を染めた事なんて一度もねぇよ?」
「え? そうなの!? じゃあ、アンタって何処かの外国人のハーフとか?」
木戸は修二の髪色が地毛だと驚愕し、ハーフかと尋ねた。
「いや、バリバリの関西系日本人やで?」
ここは勘違いさせない為にも、修二は関西弁を使った。
「何、その面白いワード!」
どうやら木戸は関西系日本人というワードにツボった様子だった。
修二は普通に言ったつもりだった。が、木戸が幸せなら何も追及する事もなかったのだ。
「…私もアンタみたいに…強くなれるかな?」
木戸は細々と修二みたく強くなれる願望を呟いていた。
「…確証はできねぇが、続ければ俺に近いくらいには強くなれる。お前を強くする事は一度決めた。約束してやる――お前を東京一『最強の覇気使い』にしてやるよ」
「う、うん…ありがとう」
真面目な目付きで修二の硬い決意の意志を見た。
木戸は歓喜の嬉しさで頬を赤く染め、修二へ感謝を述べていた。
「ここだな…」
暫くすると、修二達は女性専用のファッションコーナーへ辿り着いていた。
「じゃあジャージ探してくるね」
男性である修二だけ待機し、木戸が買いに行く事になった。
「あぁ、カード渡しておく。これで十枚ぐらいは買っておけ」
修二は財布から光沢に黒光りするカードを取り出し、木戸へ渡した。
「え? これって…ブラック…カード?」
「あ? これか? 初給料の時、輝さんからクレジットカードを作らされて、限度額が二百万あたりで銀行から貰った。なんか、スゲェ便利だから使ってるけどよ?」
修二はブラックカードの価値を知っておらず、煙草を買う以外はカードを使って買い物をしている様子だった。
木戸は初めて触れる未知なるブラックカードに恐れて、身体が震えていた。
「し、師匠…前職は…な、何してました?」
木戸はブラックカードまで作れる金がある修二に対して、正体を確かめようと敬語で尋ねてしまった。
そして木戸は想像してしまう、この身形で威圧感があるから、前職はヤのつく人、もしくは殺し屋かと…
「普通の弁護士だ。まあ短大で卒業して司法試験一発合格で、先輩が経営者だから斡旋してもらってなったぐらいだな」
普通という単語とは程遠い人生を謳歌している修二に、木戸は驚愕するしかなかった。
「好きなジャージ買えよ? なんか欲しい物もあったら買ってもいいぞ」
修二の眩しい笑顔に、木戸は気が引ける思いだった。
「あ、あのさ…流石に…この…ブラックカード…だけは…」
木戸はモジモジとした様子で、ブラックカードの使用を断ろうとした。が、修二の似合わない純粋な眼差しで、木戸は見られていた。
そして流石に断れず、木戸から折れて、修二のブラックカードを受け取り、細々とコーナーの中へと消えた。
「…喫煙所何処かな?」
修二は密かに隠れている喫煙所を探しにへと行ったのだ。
五本ぐらい煙草を吸い終え、ファッションコーナーへ戻ってくると、木戸が罪悪感にまみれた憂鬱な表情となっていた。
「おう、いい物買えたか?」
「…あ、あのさ…」
木戸は気まずそうな表情で、修二に何か言いたそうだった。
「どうした?」
修二は怪訝そうな表情で木戸へ尋ねた。
木戸は震えた手で、修二に領収書を見せて渡した。
「…調子に乗って…一杯使っちゃった…」
「好きなだけ使えばいいんだぜ?」
修二は領収書に目を向けて、額を確認した。
その額は軽く百万以上は行っており、一人で経済を回している状態の額だった。
「なんだ、結構遠慮したんだな?」
修二の衝撃的な発言に、木戸は再び驚愕させられる。
「え? 遠慮って…数百万…使ったんだよ?」
「数百万って普通より、ちょっと高いぐらいだろ?」
あまりにも噛み合わない話に、木戸は少し推理をした。そして、ある答えに導き出す。
「…師匠、何時もはどれぐらい使ってるの?」
恐る恐る木戸は、修二が何時も使用する金額を尋ねた。
「――数千万ぐらいかな?」
あまりにも、頭が悪く常人離れした金額に、木戸は茫然とするしかなかった。
いかがでしたか?
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