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マグナムブレイカー  作者: サカキマンZET
第3章 西と東 赤の書編
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第86話 彼女の名。

最近、調子が悪いみたいです。まあ、無理せずに頑張っていきたいですね。

 三人は二十四時間空いている松屋へ訪れていた。テーブル席へ座り、発券機で購入した物が来るまで大人しく待機していた。


「朝から重い物って…」


 南雲はげんなりとした表情で、隣へ文句を垂れていた。


「ホテルの近くで開いてる店ったら、ここしかなかったんだよ。俺もコイツも昨日から何も食ってねぇんだ。暫く腹持ちが良い物を食わねぇと持たねぇんだ」


 修二はスマホで何か検索しながら、尤もらしい事を言っていた。


「…なんで?」


 怪訝そうな彼女が急に口を開いたので、二人はそちらへ顔を向けた。


「アンタに唾とか吐いてさ、更に飯とか食べに行こうって言い出して、おかしくない? 私、アンタに対して酷いことしてんだよ? 普通ならボコボコにされて…」


 彼女にも少し罪悪感はあったらしく、仕返しがあってもおかしくない状況だった。が、その空気が一変し、食事という和やかな雰囲気に疑問を感じていた。


「…確かに、俺も二回唾を吐かれた時はキレたぜ? けど、お前の顔を見てたら、そんな気は失せた。何故か分かんねぇけどな?」


 自分自身でさえ理解してない行動に、彼女は呆れていた。


「この程度で呆れるのは早いぞ? コレ以上に呆れる事ばっかやって、周りを巻き込んでストレスを与えるからな」


 呆れる彼女を見て、南雲は修二を気にしても無駄だとフォローしたのだ。


「巻き込んでねぇよ。オメェ等が勝手に付いて来てるだけだろ? 俺は一言も付いて来いなんて言ってねぇぜ?」


 修二の一言で空気は一変し、不穏となった。


「誰だったかな? ここに来る前、俺達は共通の目的を持った仲間だって言った。何処の元クソリーゼントさんでしたっけ?」


 南雲は額に青筋を浮かべて、前へ身体を乗り出し、修二へ睨み付ける。


「え? ちょっと、店で喧嘩は…」


「そう言えば誰だったかな? ウロボロスにボコボコにされて再起不能になって、足手まといとなった。何処の元キモロンゲさんでしたっけ?」


 売り言葉に買い言葉。修二も身体を前へ乗り出し、バチバチと睨み合っていた。


「ちょっと他の人に迷惑だから、みっともない真似は止めなよ…」


 彼女は今にも勃発しそうな、喧嘩を必死で止めていた。


「お待たせしました。塩カルビ丼並盛と牛丼大盛です。」


 店員が二つのトレイで料理を運び、修二と南雲の目前へ置いた。南雲は塩カルビ丼、修二は牛丼大盛だ。

 料理を見ると二人は大人しくなり、座席へと座り、黙々と箸を取り食事を始めたのだ。


「え? え? 何これ? わ、私が間違ってるの?」


 彼女は二人の気の変わり様に驚愕と呆然とし、何を言えば分からない状況となっていたのだ。


「お待たせしました。回鍋肉定食、卵付きです。以上でよろしかったでしょうか?」


「はい」


 修二と南雲は息があった返事で、店員へ応答していた。


「…なんか気味悪い二人」


 急に喧嘩したりしたかと思えば、急に大人しくなって黙々と食事を始めたり、彼女は困惑していた。

 そして同時に気持ち悪いとも思っていた。


「…うん、美味い。」


 更に息の合った料理の感想を淡々と述べていた。


「おい、美味いか?」


 南雲はしかめっ面で、彼女へ感想を聞いていた。


「う、うん…美味しい…」


「足りねぇなら、好きに注文しな。俺等の事は気にしなくてもいいからよ」


 南雲は味噌汁に手を掛けながら、彼女へお代わり自由と言っていた。


「やっぱ、牛丼はいいな。薄給な俺達の救世主みたいな物だよな?」


「あぁ、そうだな。特にメニューのレパートリーがいい。味噌汁も無料で提供してくれるから最高だな」


「けど、海道と違って税金あんだろ? ここだけは痛い所だよな?」


「海道が特別すぎるのだ。海道って場所は、非公認で昔から作られた場所だ。今でも大騒ぎしないのがおかしいぐらいだ」


「それってネットで調べたのか?」


「あぁ、徹底的に地元を調べた。あんまり、いい評価ではなかったな。税金泥棒、政府の黒歴史なんやらばっかアンチスレッドが立つばかりだ」


「…そんな事する時間があるのに、暇な奴等だな」


 修二は現代社会の闇をバッサリと切り捨て、食事を続けた。


「アンタ達、大阪から来たの?」


 彼女は二人の話が気になったのか、途中から参加した。


「あぁ、そうだ。俺達は大阪市海道区から来たんだ。ある人物と集団を探して東京まで来た」


 修二は惜しむことなく、彼女へ話した。


「コイツを知ってるか?」


 南雲は懐からファッション雑誌を取り出し、彼女へ見せた。それは五年前に掲載された神崎忍のファッション雑誌だった。


「川神忍じゃん、五年に急遽引退したモデル俳優だよね? 私、ファンなんだよね」


 彼女はテンションが上がり、歓喜の表情で忍のファンと言った。

 そんな元気な彼女と違い、二人の顔は無表情で、瞳から光を消し、憎しみを込めて、忍の顔を見ていた。

 二人の心境は、「なんでコイツの性格が、こんなにもモテるんだ」という僻みだった。


「え? どうしたの?」


「いや、なんでもないよ?」


 再び息の合った覇気もない棒読みな返事をする。


「え? まさか川神忍が東京(ここ)に来てんの!? やっばい、サインめっちゃ欲しい」


 彼女のご機嫌な様子を見て、二人は…


(あの性格を知ったら幻滅すんだろうな)


 神崎忍の性格を二人は嫌ほど知っているので、彼女が知ればショックを受けるのは間違いないから、ちゃんと言い出せなかった。


「まあ、その俺達は…川神忍くんのファンで東京に観光しに来てるって聞いたから…追っ掛けて来たんだ。」


 南雲はかなりの嫌悪感を示した表情を誤魔化して、彼女から情報を引き出そうとしていた。


「なんか好きそうな顔じゃないけど?」


「コイツ、何時もこんな顔なんだよ」


 なんとか修二はファンである彼女の期待を潰さないように誤魔化していた。


(おい、もうちょっと笑顔で話せよ)


(無理だろ…絶対…それだけは…)


 小声で修二は笑顔に話せと脅迫していた。

 けれど南雲のプライドが邪魔をして、忍への笑顔ができなかった。が、ここは彼女の為にも額に青筋浮かべながら、引き攣った笑顔を見せていた。

 忍本人がいたら、似合わない事を見てゲラゲラと笑い転げてる事は間違いなかった。


「ほ、ほらっ! さ、最高の…笑顔…だろ?」


「…無理してない?」


「ダイジョウブ、ダイジョウブ。モウ、気二シナイ」


 もはや感情が混じり過ぎて、何かが壊れた南雲だった。

 数分後には全員食べ終え休憩していた。


「…満足したか?」


「うん。ありがとう」


「ちゃんと礼は言えるんだな。またクソリーゼントに唾を吐くのかと思ったぜ?」


「もうやらない。ごめんね、唾とか吐いちゃって」


 反省した表情で彼女は今まで行った無礼に対し、謝罪していた。


「気にすんな。飯食って、気分は落ち着いたろ?」


「うん」


「じゃあ、最初からやり直そうか…俺は品川修二、前にいるのが南雲暖人だ。俺達は海道に来た。ある集団を追って海道まで来た。そして川神忍にサインをねだりに来た訳だ。」


 最後だけは嘘をついて、彼女に此方の事情を話した。


「そうなんだ…昨日のアレも情報収集とか?」


「アレは絡まれただけだ。そこで勘違いされて戦闘となった。まあ、事故だな」


「…そうなんだ。アンタ達だけ自己紹介させるのは駄目よね。私の名前は木戸(きど)愛菜(あいな)、私立マリアンナ女学院二年」


「え? 私立…なんだって?」


「私立マリアンナ女学院。東京でも有名で金持ちな女子高だ。一応、調べた」


 修二は個人的に複雑な名前を覚えきれず、南雲が調べてフォローした。


「じゃあ、そのお嬢様学園は海道に来た。マスク集団を知らねぇか?」


 そして修二達は木戸へ本題に入ろうとしていた。

いかがでしたか?

もし良ければ誤字や脱字や意見や質問等があれば教えてください。

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