第83話 ビバッ!東京。
遅くなりました。今回から第3章に入ります。
明朝、東京行き新幹線の穏やかな車内にて。
修二と南雲は喫煙席に座り、東京に着くまで南雲だけは眠っていた。
修二は窓から景色を眺めながら、深々と煙草を吸っていた。
(今まで海道の『覇気使い』と戦った事しかない。東京の『覇気使い』はどんな戦法で来るのか、予想ができねぇ。用心して挑まねぇとな)
深刻な表情で、東京に着いた時の事を考えていた。今までは大阪での出来事であり、次は未知とも言える東京での戦いとなるので、より一層と気を引き締めていた。
「…格好つけてる所悪いが、この格好で真剣な表情されるのは、流石にな…」
目覚めた南雲は修二の表情に気付き、格好について心情が複雑ながら指摘した。
今の二人はアロハシャツ、短パン、サンダルといったハワイアン気分で、東京へ向かっていたからだ。
「俺の顔はアッチに知られてんだ。だったら、旅行者の振りして東京に潜入すんのが、ベストだろ?」
「…にしてもだ。アロハシャツは目立つだろ」
「これしか無かったんだよ。」
あまりにも修二の簡単で淡白な理由で、南雲は真顔で呆然とするしかなかった。
「まあいい。それより、俺達が拠点にするホテルを決めておいてやったぞ。新宿の一般ホテルだ」
「新宿を拠点にすんのか? マンションとか借りた方がいいのに」
「もし、ギャング集団と神崎忍が見つからないとなるとだ。無一文で東京に住むことになるんだぞ? 俺達、無職の二人で合わせた貯金で、何年もいる事を考慮した結果だ。」
「その時は資格持ってんだから働けばいいじゃん」
「馬鹿野郎! 俺は急ぐにでも大阪に戻りたいんだよ!」
「だったら俺一人で行くから、テメェは帰れよ!」
「テメェ一人にすると勝手に、また強くなるから、俺も強くなるんだろうが!」
「お前ここまで来て喧嘩売ってんのか? 天の邪鬼ハゲ、帰るって言ったり、行くって言ったり舐めてんのか?」
「オメェこそ、ノープランで東京に進行しようとしてんのが悪いんだろうが! 天才である俺様が計画を立ててやってんだろうが、ありがたく思え! この頭空っぽ中分けが!」
暇さえあれば、二人は立ち上がり喧嘩を始めた。目的は一致しても、仲良くなれない事を証明した瞬間だった。
「おい、表出やがれ。新幹線の風圧で、そのムカつく顔の皮を抉ってやるよ」
「やれるものならやってみろ! その代わり、テメェの役に立たねぇ、一物を使い物にならねぇように電気を流してやるからよ! 覚悟しとけ!」
一般人ですら口にすることすら、恐ろしい事を二人は簡単に述べていた。
「…駄目だな。」
「…あぁ、そうだな。」
何か物足りないと感じ、二人は落ち込んだまま座席へと座った。
「まあ、一方的だったからな。弁護士辞めるにしても一ヶ月前に申請する物なんだよな?」
「今頃、輝さんはカンカンだろうな。けど、こうでもしねぇとな?」
修二と南雲は昨日起こした行動について、少し後悔していた。
「…帰ったら謝ろうぜ。顔をボコボコにされてもな?」
修二は帰ったら、ちゃんと謝罪をしようと提案した。
「…痛いのは勘弁だが、それ以上の事をしているからな。致し方ないけど…あの人、マジで手加減知らねぇからな」
二人は大学時代を思い出す。地獄のような訓練で、馬乗りされながらボコボコにされる光景が、目に浮かんでいた。
そして陰鬱な気分となった。
「…煙草吸えよ」
「あぁ」
落ち込んだまま、修二は本日五本目の煙草を吸い始めた。
そして東京駅へ辿り着き、地下鉄へ乗り換えて新宿駅まで目指した。
新宿駅で下車し、駅の外へと立っていた。
「ここが東京か。大阪と魔界以外行った事ねぇから、全部が新鮮に見えるぜ。」
海道から出た事のない修二は、軒並みにビルが立つ、風景に感動していた。
「…これからどうする? 俺は先にホテルでチェックイン済ませてから秋葉原で、パソコンを買いに行くんだが?」
南雲は先に自分の目的を修二へ伝えていた。
「そうか。じゃあ、俺はギャング集団の情報でも集める。バーとかで悪そうな奴を見つけて聞くさ」
「…手加減してるから言っとくが、本当に殺すなよ?」
「しねぇよ。まあ、返り討ちにして血が付着する事はあるけど、半殺し程度で聞き出すよ」
(その先が恐ろしいから、精々殺すなよって言ってんだよ。このボケ!)
修二の能天気な返答に南雲は内心でキレていた。が、これ以上相手にすると時間がなくなるので、無視してホテルへと向かった。
一人になった修二は、迷いなく真っ先へ治安が悪そうな場所へ向かった。
そして修二は何の収穫もないまま、ファミレスの裏路地でションボリと煙草を吸っていた。
すっかりと辺りは真っ暗となり、街灯の光だけが周りを照らしていた。
「畜生、警察呼ばれてなかったら詳しく話を聞けてたのによ…ったく」
昼間から夕方になるまで、警察と鬼ごっこをしていた。
最初は修二が通り道で、物腰の柔らかい態度で接し、情報を聞き出そうとしていた。が、相手は生意気な小僧数人だった。
小僧達は素直に聞く耳を持たず、更には修二からカツアゲまでしようとしたので…
一人を残し、一瞬にして小僧達をポリバケツへ投函するという狂気に至った。
「じゃあ聞くぞ、クソ餓鬼。ここらに覆面したギャング集団を知らねぇか? 教えてくれるなら、何もしねぇからよ」
小僧は恐怖で何も伝える事なく、泡を吹いて気絶したのだ。そして警察が駆け付けて、今すぐ捕まる訳にはいかない修二は、屋上へ駆け上がり。
数メートル離れたビルへ大きく飛翔し、逃走する事となったのだ。
そして今に至っていた。
「海道でも喧嘩売ってくる奴はいるけど、ここは陰湿な奴ばっかだな。」
修二は愚痴を溢しながら、気ダルげに煙草の火を消して、ホテルへ帰ろうとしていた。
「お兄さん、そこのアロハシャツのお兄さん?」
そこへ以下にも、チンピラですよという三人組が修二に絡んで来たのだ。
「…あのさ、俺もう疲れてんだよ。話なら電話番号教えるから…」
精神的に疲労が溜まっており、相手する気にもならなっかたので、後日チンピラの相手をする事にした。が、一人のチンピラが鋭利なポケットナイフを目前へと突き出したのだ。
「刺されたくないよね? だったら財布を置いて消えな! それとも刺されてからボコッて財布をもらおうか?」
チンピラはナイフで脅し、修二から金銭を巻き上げようとしていたのだ。
「…面倒くせぇな。そんな玩具で俺を殺せるなら……一発で殺せよ? 一発ですまなかったら、テメェの顔を潰す。後ろにいる奴等の首もねじ曲げる。どっちにする?」
修二の冗談とも呼べない、本気の殺気を放ち、逆にチンピラ共を脅迫していた。
「う、うるせぇ! と、取り敢えず死ねぇぇぇぇッ!」
人とは思えぬ殺気を当てられ、チンピラは動揺し取り乱した。そして自己防衛の為、ナイフを修二の腹へ突き刺した。
「…どうした? ナイフ使っておいて、殺せませんでしたはないだろ?」
チンピラのナイフは腹に触れた瞬間、真ん中から真っ二つに折れていたのだ。
「う、嘘だろ!? チタン性の…ナ、ナイフなんだぞ!?」
「じゃあ約束通り…」
修二は宣言した通り、左手でチンピラの胸ぐらを掴み、右腕を大きく引き、殴る体勢へと入っていた。
「あのさ? 無抵抗なオッサンを囲んで、楽しいわけ?」
そこへヒーローの如く、修二を助ける声があったのだ。
修二と三人のチンピラは、声の主を確かめるべく注目する。
「早く、その人を解放しなよ」
それは女の子だった。目付きは悪く、黒いロングストレートの髪型、毛先だけ赤く染め、右耳には大量のピアス。
紺色のスクールベスト、その上から学校指定らしきブレザー、限界まで裾上げされた黒いスカート、黒い靴下、茶色のローファ。
まさしく、お洒落なヤンキー女子が喧嘩に乱入してきたのだ。
「…誰?」
いきなりの出現により、修二は呆然とし困惑していた。
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