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マグナムブレイカー  作者: サカキマンZET
第2章 魔導使い襲来。
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第77話 帰投と平和。

遅くなりました。

「おい、忍。早く『闇の覇気』を使って、入口まで送ってくれ。」


 閻魔は出口まで歩くのは面倒だと感じ、忍の力で帰ろうとしていた。


「結界に包まれて出れないんだが?」


「…しょうがねぇな。」


 ウロボロスによって結界で脱出できない事を覚えていた忍は、閻魔へ無理だと伝えた。

 それを聞いた閻魔は首をポキポキと鳴らし、指パッチンする。


「…これで終わり?」


 案外に簡単と終わってしまったので、吹雪が尋ねた。


「あぁ、終わりだ。忍、早く『ダークネスホール』で出口まで開けてくれ。」


 閻魔の事なので忍は黙々と従い、『ダークネスホール』を作り出した。そして忍が安全確保の為、先に侵入した。

 無事に結界は破壊されており、滞りなく先へ進めた。


「……。」


 忍は辺りを見渡し、敵がいないか感覚で捜索もしていた。


「良し、一人ずつ入って来い。」


 忍の許しが出たので、先ずは大怪我をしている修二から出す。吹雪が意識の無い、修二を頑張って背負いながら脱出する。

 数分後には全員が脱出しており、それを確認した忍は『ダークネスホール』を静かに、そっと閉じた。


「後は、アルカディア…。」


 忍は鍵を持っている、アルカディアへ後を託したのだ。


「はい、それでは…。」


 アルカディアは白い鍵を取り出し、空間へ挿入した。入口とは違い、白い縦線が入り、発光しながら両開きしたのだ。

 先には出発した時、現代の光景が視界へ映った。


「…一応、終わったんだよな。」


 未だにスッキリしない、モヤモヤ感があり自分では納得していない吹雪は、この戦いは終わったのかと確認した。


「あぁ、そうだ。これ以上、俺等に手を出そうと思うのなら、この閻魔が解決してくれる。」


「まあな。」


 忍の解決策が閻魔任せで、その本人さえも淡々と返事していた。


「そうか…終わったのか…。」


 悪夢とも思え、精神を削り、辛く長い一日、魔王との戦いが勝利で終わったのだ。

 その生きている喜びと感覚を、吹雪はその細胞一つ一つに刻んでいた。


(…勝ったんだ。無事に…人間界に…帰ってこれた。)


「吹雪くん!」


 そこへ懐かしい(相川)の声が聞こえて、本当に生きて戻って来たのだと、吹雪は実感した。

 そして人間界へ残っていたメンバーが走って、吹雪達に近づいた。


「すぐに品川さんを病院へ連れて行ってください!」


 吹雪がボロボロの修二を抱えている所を目撃したシェリアは、急いで控えていた医療チームへ指示を出した。

 修二は担架に乗せられ、病院へと直行されたのだ。


「お疲れ様です。他の組員はどうしました?」


「…死んだ。」


 鮫島が帰って来た閻魔に、気苦労をかけて尋ねたのだ。けれど、無表情のまま閻魔は淡白に返答した。


「分かりました。おい、引き上げるぞ。」


 鮫島が指示を出すと、一台の黒塗りの高級車が目前で停車した。


「…おっと、忘れる所だった。忍、日常へ帰って来た早々に悪いが…一週間後に頼みごとがある。来てくれるよな?」


「…面倒だが分かった。」


「それと品川修二に、“良くやった”と褒めておいてくれ。」


「そんなのは自分で言え。」


「頼んだぞ。」


 閻魔から一方的に修二の褒め言葉を託された忍は、不機嫌な表情だった。が、口約束でも約束なので渋々と従う事にした。

 そして閻魔が車へ乗り込むと、ゆっくりと発進し海道から去ったのだ。


「それじゃあ、今日は解散。南雲くん、暫くは品川の様子を見たいから、僕の許可があるまで休みにしておいて?」


「はい、能登にも伝えておきます。今日はお疲れ様でした。」


「それと給料は、何時も通りに振り込んでおいてあげてね。」


「はい。」


 今後について南雲へある程度、伝えて後は任せたのだ。そして輝はシェリアに頼み、高級車で病院へ向かった。


(今回は閻魔光の助力もあり、全員が無事に帰って来たな。失った物もあるが、生きているだけで十分だ…そろそろ、アイツとの蟠りを解かないとな…。)


 桐崎は今回で誰も死なず、無事に生き残れた事を噛み締めていた。そして昔を思い出し、誰かと和解しようと、夜空を眺めながら考えていた。


 そしてウロボロスとの激闘から翌日、修二は瞼を開けた。瞳は虚空だったが、なんとか視界はハッキリしていた。

 何より身体がダルいのにも関わらず、気分はかなり良かった。

 見覚えのある白い天井で察し、身体をゆっくりと起こした。


「…また病院送りになったか。」


「でも、今回は目立つような酷い怪我はなかったぞ。」


 病室から聞き覚えのある声が響き、修二は微笑んでいた。


「暫く見ない内に老けたな…父ちゃん。」


「そうだな、お前が輝くんの所へ行って五年だからな。そりゃ老けるさ。」


 それは修二の父親、品川宗春だった。五年の月日で、ほうれい線は深くなり、所々には白髪もあった。


「…修二、今回は少し聞きたい事がある。」


 宗春は真剣な面持ちで修二に尋ねた。


「なんだ?」


 修二がキョトンとした表情で聞く。と、宗春は右肩のレントゲン写真を修二へ見せた。


「輝くんから話は聞いてる。閻魔さんから右腕を貰ったのも…気分はどう?」


「すこぶる気分がいい。身体はダルいけど、そんなのが気にならないぐらいに…それにしても今日は寒いな。冷房強いんじゃねぇのか?」


 修二は正直な気持ちで宗春に返答していた。

 そして身震いするほどの寒気を感じ、冷房を疑った。


「…ありがとう。じゃあ、また何かあったらナースコールしてくれ。」


「あぁ。」


 宗春はレントゲン写真をクシャクシャになるぐらいに強く握りしめ、病室から去った。

 沢山のシーツが干してあり、病室の広い屋上で宗春は柵に項垂れ、涙を流していた。


「…悪かったな宗春。息子を俺と同じ化物にしてしまって…。」


 背後から閻魔が現れ、宗春に謝罪していた。


「…これから…修二は…どうなる?」


 怒りと悲しみの震えた声で、閻魔へ尋ねた。


「俺と同じになる。心が動じなくなり、全ての感覚が研ぎ澄まされ、相手を殺しても何も沸かなくなる。無感情の人間になる。」


「貴方の白龍で治してくれたら…。」


「『破壊の魔導』によって、治癒が不可能になっていた。最後の最後で嫌がらせでしたんだろうな、白龍で完治させない為にな。そしたら俺の腕を使うしかない、アイツ等と同じ世界にいさせることになるからな。」


「…私は貴方を責めるつもりもありません。貴方は、それ以上の苦しみを受けていますからね。」


「…もう一つの罪も背負う覚悟がないなら、今更ながら極道なんてやってねぇよ。」


 閻魔は胸ポケットから宗春に、黒革手袋を差し出した。


「別に寒くないですよ?」


「お前のじゃねぇよ。これは俺の知り合いに開発させた物だ。コレさえ着けてれば、普段通りに品川修二は暮らせる。」


「コレで修二は…。」


 宗春は泣き止み、自然と希望に満ちた表情となった。


「あぁ、俺も悪いと思ってからな。さっさと渡しに行け。」


「はい!」


 宗春は革手袋を受け取り、急ぎ足で修二の所へ向かった。


「…全く。親分っていう立場も大変だな。」


 用事が済み、閻魔は背中から、漆黒で大きい翼を出現させて、大空へと羽ばたき去った。

 そして宗春が病室前まで辿り着くと、病室から笑い声が聞こえていた。


「へぇ~そんな事があったんだな。」


「あぁ、でも本当に生きて良かったよ。」


「簡単には死なねぇよ。まだ神崎忍と決着つけてねぇからな。」


 それは修二と吹雪が大いに談笑している光景だった。そんな光景を見て、宗春は二人は五年前と変わってないと、少し微笑ましく思ったのだ。

 二人の時間を邪魔しないように宗春は、また時間を開けて行く事にしたのだ。

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