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マグナムブレイカー  作者: サカキマンZET
第2章 魔導使い襲来。
70/170

第70話 第五戦、ポニーテールと金髪対謀反。

この頃、忙しくて早めに投稿できませんでした。

暫く続きそうなので、もし良ければ引き続き読んでいただけたら嬉しいです。

「吹雪くん達は大丈夫かな?」


 輝は走りながら疲れた様子を見せず、置いてきた二人の安否を心配していた。


「大丈夫です。あの二人はデコボココンビでも、あの鬼塚本部長に鍛えられています。簡単に負ける事はないでしょう。」


「…確かに、そこの心配はないね。けど、品川は無茶をするタイプだから、昔みたいに考えず、何かを犠牲にしてるかもしれない。」


「…あの脳筋は、人の言う事を聞いた試しが殆どありません。また、満身創痍の状態で馬鹿みたいに輝様を呼ぶんでしょうね。」


「それはそれで安静にしてほしいね。まあ、言って聞くような性格じゃないのは……昔からだね。」


「天界でも大きく噂になっていますよ。ある一人の不良が、『覇気使い最強』の天才に勝ったと。主だけは知っていた様子でしたけど。」


 修二の話を聞いて、アルカディアが入ってきたのだ。


「そうなんですか。でも、神様は何でも知っているからね。」


「人間の可能な範疇までは知っています。けれど、閻魔様が動く事までは皆様、全く知らない状況でしたからね。」


「…アルカディアさん、こんな質問して悪いんだけど…何故、会長は魔神にも神にもなれたのに、極道という役職に就いたのかな?」


 気まずい顔で輝はアルカディアに対し、閻魔がどっちの道を進まず、なぜ極道になったのか尋ねたのだ。


「…閻魔様は神にも魔神にも興味がなかったのです。一度、魔王として千年は務めていました。それは凄かったですよ、神託で授かった勇者を容赦なく、ラリアット一撃で倒したくらいですからね。」


「む、昔から規格外みたいな力だったんだね。」


 そんな時代の自分に神託が授けられなくて良かったと輝は思っていた。


「やる事はやってましたよ。都市を一つ滅ぼしたり、魂の分別管理したり、一つ一つ罪がある魂に罰を与えたり過労死レベルで働いていましたよ。まあ、神なので死にはしませんけどね。」


(昔の閻魔さん、人権が無かったんだ。)


 そんな鬼畜な事を平然と言うアルカディアに対し、輝は少しドン引きで愛想笑いを浮かべていた。

 そして、話をしている内に第四の扉へと辿り着いていた。


「…次はどんな相手かな?」


「もしかしたら、この部屋が最後で鞍魔という奴が待機してるかもしれません。」


 輝が次の対戦相手に対し興味を持っていた。

 隣で周りを警戒しながら聞いていた雅が鞍魔と予想していた。


「…『謀反の魔導使い』。」


 輝は数ヶ月前に鞍魔と形だけ対面したばかり、どんな人物なのか想像していた。そして幾つかの戦闘パターンも脳内と体験でシミュレートし、準備万端だった。

 修二みたいな有り得ない行動も考慮し、油断しない状態だった。


「さあ、アルカディアさん行こう。」


 輝が扉に手を付き、力強く押し開けた。


「…お待ちしておりました。神崎輝様、木元雅様、天使長アルカディア。」


 玉座には座らず、隣で立ちながら三人へ対しお辞儀し、待ち構えている鞍魔がいた。


「律儀に待ってたんだ。僕達が来るかどうか分からないのに…。」


 普段と違う輝の皮肉に対し、鞍魔は顔を上げて怪しく微笑んでいた。


「人類の危機に対して、悠長に時間を掛けて戦う人達じゃないでしょ? それぐらい分かって行動してないと、こちらもドヤされるのでね。まあ、私以外が全滅するとは想定外でしたけどね…。」


 輝の言葉を倍返しするように鞍魔は挑発していたのだ。


(流石に、この程度の煽りじゃ動いてはくれないよね。だったら、こちらが先に動くしかない訳だね。)


 そう思った輝は腰を深く落とし、先手を打とうとしていた。が、待ってくれと鞍魔は右手で静止させていた。


「まあ、落ち着いてください。魔王様は天使長に用がありまして、先に向かって頂けたら嬉しいです。」


 鞍魔はアルカディアを先に行かせる様、指示していたのだ。


「…分かった。アルカディアさん、こんな状況ですが先に向かってください。必ず追い付きますので。」


「輝さん。辛い事ばかり押し付けてしまってすまない。この償いは出来る範囲で埋め合わせさせてもらいます。」


「分かりました。アルカディアさん、楽しみにして待ってます。」


 そう輝が告げ、アルカディアは鞍魔を警戒し睨みながら退室した。

 先へ進み警戒し睨むアルカディアを嘲笑うように、鞍魔は横目で流していた。


「…さてと、アルカディアさんも行った。まだ他に要求とかある?」


「そうですね。もうありませんよ、後は悪魔殺し(エクソシスト)の二人と邪魔者を排除する事だけです。」


 鞍魔はお辞儀を止め、顔だけ上げ、殺意に満ちた表情を顕していた。


「初めてかも。悪魔と意見が一致する日があるなんて…気分が悪いよ。」


「それも同じ台詞と気分ですよ。」


「雅、サポートを頼むよ。」


「はい!」


 戦闘状態となった輝の言葉と同時に、待機していた雅は上着を脱ぎ捨てた。

 雅の体には、クナイを収めるホルスターベルトが巻き付いていた。そしてクナイを二本だけ素早く取り、鞍魔へ向けて投擲したのだ。


「…良い武器ですね。私もそんな武器が欲しいです。」


 投擲されたクナイは目前でピタリと空中で停止し、クルリと横回転され、輝達へ勢いを増して向かっていた。

 危険と判断した雅は、目前で風圧の壁を作り凌いだのだ。


(まさか無機物まで操るとは…厄介だな『謀反の魔導』は。)


「…輝様、ここは私が陽動に出ます。何処まで効果の範囲なのか、確かめる必要があります。」


「任せてもいいかな? もし余裕があったら、あの薄気味悪い笑顔をアホ面に変えてきてよ。」


「かしこまりました。」


 ニヤリと雅は嬉しそうに承諾する。と、両手に四本のクナイを指で力強く挟み、鞍魔へ急接近する。


「!」


 完全なる殺気を遮断した状態で、目前まで接近され鞍魔は驚愕していた。

 そしてクナイが胸に突き刺さる寸前、ピタリと腕は停止し、それ以上進める事ができなくなった。


「危ない危ない。少しでも反応が遅ければ、致命傷を負わされたでしょう。」


「随分と余裕があるな。貴様の『魔導』に弱点は無いと見えるな。」


「えぇ、殆ど弱点がありませんからね。私の『魔導』は…。」


 鞍魔が呑気に能力を自慢している最中、するりと背後から輝は出現し、右ハイキックを繰り出していた。

 だが、察知していた鞍魔は輝のハイキックを右腕で防いでいたのだ。


「いいコンビネーションだ。私にも…おっと!」


 何かを察知した輝は、鞍魔から“何かされる”前に素早く足を引っ込め、力強い左ミドルキックを繰り出した。

 そんなミドルキックは鞍魔がヒラリと横へと避けた事により、空振りと終わったのだ。


「ーー厄介だね。参謀だと思って手を抜いてたら…かなり強い上、戦闘技術も高い。」


「思い切り力を込めてクナイを刺しましたが、何かに阻まれる感覚で止められました。遠距離攻撃、近距離攻撃も同じ方法で止めたんでしょう。」


「…じゃあ次は新しいのを試してみよう。」


「はい。」


 輝の提案に乗った雅は瞼を閉じ、ゆっくりと   深呼吸し、肩の力を抜いてリラックスしていた。

 鞍魔は自分自身の力は絶対に見抜けないと、高を括りながら何もせず余裕でいた。


「…『風神化』。」


 そう雅が小さく呟く。と、風は凶暴な竜巻へと構成し四肢を纏ったのだ。

 そして持っていた一本のクナイを風力で宙に浮かせた。


「第一式、風神の型…『風神列破(ふうじんれっぱ)』!」


 雅は右拳を腰まで深く落とし構えた。そして技名を高らかに叫び、力強くクナイを殴ったのだ。

 殴られたクナイは大きな竜巻となり、真っ直ぐ鞍魔へ向かっていた。


(これは…。)


 鞍魔は何時も通り能力を使い、防ごうと考えていた。

 そして竜巻のクナイは鞍魔へ近づく寸前、見えない壁に激突した。が、クナイはガリガリと破壊する音を立てながら突破したのだ。


「な、なんだとッ!」


 鞍魔は鳩が豆鉄砲を喰らったような表情で驚愕していた。そしてクナイは鞍魔の胸へと深く突き刺さり、壁まで吹き飛ばされた。

 壁に激突した衝撃でクレーターが出来上がり、粉塵も発生して鞍魔の姿は煙に包まれた。


「…まだ威力に不満はありますが、効果はあったそうですね。」


(品川を殺害する為だけ、密かに開発された技だからね…ちょっと過剰すぎるけど、悪魔には情けは言えないよね。)


 技の経緯が怨念と殺意で作られたこと以外は、すぐにでも応用し実用化できると考え、思わず笑みをこぼしていた。


「いや~危なかったですね。本当に脱落寸前でしたが、なんとか致命傷だけは防いで助かりましたけどね。」


 煙幕が晴れるとヤレヤレという、窶れた表情で鞍魔は出現した。服は完全に崩壊して青白く痩せ細った上半身が露出し、痛々しくも無傷な状態だった。


「まさか能力を使っても貫通されるのなら意味もありませんね。凄く、心の底から敗北したという感情が沸き起こっていますよ。悔しいというより、してやられた(・・・・・・)が正しいですね。」


 鞍魔は雅から喰らった技に対して、簡単な感想を聞かせていた。


「すんなりと負けてくれないんだね。面倒な相手と当たっちゃったな。」


「次に移ります。多分、今の技を放っても対策されていると思います。」


 鞍魔のしぶとさに輝が嫌悪感ある悪態をついている。と、次の手を考えていた雅から提案が出たのだ。


「…気をつけてね。」


 輝は注意しながらも、雅の提案を受け入れたのだ。


「はい。」


 ハッキリとした了承の返事を返し、雅はポケットから黒いオープンフィンガーグローブを取り出し、深く装着したのだ。

 それは本気の眼差しであり、鞍魔だけを見据えた。『異常なまでの殺気』だった。


(まずいですね。今の攻撃から察するに、一つだけでは無い筈です。そして悪魔の私ですら、ちょっとだけ恐怖を感じる殺気…これが神崎の『悪魔殺し(始末屋)』ですか。)


 チクチクと全体を小さい針で突き刺される感覚が襲いながらも、なんとかして状況を打破しようと考えていた鞍魔だった。


「第三式、風神の型。『風神分身』。」


 何処からか突風が吹き出し、瞼を開けていられない程に包まれた。鞍魔は目を細めて雅が仕掛けてこないか警戒していた。

 そして突風は止み、鞍魔はゆっくりと瞼を開き、呆然としていた。


「…もはや貴方を人間かと疑いたくなる。もしかして、ゴリラと摩訶不思議な何かで合成された新人類ですか?」


「好きなだけほざけ。今から貴様は新人類の私に、八つ裂きにされてーーここでくたばる運命だからな。」


 そこには部屋を埋め尽くすような、大量の雅がいたからだ。


「嫌ですね。こんなの実体もあったり無かったりを相手して、本物を見極めるなんて…面倒にも程があります。」


「だったら無抵抗のまま、死ねば済む話だ。」


 そして少人数の雅がクナイを一斉に持ち、鞍魔へ襲いかかったのだ。


「仕方ありませんね。あまり格闘は苦手なのですが、これも魔王様の命令ですから…。」


 あまり格闘に対しては気乗りしなかった鞍魔だった。が、魔王の命令という事もあり、渋々と格闘することになったのだ。


「『風神列破』!」


 悪夢と思える防ぎきれない無数のクナイを鞍魔は、ヒラリと体を反らし避けていたのだ。


(このクナイを味方にするには…流石に無理ですね。本物と偽物を区別できない状況では意味がありませんからね。でしたら…。)


 迫りくるクナイを次々と避け、一人の雅を掴んでは別の雅を衝突させた。それは分身であり、衝突すると消滅し風が吹き上がった。


「なるほど、正体は風でしたか。」


 鞍魔は手に違和感を感じ、横目で確認した。


「…恐ろしい物ですね。まさか、触れただけで手がボロボロになるとは。」


 鞍魔の皮膚はズタズタとなり、肉が露出し、ダラダラと出血していた。

 遠くから見ていた空気状態の輝からでも、辛く痛々しいと思っていた。


「…アレを品川にやるつもりだったのかな? だったら早めに止めてやらないと…仕事に支障をきたす攻撃はいらないからね。」


 戦闘は一向に参加せず、見物を決め込んでいる輝。ズレた事を呟き、今後の事は一切考えていなかった。


「まあ、解決法は見つかりました。一先ずは、私も何か犠牲にしなければ貴方に接触できないですね。」


 そう告げると鞍魔は大量の分身へ走り突っ込んだのだ。次々と分身は消滅していき、数分足らずで本物の雅だけが残っていた。


「そ、そんな!」


 まさか我が身を犠牲にしてまで、突破した鞍魔に雅は驚愕するしかなかった。


「あまり私の性格には合わないのですが、キチンと処理できましたね。」


 そこには顔の半分が失い、皮膚は剥がれ肉状態にされた、おぞましい姿の鞍魔がいたのだ。


「…雅、今すぐ僕の後ろへ逃げろ! 奴は君を狙っている!」


 輝は鞍魔の狙いに何か気づいたのか目一杯、叫び雅を呼び戻した。

 輝の慟哭で戦意が損失寸前だった、雅は我を取り戻した。そして急回転し、脱兎の如く急ぎ戻った。


「…一歩遅かったですね。」


 そして既に遅く、薄気味悪い笑みで鞍魔は右手で雅の頭を掴んでいたのだ。そして口を耳元へ近づけ、静かに何かを囁いた。

 その囁きを聞いた途端、瞳は光を失い、頭だけが項垂れた。


「雅!」


「残念でしたね。貴方も参戦し、私を早く殺していれば彼女はーー私達の協力者(・・・)になることはなかったのに。」


 鞍魔から告げられたのは、恐ろしく残酷な意味だった。鞍魔は『謀反の魔導』を使い、天敵である雅を洗脳し、味方にしたのだ。

いかがでしたか?

もし良ければ誤字や脱字や意見や質問等があれば教えてください。

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