第66話 到着する者達。
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忍と修二が『魔導使い』と戦っている頃、人間界では、アルカディアの開けたゲートから下級悪魔達が進入してきた。
「こ、これが噂の悪魔ですか?」
「おぞましいッスね。」
緊急連絡があった相川と仲村の二人はシェリア、桐崎が率いる殲滅部隊と共に行動していた。
相川と仲村はファンタジーの中だけだと思っていた。悪魔に驚愕していた。
「相川さんは『鉄の覇気』で攻撃、仲村さんは『水鉄砲』で相川さんを援護射撃、桐崎さんは銃撃と格闘で対応してください。」
シェリアは司令塔として、周りへテキパキと指示を出していく。そして悪魔が少しでも弱まると良いと思い、シェリアはゲート付近で毒ガスを噴射していた。
「あんまり環境に良くありませんが、皆さんが楽に戦えたらと思います。」
「あのさ、それって俺達には無害なんッスか?」
「…多分。」
『毒の覇気使い』であるシェリアは、仲村の問いに少し戸惑っていた。
そんな戸惑いを見てしまった仲村と相川は唖然としていた。
「気にしてもしょうがないね…!」
考えても埒が明かないと考えた相川は、『鉄の覇気』で全身を鉄へと変換させ、万全の対策へと出た。
「…まあ、そうだろうな。それに新しい技もできたから、悪魔に効くか試してみたいッスからね。」
仲村は相川の背後へと周り、巨大な滴を数滴作り、こちらも万全な対策となった。
「さあ、始めましょう。」
そして最後にシェリアは二つナイフを取り出して、悪魔へ迎え撃つ態勢となっていた。
準備が終わったと同時に悪魔は入口から這い出て、人間界へと入って来た。
桐崎が率いる殲滅部隊はアサルトライフルで一斉射撃する。下級悪魔は次々と倒れては消滅していき、幸先がいいと思っていた。
「ほう、毒ガスに現代兵器で攻めてきましたか。人間としては良い手だと思います。」
そこに顔は猿、紫色のローブを被った。中肉中背の異色を放っていた悪魔だった。
その悪魔はシェリアの毒を喰らっても弱っていない様子だった。
「皆さん、仲間の死体を盾にして進軍してください。」
指示通りに、悪魔達は同族の死体を持ち上げた。そして銃弾飛び交う中、死体で防ぎ、毒は喰らいながらも進軍し、十分に人間界へと進入してきた。
「行くよ、シェリアさん!」
「はい!」
相川とシェリアは下級悪魔達の中へと押し入った。相川は力はなくても、持ち前の固さと防御で凌いでいた。
シェリアは見事なナイフ捌きと毒で悪魔達を翻弄し、次々と倒していく。
「あの『毒の覇気使い』を一点に狙いなさい。あの人間が厄介です。」
上級悪魔は相川よりも強い、シェリアへ一点集中する事を指示した。
シェリアは下級悪魔を対処するが、あまりにも多く、大群に飲み込まれかけていた。
「『水大砲』!」
すると仲村が空中に浮かべていた、大きな水を大砲の如く、発射した。砲弾は大人数の悪魔を巻き込み、シェリアは無事だった。
「大丈夫ッスか!」
「ありがとう仲村さん。私は大丈夫。」
「良かったッス。」
仲村はシェリアの無事を確認すると、安堵の表情で安心していた。
「こんな事で安心してもらっては困ります。こちらにも秘策があります。来てくださいベヒーモス!」
ゲートから突っ掛かりながらも、巨大な猛獣が現れた。その姿は大きな一本角、象より巨大な体型、全てを恨みような眼差し、圧倒的な存在だった。
「『水大砲』!」
仲村は砲弾でベヒーモスに顔へと攻撃した。が、効いた様子もなく更に暴れ回っていた。
「き、効いてねぇッス…。」
「か、勝てるのかな?」
「でも、倒すしかありません!」
相川と仲村は圧倒的な存在の魔物に臆していた。が、シェリアは臆せず、ナイフを構えてベヒーモスへと立ち向かった。
「皆さん、品川さん達が帰れる場所を守るのが私達の役目です。皆さんで笑いあって、また普段の生活に戻れるように!」
シェリアは皆が無事に帰って来る硬い意思を語る。と、聞いた相川と仲村は恐怖を押し殺し、シェリアと同じくベヒーモスへと立ち向かった。
「流石だ。硬い決意を見せた、お嬢ちゃんと若造は、そんな図体がデカイだけの悪魔ごときに、負けない力を持った。」
その言葉と同時、ベヒーモスは縦へと真っ二つに斬られ、砂化し消滅した。
「鬼塚、道は開いた…行け。」
そう誰かが命令すると、鬼塚は目にも留まらぬ速さで、下級悪魔を倒しながらゲートへと入って行ったのだ。
全員と悪魔は手を止めて、鬼塚が入ったゲートではなく、後ろへと振り向いた。
そこには月光を背に、喪服スーツの集団が大人数で立っていた。
「あの悪魔はグシオンだ。過去、現在、未来を全て見通すが、格上の俺等が来る事は見通す事はできなかったな。」
「え、閻魔…光…様…。」
グシオンは明らかに、閻魔が現れると恐れていた。
「魔界連合が来るとはな…何故?」
桐崎は閻魔と部下が来た事を、不可解と思っていた。
「会長、先に行ってくれ。俺達はグシオンを勧誘してみる。」
手を上げて名乗りでたのは魔界連合組長、鮫島だった。
「親父さん、頼みました。半分は残って親父さんの手伝い、この人達の援護、もう半分は俺に付いて来い。」
閻魔は連れて来た半数に分け、ゲートへと向かっていた。が、グシオンは恐怖しながらも閻魔に立ちはだかっていた。
「…魔王ウロボロス様の命令でゲートには誰も通すなと…。」
「邪魔だ。」
閻魔はそれだけ言い残し、部下と共に『魔界』へと向かったのだ。そして残された鮫島はグシオンへと近づく。
「名前はグシオンと言ったな? どうだ、俺達の組に入らないか? ウロボロスより倍は給料は出る。それに…!」
鮫島はグシオンを組へと勧誘している最中に遠くまで吹き飛ばされた。
その理由はグシオンが片手のみで、鮫島を軽々と突き飛ばしたのだ。
相川、仲村、シェリア、桐崎、殲滅部隊は鮫島が呆気なく無抵抗に吹き飛ばされたので、驚愕し唖然としていた。
「私を舐めるなよ? 『魔界』を無断で脱出し、人間界でヤクザという真似事をして、『魔神』である閻魔様をたぶらかした。貴様に制裁を与えてやる!」
「たぶらかした? 違うな、アイツは自分の意志で極道になり、会長まで登り詰めた。アイツは『魔神』と『神』、どっちになるかと周りから散々言われたが、どっちも止めて人間を知ろうとしてる。お前がキレる事はないだろ?」
鮫島はスーツが破れて上半身裸の状態になっていた。背中はジンベエザメが魚を捕食する刺青だった。
「黙れ! お前ごときの動きは全て体験し、知っている!」
「…ちゃんと聞いてなかったな? もう一度聞く…組に入らないか?」
「答えは…NOだ!」
グシオンは右手と左手に、溜めていた『魔力弾』を鮫島へ向けて発射した。
断られた鮫島は疲れ気味にタメ息を吐いて、急速に迫りきた二つの『魔力弾』を右片手だけで防いだ。『魔力弾』は鮫島に当たったが負傷した様子はなかった。
「残念だグシオン。いい組員になると思ったのにな…『鮫矢』。」
鮫島は海色の弓と矢を出現させ、グシオンへと発射した。するとグシオンの頭は、捕食されたように無くなっていた。
数秒後には水で構成された鮫が、グシオンの身体を一つ残らず捕食した。
「お、おっかない…。」
「…捕食する技って怖くないッスか?」
「こ、怖いね。」
「アレが鮫島大河の力だ。魔界連合創設者にして初代会長。まあ、怒らせると止められないが面白い人だ。」
三人が鮫島の技に対して恐怖を抱いている。が、隣で桐崎は冷静に安心しろと、説明し納得させていた。
「味方で良かった。」
三人は魔界連合が味方で良かったと呟くのであった。
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