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マグナムブレイカー  作者: サカキマンZET
第2章 魔導使い襲来。
65/170

第65話 第二戦、因縁の対決。中分けと破壊者。

こちらも戦闘シーンなので長いです。

 次の部屋へ六人は辿り着き、今度は吹雪が扉を開けた。その部屋の中心にも一つだけ玉座があり誰かが座っていた。


「今度は誰だ?」


「…久し振りだな、品川修二。」


 吹雪の問いに対し、答えたのは嬉しそうに修二を見ていた幻魔だった。


「幻魔、いきなりお前か。」


「あぁ、順番で決まった。首を長くして待ってたぜ、もう戦いたくてウズウズしてたんだよ! さあ、早く殺り合おうぜ。『地獄』で、どれだけ強くなったのか!」


「…皆、行ってくれ。幻魔の相手は俺がする。コイツとは少し因縁があるからな。」


「ちゃんと来いよ。」


 吹雪は無事に追って来いよと約束させ、先へと走って進んだ。


「…頼んだよ品川。」


 アルカディアを除いた三人は後を頼み、先へと進んだ。


「品川修二、ここは私も残ろう。神崎忍なら確かに実力はあるが、君は普通の人間だ。二人で協力して…」


 アルカディアは修二が心配なり、一緒に残って幻魔と戦おうとしていた。が、修二はアルカディアを静止していた。


「…悪い。アルカディアさん、自分のケツは自分で拭かねぇと気がすまねぇからよ。ここは俺にやらせてくれ、俺の勝手な願いだけどよ。」


「……分かった。すまない、若い者に頼ることしかできないとは…。」


 アルカディアは自分の力不足を悔い落ち込んでていた。守るべき人間を凶悪な悪魔と戦いに任せるしかなかったからだ。


「気にすんな。アルカディアさんが落ち込む事ねぇよ、これは俺と幻魔の喧嘩だ。殺し合い程度ですませる気はねぇからよ。」


「そう言う事だ。天使はさっさと次の部屋へ行け、そこにいると確実に殺すぞ?」


 珍しく幻魔は修二とのタイマン勝負に同意し、アルカディアを邪魔者扱いしていた。


「…また会おう。」


 アルカディアは修二との再会を約束し、輝の後を追って先へと走り進んだ。


「うるさい奴は消えた。さっさと殺り合おうぜ、品川修二。どれだけ待ち焦がれたか! 閻魔光の力を受け、神崎忍と共に強くなったテメェをーー殺せると考えるとな!」


 幻魔は立ち上がりながら、嬉しそうな表情で玉座を即座に破壊し、強くなった修二へ語っていた。


「やられた分はキッチリ返させてもらうぜ。お前にボコボコにされた分と、俺が煽られた分だけな。」


「結局は自分の事かい。まあいい、俺も今は自分の事しか考えてねぇよ!」


 幻魔は笑いながら構えもせず走り出し、いきなり修二へ右飛び蹴りを繰り出した。

 突然の出来事ではあったが、修二は冷静に両腕で防御し、そのまま動きは止まり拮抗状態となった。


「『地獄』から生還したテメェを殺せると考えてたらよ。もう体に受けた傷が騒ぎ出してな、我慢ならなかったんだよ? 分かるか? 血が蒸発する一歩手前なんだよ。」


 幻魔は目を血走らせながら、修二が来る間まで猛烈に殺気立たせていたを告白していた。


「気色悪い(わり)事いうじゃねぇよ。俺はテメェと決着つける為に来たんだよ! それ以上、それ以下でもねぇよ!」


「つれないな。俺は認めてるんだぜ? 神崎忍とは戦えはしなかったが、お陰で更に強くなったテメェと思う存分に暴れられるからよ!」


 幻魔は左足だけで修二の両腕を思い切り、蹴り飛翔した。そして天井を両足に着けて、力と遠心力のみでグルグルと駆け回っていた。


「結構、見た目と違って機動力はあるんだな。」


 修二は幻魔の動きを感心していた。右手に『太陽』の炎を纏わせ、幻魔へ向けて数発発射した。

 幻魔は持ち前の機動力で華麗に、修二が放った炎弾を避けていた。炎弾は天井に衝突すると炎が広がり、逃げ道を無くしていた。


「考えたな。以前なら馬鹿みたいに、炎を纏って攻撃してきたのが改善され、ちゃんと遠距離に対応できるようになったじゃねぇか! 良くなったぜ、閻魔光から教えてもらったのか?」


 幻魔は天井に直立で腕組みし、歓喜な表情で成長した修二を褒めていた。


「…両方だ。格闘は忍、射撃は閻魔さん。それぞれで三ヶ月間、俺を鍛えた。」


 修二はジッポライターと煙草を取り出し、余裕があるのか一服しだした。煙草を咥えたまま、一時休戦の状態な幻魔と話す。


「閻魔さんは自分を鍛える時間を削りながら俺を見て、神崎忍は閻魔さんの相手しながら俺を鍛えていた。アイツ、スゲェよ。」


 修二は煙草を一本だけ箱から突き出させ、幻魔へ「吸うか?」と言わんばかりに、目立つよう見せていた。


「…確かに俺達(悪魔)でも震えて逃げ出す化物相手にハンデ背負いながら、相手してんのはスゲェな。」


 幻魔は天井から降り、修二から差し出された煙草を一本取り、初めて見る煙草に躊躇していた。

 そして修二は幻魔へ「俺の真似をしろ」と指差し、煙草を咥えた。咥えた事を確認すると着火したジッポライターに、葉と紙巻きへ近づけて燃やした。


「ゆっくりと吸って、肺まで到達したら吐け。深呼吸と一緒だ。」


 幻魔は修二の指示通りに紫煙を肺まで吸い込み、空気を吐いた。


「…脱法ハーブではないよな? 初めて味わう物だ。」


「煙草だ。俺が悪友と一緒につるんで吸ってた物だ。ハーブみたいにハイになる事はねぇが、気分はスッキリする。」


「ハーブはいいぞ? 覚醒剤より手早く摂取できる。吸う量によって調整できる上、バイヤーから大量に盗んでも文句も言わねぇ。まあ、文句を言っても言わなくても殺すけどな。」


 幻魔はニヒヒと笑いながら、脱法ハーブの重要性を披露していた。


「…脱法ハーブは知ってんのに煙草を知らねぇのはおかしくねぇか?」


「パイプを使ってる。だから、そんな紙巻きなんて物は知らなかった。それだけだ、それ以上それ以下でもない…だろ?」


 先程まで修二が言っていた事を見事に返した幻魔だった。


「あぁ、そうだな。そんなの俺が気にしたって、どうこうできる話じゃねぇ…けど、互いに気に入らねぇのは確かだろ?」


「だったら、気に入らねぇ物は“壊す”か“殺す”しかねぇよな? あの時みたいに中途半端な殺意で掛かって来るなよ? それは閻魔光にも教えられた事だろ?」


「あぁ…だが、今吸ってる煙草が終わるまで待て。」


「別に構わねぇぜ。」


 互いは黙々と喫煙し、精神を落ち着かせていた。そしてフィルターまで火が近づくと、二人は煙草を吐き捨て、頬へ目掛けて、音速の如く右ストレートを放った。

 二人の拳は頬で止まり、互いは相手の骨が折れる程まで膂力を込めていた。けれど流石に力比べでは、埒が明かないと気がついた二人は離れた。


「閻魔さん技借りるぜ。『灼熱太陽砲しゃくねつたいようほう』!」


 メラメラと燃え滾る太陽の塊が、修二の右掌から発射された。太陽は足場であるタイルを抉り直線へと幻魔に近づいていた。

 これは修二は閻魔が『無間地獄』から脱げ出す時に、使った技を内密で模倣し、作った物である。


「そんな小さい太陽ごとき破壊してやるよ!」


 幻魔は『破壊の魔導』を纏った右手刀で太陽へ縦方向に切り掛かった。が、太陽は『魔導』では破壊されず、逆に幻魔の手を焼き尽くしていた。

 幻魔はすかさず太陽を地面へと叩きつけ沈下させた。


「…忍から聞いた。」


 幻魔は破壊できなかった事に呆然と驚愕しながらも、修二の言葉には耳を傾けていた。


「『魔導』でも対応できる物とできない物があるってな。それは“絶対に破壊が不可能な物質”だ。太陽は冷えはするが、壊れた事はないからな? ちゃんと勉強してんだぜ。」


 修二は忍と閻魔から教えて貰った『覇気』の使い方、特性、物質、そして歴史。

 五年前の修二ならば情報量が多すぎて、頭は必ずパンクしていた。が、今の修二ならば油断せず、偶然にも輝から鍛えられた事で、理解できる思考力を手に入れていたのだ。


「…成る程、俺には『破壊』できない『覇気』か。初めてだぜ、こんなにも悔しいと思って……イラついてんのはよ!」


 怒った幻魔から衝撃波のような物が発生し、瓦礫を吹き飛ばした。その余波は修二にも伝わり、両腕で防御していた。


「もうお前を侮ったりしねぇし、安くも見ねぇ。神崎忍と比べたりもしねぇ、俺が全身全霊で…確実に…殺してやるよ。」


 その言葉と同時に、幻魔は本当の殺意で修二へと一瞬間近で接近していた。そしてガッチリと右腕を掴み、左握力のみで修二の骨を粉砕した。


 修二は一瞬の出来事で、頭が追い付かず対応できなかった。が、残った左で幻魔の脇腹へ猛烈なフックをかました。


 そして幻魔は脇腹のダメージで力弱く腕を離した。が、追撃で修二の腹へと右前蹴りを繰り出し少し離れた。


 それを察知した修二は即座に対応した。身体をくの字に反らし、攻撃を避けたのだ。

 そして幻魔から十分な距離を取れたので、負傷した右腕をチラッと確認する。が、完全に使い物にならなくなっていた。

 右腕は力無くブラブラの状態、筋肉だけで動かそうにも、強烈な痛みが伝わり戦闘に集中できなくなる。ハッキリ言って右腕が邪魔になっていた。


「テメェがどんだけ体力が悪魔に近かろうとも、所詮は人間という脆い仕組み。左だけで俺に勝てたとしても、今後の生活で意味をなさない。さて、どうする? 左のみで遠距離射撃するか? それとも格闘して左も潰されたか? どっちか選べ。」


 幻魔が選択肢を与えて近づく、正しくこの状況は絶対絶命という言葉に相応しかった。

 品川修二は神崎忍のように、器用な“天才”でなければ“最強”でもない。ただの一般的なチンピラ弁護士だ。

 けれども何かを棄てる覚悟は、五年前から何も変わっていない性格ではあった。


「…俺に勝ったつもりだろうが、まだ勝負は終わってねぇよ!」


 修二は強烈な痛みを我慢し、筋肉の力で右腕を動かした。そして炎を纏った右ストレートで幻魔へ殴りかかった。


「下らん、その拳を潰してやる!」


 幻魔は『破壊』を纏った右ストレートで修二と衝突する。修二の右拳は炎を纏っていたので、ガラスが割れるように粉々になった。


 それと同時に衝突した修二の拳とスーツは、肉塊へと姿となり潰れ、右肩まで到達していた。


 だが、こんな激痛に耐え修二は幻魔の腹へ左前蹴りで距離を離した。幻魔は勢いよく壁際まで修二に、蹴り飛ばされたのだ。


「見ろ! 右腕は完全に潰れた! いや、なくなったと言ってもいい! そんな状態で俺と戦えるのか? やってみてもいいぜ、それも楽しみだからな!」


 幻魔は愉快に修二の状態を笑っていた。それもそうだ、肩からポタポタとおびただしい量の血液が流れ、出血多量で瀕死寸前なのだ。


「…こんな状態? 精々、今のうちに笑ってろよ。テメェを殴るのにーー脆い右腕が要らなくなっただけだ!」


 修二の目辺りは確実に隈が出来ていた。顔色も悪く、貧血、更には右腕の激痛で、普通の人間なら即死を耐え抜いていた。


「…お前の名前を覚えておいて良かったぜ。品川修二、神崎忍と戦い勝っただけの事はある。それに免じて、楽に殺してやるよ!」


 再び幻魔は一瞬で、修二の目前へと近づき手刀で頭を狙っていた。そして今度こそ確実に、品川修二を仕留めたと幻魔は思っていた。

 すると何故か、視界はグラつき頭の中が真っ白となり倒れた。幻魔は呆然とし理解できなかった。

 攻撃が来たのは右側からだった。潰して存在しない筈の、右から感触が顎へと伝わったからだ。


「理解…できねぇ…っていう顔だな。教えてやるぜ…俺がわざと右腕を棄てたんだ。必ず潰れない右腕(・・・・・・・・)を作る為にな!」


 意識が戻った幻魔は驚愕し、修二をイカれてる人間と見ていた。普通ならば何か失えば、何かしらのリアクションを取り油断する。

 けれども、その判断は間違っていた。修二は油断する所か『太陽の覇気』で右腕を創造し、反撃したのだ。

 それはメラメラと激しく燃え上がり、近づく者を焼き尽くす『太陽』だった。


「く、狂ってやがる! 俺以上に…狂ってやがる!」


 初めて幻魔は目前にいる人間が恐ろしく感じたのだ。今まで忍以外の人間には無敗だったため傲慢になっていた。

 だが、絶対絶命的な状況でも満身創痍な身体でも、況してや右腕を潰して創造する人間には出会った事がないからだ。


「殺ろうぜ続き、まだ両方とも終わってねぇだろ?」


(こ、こいつは! 本当に人類が産み出した…人間なのか!)


 そのプライドが人間に『破壊』された事が気に食わないのか、幻魔は獣の如く咆哮し、修二へと襲いかかった。

 幻魔は右ストレートで修二の頬を殴り、次に頭突き、脇腹へ左ミドルキック、右手刀で左肩を脱臼させていた。

 修二は幻魔の攻撃をマトモに受けていた。額からは血、肋骨は折れ、左肩は脱臼、もはや満身創痍を超えていた。


「それで終わりか?」


 全ての攻撃が止むと修二は幻魔へと尋ねた。


「まだだ!」


 幻魔は恐怖をかき消すように一心不乱で修二を殴る。何度も何度も修二を殴り続け、両拳はボロボロになっていた。


「…それが結果だ、幻魔。」


 もう殴られ飽きたのか、修二は幻魔の手を右手でガッチリと掴んだ。


「俺はまだ終わって…!」


「…終わった。お前が俺に恐怖した時点で戦いは終わっていたんだ。」


 修二は幻魔の手を離し、勢いよく幻魔の胸、つまり心臓へと右手で深く突き刺した。そして心臓を片手で潰したのだ。

 幻魔は口から紫色の血を吐き、マジマジと修二に、ニヤついていた。


「…あぁ、終わりだな。ここで俺の願いが達成された。俺が願っていた強者との戦いでの死…お前だったんだな。神崎忍ではなく、品川修二だったんだな。」


 幻魔の心臓は確実に潰され、足から徐々に砂化していた。


「悪魔の死って何も残らねぇのか…。」


 修二は悪魔が死ぬ瞬間に立ち会い、何故か敵なのに悲しい表情を浮かべていた。


「…敵が死ぬだけだ。それ以上でもそれ以下でも無い話だ。お前は『覇気使い』としての仕事を全うしただけだ。」


「…でも、なんだか悲しくなってきたんだよ。憎いわけでも恨んでたわけでもねぇのに…。」


「…それは自分で考えろ、これ以上死人になる者が、とやかく言って解決できる話じゃねぇよ。あ~あ、どうせ死ぬなら最後に神崎忍と戦いたかったぜ…じゃあな品川修二。」


 そして幻魔の身体は限界へと達し、完全に砂と化し、『魔界』から存在が消滅したのだ。

 戦闘で疲れた修二は壁まで近づき、力無く凭れて座り込んだ。右手で煙草を探り、取り出し、一本だけ咥えたまま、眠るように深く意識を失った。

いかがでしたか?

もし良ければ誤字や脱字や意見や質問等があれば教えてください。

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