第170話 メガネ社長と中分け弁護士。
半年振りの更新です。もうすぐしたら卒業なので、した後は更新早くなると思います。
「……」
神妙な面持ちで品川はスマホを胸ポケットへ仕舞う。
「仲間は救えたかな?」
そこへ高島の声が聞こえた。
「あぁ、なんとかな。でも良かったのか? 敵に塩を送るような真似をしてよ?」
「弟の仲間なら大事だ。伊波は本当に狂っているヤクザだ。まあ、伊波に神崎忍は譲らんが」
「へぇ、でもその前にアンタを殴るっていうの決めてるんだ。バカな弟はバカな事をしでかした兄貴のケツ拭きをすんだよ」
「……嬉しいな。だが今そんな事を言える状況だったかな?」
「あぁ、そうだった。俺もアンタも本当についてないな……」
「「誰か! トイレットペーパー持ってませんか!」」
どうやら二人は個室で便座に座っていて、トイレットペーパーが切れて困った状態。そして悲痛な叫びを出す。
「おい、なんでやねん。なんでこんな時に紙なんか切れねん! しかも隣にボスおるし、丸腰状態で拮抗状態ってなんやねん!」
「いや、私もまさか腹下りするとは……だが、この状況を楽しもうじゃないか」
「嫌に決まってんだろ! 下半身丸出しでトイレで楽しむのは変態がする事なんだよ!」
「……会話を楽しもうと思ったんだがな」
品川の勘違いにより、気まずい空気と静寂が流れた。
「……テメェふざけん……」
品川が高島へ反抗しようとすると、腹痛が起こり、更に便器から離れなくなった。
「ほらほら、興奮するから……うっ!」
品川を宥めようとする高島だったが、こちらも腹痛が起こり、便器から離れなくなった。
「……よし、ここは興奮せずに話そうか兄貴」
懐から煙草を取り出し、箱から一本取り着火させ喫煙し始める。
「おいおい、ここは禁煙だぞ」
真似するかように高島も煙草を取り出して喫煙し始めていた。
「アンタも人のこと言えねぇだろ……いいのか? 侵入者扱いじゃなく客人扱いして。一応敵対してんだろ?」
「まあ、私も人だ。同じ流派で育った弟弟子を無下にはできんさ。例えそれが敵対していても、大事な者に手なんて出せんさ」
「……なあ? まだ神崎忍は諦められねぇか?」
「あぁ、それだけは諦められないな」
「……わーったよ、今回は譲る。けど、一つ言っておくぜ神崎忍は負けねぇよ。例え、アイツが弱体化してても、アンタが更に強くなろうとも俺が目指したい頂点だ。ここで負けてもらっては困んだよ」
「これは私も侮れた方だな。だが許そう、私は兄弟子だからな。弟の妄想ぐらいは聞いてやらないとな」
「まあ、大きく見える所で待ってろ。ちゃんと屈伏させてねぇ相手が、更に強くなって戻ってくる恐怖をな」
「……それは本当に怖そうだ」
そんな事はあり得ないと品川の言葉を嘲笑う高島。
「まあ、信じるのも信じねぇのも兄貴の勝手だ。俺はいつでも待ってるアイツが来るのをな」
そんな話をしてる間にバタンと、勢いよく扉を開ける音がトイレ内に響いた。
「おい、品川! お前人がバチバチと睨み合いしてんのに、緊急事態って宛先不明のメールにあったからなんだと思ったら、トイレットペーパー買ってこいってふざけんじゃねぇ!」
それは内藤の相手をしてる最中の吹雪が品川のメールを受け取り、もう急ぎで抜け出してトイレットペーパーを買いに行っていた。
「しょうがねぇだろ! 腹痛くてトイレ駆け込んだら、トイレットペーパー無かったんだからよ! 不可抗力だ!」
「状況見ろって言ってんだろうが! ホンマにコイツだけは……ほら、投げるぞトイレットペーパーや」
「サンキュー! なあ? それって新品だよな! 隣の人にも渡してあげてくれねぇか?」
「? なんや、隣の人もトイレットペーパーないんか。ほら投げるから、ちゃんと受け取ってや」
品川の親切心により、吹雪も嫌な顔することなくトイレットペーパーを上から投げて、高島へ渡る。
「ったくよ。ここの会社のトイレットペーパーが切れるって、見た目はイビツやのに中身も社長みたいに歪んでんのか? お宅も大変やな、メガネ社長に振り回されて……」
渋い顔を浮かべ吹雪は腕組みし、壁際まで寄り凭れる。
「まあ、そうですね。前日に社員達には特別休暇として選ばれた幹部しか残っておりませんから」
「へぇ~アンタも大変やな。物好きな社長に目付けられて幹部さんになってもうたからな」
「え、えぇ。とても変わり者とは聞いていますね。でも給料面と待遇は何処のホワイト企業よりもホワイトですよ」
「なんやねん、白以上の白って!? 白通り越しても白しか残ってへんやんけ!っていうか、自然と話し込んでたけどええんか? 敵の幹部さんやのに……」
「ま、まあ今は緊急事態ですし。話をしてる限りではアナタ達が悪い人ではない事を、今知ったので安心してます」
「そうなんや。おい、ほんで話変わんねんけど品川。高島陸はおったんか?」
アトラス財団の何処かの幹部と思い込んでいる吹雪は、話を品川へ話を振る。
「あぁ、今屋上で待たせてる。それよりいいのか? 内藤とか竹島を待たせてよ」
放屁しながら失礼な品川は吹雪の質問に対し返答する。
「オメェ、俺に喧嘩売ってんのか? 屁こきながら返事ってなんや!? 失礼通り越し過ぎやろ!」
「おい、そっちかい! ちゃうやろ! 内藤と竹島を待たせてる話してんねん! なんで俺が屁こいた話を蒸し返してんねん! アホかお前は!?」
「アホゆうな! アホってゆった方がアホやねん! アホ!」
「おい、ガキかテメェ!っていうか最終的にアホって言ってんじゃねぇか!というか話の内容状況変わってんじゃねぇか!つうか馬鹿みたいに長いツッコミさせんな!」
「それはお前や!」
まるで心が子供いや、本当に子供の喧嘩を繰り出す品川と吹雪。
他人の振りをし様子だけ見ていた高島は口元を抑えて、笑いを堪えていた。
(こ、コイツ等! メッチャ馬鹿じゃん!)
まるで喧嘩が漫才みたく展開されていくので、見てる高島からすれば面白くて可笑しかった。
「おい、それより内藤と竹島の相手してこいよ。多分、村井さんが暇になったら二人に手を出すかもしれねぇぞ」
「それはマズイわな。よっしゃ! ほな行くわ、ちゃんと兄貴と決着つけてこいよ」
吹雪はそう言ってトイレから走り去った。
「なんやねんアイツ……まあしゃあないわな。そういう事だから、あの狂った兄ちゃんが帰って来るまでに、この排便作業が終わったら屋上に行こうぜ」
そそっかしい吹雪の行動に品川は微笑み、新しいトイレットペーパーで汚物を拭き取り、流した。
同じく隣の個室で用を足していた高島も汚物を流す。
「じゃあ行こうぜ屋上に。クソ兄貴には説教かまさねぇと気がすまねぇからな! それに…」
「望む所だ……望む所なんだが、多分だが今の君はパンツ脱いだ状態で、覚悟を決められても格好つかないと思うお笑い的な状況なんだが、どう思うかね?」
「……よいしょと。よし、気を取り直して……じゃあ行こうぜ屋上に……」
「次に申し訳ないが、ここはトイレだから廊下に出て……」
「だー! もう分かったから、ここはアンタの満足するやり方に合わせるからよ。とっとと格好よく発言させてくれよ! なんか何もないのにバカみたいに、ここで色々指摘されても場所が場所だから、なんか飽きるんだよ!」
一々、細かい所で停止されて、そろそろ発言をさせてもらいたい品川は高島に合わせるから、事を進めてほしい様子。
「よし、じゃあ出よう」
こちらに合わせてくれる条件が嬉しかったのか、高島はウキウキでトイレから出た。
そして高島が先に待ち、その後げんなりした品川が出て、お互いに見合う。
「よし。もう気になる物はないな?」
「……あぁ、大丈夫だ。思う存分、発言してくれ」
変な間があったが、ここは話を進める為に高島から妥協し、トイレでの続きを聞こうとした。
「じゃあ行こうぜ屋上に。クソ兄貴には説教かまさねぇと気がすまねぇからな! それに俺の愚痴とか鬱憤の晴らしに付き合ってもらうからよ。そのつもりでな」
「あぁ、君のその溜まった物を兄である私に、ぶつけたまえ!」
「気持ち悪いこと言うなよ。それもトイレでよ」
「それもそうだ」
そう言って屋上を知っている高島から先へトイレから出て、後から品川が追い掛ける形でトイレから出た。
トイレ死闘編はココで終了した。
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