第167話 挑戦する者。
早めに投稿できました。
大きなスキール音を奏でながらバイクは停車し、品川だけ下車する。
「ありがとうな。ちゃんと誰も失わずに間に合ったぜ」
「それが契約だ。それと忘れるな、お前がまた暴走し化物になった時は必ず殺す。もう一度、元に戻す保証がない」
「たかが人間ごとき心配すんのに、律儀に相手してくれるんだな」
「一番総長を相手する人間が減ると、こちらとして困る。昔だけで管理に困るというのに、今となるとどうなるのか……」
「……なんか問題児なんだな、その一番総長さんは……」
「まだ、お前程度の問題ならありがたい。アイツだけは世界規模の問題だから頭を抱える」
「仮定の話だけどよ、もし俺がその一番総長と喧嘩したら──どっちが勝つ?」
「愚問だな。だが、答えてやる十中八九お前が勝てないのは確かだ。一番総長が勝つというより、相手にしてくれるかどうかだな」
「……分かった。アンタは二度聞いても答えは変わんねぇのは承知済みだ。けど、それ聞いたら試したくなんじゃねぇか」
「面白い奴だ。お前は不良なのに不良っぽくないな。どっちかというと……自由なチンピラだな。それに試すだけなら無事に帰れる。一番総長にとってはお遊びだからな──挑戦なら話は別だ。俺達が絡むことになる」
「……じゃあ、今の俺は力不足だから挑戦は無理ってことだな」
「そうだな。お前の言う力不足と俺等が思う力不足で意味が違わないことを祈る」
「アンタ等が思う力不足で構わない。今の俺にはまだまだ足りないからな。それに今は……アイツ等に集中しねぇとな」
長い雑談が終わり、品川は本来の敵へと集中する。
「待ってたで、品川。もう大丈夫か?」
「まあ少し精神に違和感はあるが、ちゃんと最後までやる」
「そうか……じゃあ俺が二人を相手にするわ。せやから、あのクレイジードレッドを相手してくれるか?」
「あぁ構わねぇ」
「クレイジードレッド、魔界連合閻魔組若頭補佐、伊波一翔だな。初っぱなから強敵だな。言うことでもないが俺等は人殺し等に何か感情を抱くほど微塵に思っていない。そこに敵がいて、殺すだけの思考だ。手加減と躊躇だけはしてくれないと思え」
「……アンタも協力してくれへんか? 警察と機動隊の相手してくれるだけでええから」
「いいだろう。丁度暇になったからな」
クイズ番組並みに早いスピードで黒政は返答する。
「即答かよ。この天才でも驚きだよ──よし、木戸選手交代だ。今のお前に拒否権はないぞ」
「……分かりました。後は頼みます村井さん」
少し考えたが、今の状態では足手まといが関の山なので、ここは素直に黒政へ任せる事にした。
「暇潰し程度だ。俺が警察と機動隊が全滅させるまで終わらせておけ。俺の考えでは遊んで三時間だな」
「結構、リアルな時間だな。そこまで飽きずに済むのか?」
品川は一掃すれば終わる相手に、黒政が飽きず三時間で終わらせる事ができるのか疑問だった。
「素手で相手すれば三時間だ。それにそこまで急いでないから、ちょっとは楽しめる」
そう言って黒政は警察の軍団へ歩いて向かう。
「おいおい、三番総長まで来やがった。どういう風の吹き回しですかい?」
別に黒政が敵側に付いたという悪意ではなく、純粋な気持ちで伊波は尋ねていた。
尋ねられた黒政は伊波の真正面へ立つ。
「少し遊びたくなった。いるんだろ? 十三番総長も」
「えぇ、いますぜ──まさか総長戦でもする気ですか?」
「そうなればそうする。総長戦ともなれば三時間じゃない、二時間延長する」
「……また楽しみすぎて町半壊までしないでくださいね。気に入ってた店を潰されて、また探さないといけなくなるのは面倒ですから」
「だったら早めに終わらせる事だな。状況次第じゃ東京壊滅も町の半壊もしなくて済むぞ」
「……仕事を早めに終わらせるのは苦手でしてね。ましてや相手が好きな敵になると」
「俺もそうだ……さて、警察諸君。この魔界連合村井組三番総長の村井黒政が相手してやる。今ここで俺を無力化し逮捕できたならば、ソイツが三番総長で確定だ。その意味が分からない訳じゃないだろ?」
その黒政の言葉に警察官と機動隊は躍起になり、全員で責めた。
上司へ許可を求めず発砲する者、完全武装で来る者、もう黒政を殺す気と勢いで攻撃する。
「その調子だ」
まず黒政は走り出し、近くに転がっていた氷塊の一部を蹴り上げ、接近する銃弾の盾代わりにした。
そしてコチラへ飛ぶ銃弾がない事を知ると走りながら氷塊を探し、見つけるとサッカーボール感覚で蹴る。
氷塊は機動隊の盾と衝突すると大きくへこみ、貫通はしなかったが、機動隊の一人は吹き飛ばされていた。
「手加減して、先ずは一人か」
そんな軽い事を述べながら次々と相手にする黒政。
「……待ってたぜ兄ちゃん。兄ちゃんが来るまで暇で暇で仕方なかったぜ」
理不尽な暴力を受けている相手を無視して、伊波は本来の敵へ目を向ける。
「まさか魔界連合の人とは思わなかったぜ。それで聞くのを無駄で言うけどさ……ウチの馬鹿兄貴は何処にいる?」
本当に伊波が魔界連合の一人とは思っていなかったので、正直に品川は驚愕していた。が、アレとコレとは話が別なので、無駄だと思いながらも高島の所在を尋ねた。
「屋上にいるんじゃねぇのか? 兄ちゃんだけは通してやるよ。好きに探し回れ、そういう契約内容だからよ」
「……そうか──仲間一人でも殺ってみろ。閻魔さんがどう捉えようが、必ずテメェは殺してやる。前科背負ってでもな」
伊波が危険人物だと承知しているので、品川は脅しではなく、本気で殺気満々の忠告をする。
「お~怖。まあ、兄ちゃん安心しろ。今、俺が興味あんのは別の奴だ。仲間どうこうしろって話にもなってねぇし、指揮取ってんのは社長だ。副社長は知らね」
嘘偽りのない本心だった。ここで伊波が嘘つく意味もないからと判断した品川。
「……」
そして話を続ける事なく、品川はアトラス財団ビルへ向かった。
「凄いな、今の若い奴は根性があって明確な殺意もある。神崎忍の時はどうしようと思ったが、会長の言う通り楽しめるじゃねぇか!」
品川が行った後に伊波の目前には南雲が立ちはだかった。
「この天才である南雲暖人が相手してやるよ。危険ヤクザ」
そう言いながら南雲は電極が繋がった刺々しいメリケンサックを両手にはめ込み、伊波へ挑戦する。
「いいね、そう敵意持ってくれなきゃ降りて来た意味ねぇよな!」
狂喜的な笑みを浮かべて、伊波は南雲へ向かって走り出す。
(このジーニアスサックは対化物用に開発した物だ。アホパーマから聞いた例の奴がコイツなら、ここは過剰防衛するしかねぇ。この時の為に体力温存したんだ。これが通じねぇなら何処で戦っても通じねぇ)
そんな事を思いながら南雲はタイミング良く、伊波の右懐へ入り左フックをかました。
すると右脇腹から本来鳴らない、ガキンという金属が衝突する音がした。
(はあ? まさか、コイツ……)
南雲は考えた。まさかコイツは戦場で金属の鎧でも着て、あんな素早い動きをしてたのかと……
けれど伊波の表情を見たら、何か仕込んでる様子はなかった。寧ろボーナスでチャンスだから色々と殴って来いという余裕の表情だ。
「……お望み通りにしてやる」
ジーニアスサックは対化物用兵器として作られており、人間は四十二ボルトで感電死する生き物である。
それを自分の覇気でボルトを制御できるようにしている。が、伊波相手となると本気として五十ボルトで対抗する。
(頼むから、死ぬか気絶で終らせてくれ。これで何も無かったら、マジで詰みだ)
再び伊波の右脇腹へ向かって体重を加えながら殴った。
電撃を加えている為、先程よりは感触が少し柔らかくなった。が、金属みたいに固い事には変わりなかった。
「……まだだ!」
雷の覇気でジーニアスサックに電流を送り込み、顔、腹、腰等、急所という無防備な箇所を責める。
だが、伊波は以前として変わりなく平気な様子だった。
「根性あって覇気が強くても、パンチがへなちょこじゃ俺を倒せるわけねぇか……それじゃあコッチも反撃させて貰おうか!」
南雲が攻撃してる最中に伊波は余裕と話し始め、反撃が始まった。
いかがでしたか?
もし良ければ誤字や脱字や意見や質問等があれば教えてください。