第164話 開戦の前夜。
これから東京編終わりまで直行していきたいと思います。
あっという間に運命の三日が経ち、各々は準備を進める中。
約二名だけは違っていた。
「よく言うよな? 喧嘩する時は、まず相手を見ろって……老害の言う戯言だと思ってた。今になって分かったぜ。こういう事になるからだな」
廃工場にて、血まみれの半グレたちが、悲痛な呻き声を上げながら全裸土下座させられていた。
それは、たった一人のクレイジードレッドにより壊滅していた。
「す、すいませ……ぐふっ!」
半グレの一人が震えながら赦しを乞おうとしていた。が、伊波は聞く耳なんて持たず、顎へ目掛けて思い切り蹴りあげた。
「あ~お前気に入らねぇから聞いてなかったわ。じゃあ、もう一回……聞くわけねぇだろ!」
そう言って、伊波は何度も倒れた半グレの頭を踏みつける。
楽しみながら、明確な殺意を持ちながら、無邪気な気持ちで人を簡単に殺める。
「あ~あ、死んだか。面倒くせぇな、半グレごときで死体片付けんのに、一人だから手間かかって仕方ねぇ」
そう文句だけ垂れながら、伊波は細く真っ直ぐな鉄パイプを拾った。
「……」
鉄パイプの擦れる音で半グレ達に悪寒が走る。
まさか一人ずつ鉄パイプで、殴り殺す気ではないかと……
「はい、ホームラン」
伊波は鉄パイプで殴らず、ドラム缶に置かれていたジュースの缶を殴っていた。
激突したジュース缶は綺麗な放物線を描き、天井へ衝突し、カランと無抵抗に落ちた。
「お前等、どうやって後始末すんだ? 勝手に魔界連合名乗って、脅迫、揺すり、違法薬物販売、一般人数名殺害、事務所強盗。まあ、この中なら軽い事務所強盗ぐらいは赦してやるよ。所詮は金がなくなるぐらいだからな? けど、他の事は相手見るべきだったな」
「な、なんでもやります! 他の組襲撃したり、上納金も納めます! なんなら女紹介したりできます! と、とにかく命だけは!」
「何ができんだ?」
「へっ?」
咄嗟に出た命乞いだった。何も考えず一時しのぎしかならない事を伊波が聞いてくれるとは思っていなかった。
「具体的に何ができる?」
「頭使う事以外ならなんでもできます!」
「……よーし、その約束を果たすなら俺も、お前等の命を奪うのを止めてやる。頭使えなくても意味は分かるよな?」
伊波の問に半グレ達は土下座しながら激しく頷き、返事する。
「やることは簡単だ。この全国にいる外国からの不法滞在者を一人残らず殺す事だ」
「へっ?」
「最初はテロリスト関係がある外国人を見せしめで殺し、次に面倒くせぇ政治関係で暴れる奴、最後にはその辺にいる迷惑行為する外人。簡単だろ? 所詮相手は人間だ。不意打ちで後頭部殴れば簡単に死ぬだろ?」
「そ、それって……」
「一般人殺害してんだろ? だったらマナーもクソもなってない犯罪者を一人、二人も殺すのは間違いないだろ? これは社会の為だ。お前等が、これからやることは駆除だ」
そして半グレ達は畏怖を覚えた。本当に同じ思考した人間なのかと?
本来ならば何からしら常識と理性というブレーキが働く筈。だが、この伊波だけは人間というブレーキが壊れていた。
「断ったら今ここで殺す。お前等が殺らなくても俺が時間かけて殺す。やるか、やらないかだけ答えろ。別の答えを出せば靴底の付いてる肉片の仲間入りだ」
そして半グレ達は返事する。
「……や、やります」
震えながら今生きる為の精一杯な返事だった。
「いや~快く引き受けて嬉しいぜ。あ、そうそう……もし捕まっても名前使っても信用されねぇから、パンツ一枚でやるんだな。その方が心神喪失っていう理由で刑罰は軽くなるだろ? この国の一部の裁判官は加害者には優しいからよ」
伊波は高笑いし、気分好調な状態で鉄パイプを投げ捨てる。
そして頭を潰した半グレの死体をサンドバッグへ詰め込み、廃工場を後にした。
そしてもう一名というと……
「すみません、神崎忍さんの面会に来たんですけど。病室はどこですか?」
「確認いたしますので、名前と身分証明書の提示と患者様のご関係をご記入ください」
それは黒タンクトップ、ベージュ色のバルーンパンツ、白をベースに赤で彩られたスニーカーで身を纏めた。
少し気まずい表情をする品川だった。
「これで……」
品川は運転免許証を提示し、見舞い人欄へ名前を記入する。
「はい。え~品川修二様ですね。ご友人の神崎忍様は個室の308号室にいられます。面会時間は一時間となっております」
「はい、ありがとうございます」
限られた時間の中で面会が許された品川。
ゆっくりと忍が眠る場所へ向かう。
「……ここか」
病室の前へ立ち、部屋番は間違っていないか確認する品川。
しかし、ドアノブに手を触れられずにいた。
(いいのかコレで……)
品川が気にしているのは、流れとは言え。閻魔から教わり強くなった事がズルいと感じていたからだ。
あの時は二人で強くなったのにと品川は考えていた。
「どうした品川。入れよ、そんな所で立ち止まってたら迷惑だろ?」
そこへ察知したかのように忍の声が聞こえてきた。入室を許可された。
「あ、あぁ……」
戸惑いながらも品川は忍の病室へ入る。
そこには上体だけ起こし、ベッドへ座りながら外の風景を眺める忍がいた。
「元気そうじゃねぇか」
「そうでもない。使い慣れない力で、体は言う事を聞かない。だから寝たきりの状態だ」
品川は丸椅子へ座り、忍と他愛のない会話を繰り返す。
「……今日、兄貴と決着をつける」
「そうか……じゃあ先に言っておくことがあるな。高島陸は──俺が倒す」
「できんのか? そんな状態で」
「数時間後には万全で行く。安心しろ、お前にも少しぐらい殴る権利はあるから、足止めしておいてくれ」
「……分かったよ。じゃあ俺は四天王全員と遊んで──なんだよ?」
品川が高島との対決は手加減する事を約束し、その後は四天王相手にすると発言した瞬間。
忍は右手で品川の左拳に優しく触れていた。
「お前は虹矢と決着つけろ。桐崎の仇を討ってやれ。お前のやり方でな。やり残すな、やり残すと心がしんどいぞ」
「いいのか? 復讐は大体最後は悲惨な目にしかあわねぇぞ」
「これは復讐じゃない。お前等の言う、お礼参りだ。殺意を持って復讐を果たすのと、敵意を持って復讐を果たすとは違う。だから、俺みたいにはなるな」
真剣な表情で忍は品川と顔を合わせた。
しかし、忍の左目は黒い靄が掛かり見えなかった。が、それに違和感なく、畏怖の対象でもなかった。
「俺は……俺は……」
すると弱気になった品川から手を離し、正面へ顔を向ける。
「泣き言は全て終わってからだ。そんな弱気では最強の俺に勝てるのは一生無理だ。お前には色々と期待している、そして俺も桐崎の頼みを引き継ぐつもりだ。だから、早く起きて出発しろ」
窓から季節外れの桜が舞い侵入し、病室を埋めた。
「!」
そこで品川は目覚めた。どうやら見舞いに来ている間に眠ってしまっていたようだ。
品川はベッドへ目をやると、そこには心電図に繋がれて、スヤスヤと眠る忍がいた。
「……疲れてんのか俺? こんな気色悪い夢見るなんてな。けど、夢のおかげで覚悟が決まった。行ってくるぜ、ちゃんとお礼参りしにな」
椅子から立ち上がり、スッキリした表情で颯爽と病室から退室した。
「おっと!」
病室から出ると、そこには花を持った雅が立っていた。
「……」
ただ雅は罵声を浴びせる訳もなかった。というより、ただただ驚愕していた。
「あぁ、寝てるアイツには何もしてないぜ。じゃあ俺急ぐからよ」
急ぎたかった品川は軽い挨拶だけで済まし、病院から去って行った。
「いや、そうじゃない。私はお前がいた事に驚愕したんじゃない。お前が一人で、寝てる忍様と会話している事にだ……」
雅は品川が入室していた事は承知していた。
ただの見舞いだから変な悪戯はしないだろうと確信していた。
けれど、何か異常があれば対応しなければと思い、扉越しではあるが警戒していた。
そこからは異常だった。時間一杯、品川が一人で話し始めていた。
その会話は空想でもない、現実味のある会話だったからだ。
いかがでしたか?
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