第156話 激闘の末、そして……
2ヶ月のお休みさせていただきました。
再開していきたいと思います。
「喧嘩始める前に、今吹き飛んだパトカー危ないやろ」
吹雪は周辺近くにあったビル二つを表面だけを凍結させた。
そして凍結させたビルから太い氷柱が形成され、空中で舞っているパトカーを捕縛し、氷結させる。
「天才を迎えるオープニングにしてみれば派手かもな」
「そうか? まあ爆発したら始まった感はあるな。パトカー爆発させるか?」
「お前せっかく安全に被害なく止めたのに、増やしてどうすんねん」
「「終わったら謝ろう!」」
ダメだ。コイツ等、謝れば済んでも後の祭りになることを想定してないと、現実だけ見ていた吹雪だった。
「俺等は弁護士だぜ? 自己弁護ぐらいは口八丁手八丁でなんとかなるぜぇ?」
もはや正義側がしてはいけない表情を浮かべていた。
(うぜぇ、コイツ等がコンビ組むとタチ悪くなるって酷くね?)
今まで以上にムカつくコイツ等を殴ってやりたいと思ったことはない吹雪だった。
「君たち危ないじゃないか! 早く避難しなさい! 今、パトカーが……はっ?」
大勢の警察官と機動隊が騒ぎのあった場所まで来た。
そこで品川たちを見つけ、警告し避難させようとした。が、上空でパトカーが凍結している所を目撃し、非現実な出来事に驚愕し固まった。
「な、なんだコレは……」
「こんなの人間ができる事じゃない……」
「君たち、何か目撃しなかったか?」
数人の警察官が混乱し、近くにいた原因である品川たちへ尋ねた。
「「「……」」」
「……」
両者陣営から流れる長い沈黙……そして警察官側から気づく、品川たちの足元に仲間が転がり気絶している事に。
「「「ポリ公だ! 出会え! 出会え!」」」
警察官が自分たちの足元を見て察し、後戻りできないと理解して、ふざけ始めた。
「不審者発見! 拘束する!」
そしてこちらは真面目に業務へと取り組む。
「オラァッ!」
品川たちは警察官へ向かって疾走した。
全員それぞれの戦闘スタイルが一緒ではなくなった。
品川は真っ直ぐにタックルし五人をはぎ払い、吹雪は襟や裾を引っ張り三人を地面へ倒し、南雲は親指と人差し指をスタンガンの形で首筋や脇腹へ電撃を二人に与える。
三人で大人数程度の警察官を気絶させた。
「なんか全員バトルスタイル変わったな」
「ホンマや。」
「全員変わる所があったんじゃいのか? 天才である俺は頭脳は不動だが、バトルスタイルは進化し続けるからな」
「頭脳が不動って、高校生の時からそのままっていう事だろ? 結局キモロンゲのアホって意味じゃねぇのか?」
「おいおい、そこまでゆうたんなや。アホなんだから意味すら分かってねぇんだよ」
「よし、そこに立て貴様等。一人ずつ太ももをキックしてやる。思い切りな」
「テメェの鳥ガラみたいな足で俺等にダメージ与えられるならやってみろや! 返り討ちにしてやるよ!」
「あぁん? 最近は輝さんと一緒にスクワットしてんだけどな……そんなに細いか?」
急に怒りは収まり、鳥ガラみたいだと指摘を受けて気にする南雲。
「え? 輝さんと一緒にスクワットしてたの? それだったら話は別じゃね? っていうか俺抜きでスクワットトレーニングしてたのかよ!」
「いやだって、お前その時は海道以外の仕事だったろ?」
「……あ~太陽の覇気貰う前か。その時、痴漢被害の弁護に巻き込まれたからな。それなら仕方ねぇか」
(神崎忍と違って、輝さんは人望あるな。あの二人が名前出しただけでも大人しくなった。いいな、こんなに良い意味で影響力ある人……)
自分の上司と違って、何かしら影響力がある輝に、吹雪は少し羨ましくなった。
「いたぞあそこだ!」
品川たちが無駄話していると、騒ぎに駆け付けた警察官が囲む。
「おい、お前等が無駄話してる間に囲まれ……」
吹雪が言い終わる前に囲まれた警察官は一瞬にして、大きく吹き飛ばされていた。
「……嘘やろ」
それは電気で纏った南雲を背負った品川の攻撃だった。
「スゲェな。お前の理屈で試したら上手く行ったぞ」
「だ、だ、だ、だろ? お、お、お、おれ……俺は、て、てん、天才……だから……な」
元気に驚愕している品川と今にも死にそうで疲れきっている南雲だった。
「おいおい、どないなってんねん」
「なんかよ南雲が効率よく相手ぶちのめすなら、体に電気流して一時的に身体能力を上げる方法を試した。この通り強くなり過ぎた」
体に軽く電気を流し、運動能力向上させようとした。が、思ったより威力が強すぎたという子供みたいな感想を述べる品川。
「提案した奴がなんで気持ち悪くなってんだよ……」
「じゅ、重力酔いだ。品川の体はバカみたいに鍛えられているが、俺はそこまで強く……うぷっ!」
「おい、俺の背中で吐くなよ!」
そんなわちゃわちゃな事をしていれば警察官の援軍がやってきた。
「よし、電気流せ!」
「え? まだやるの?」
一時的なドーピングで強くなりワクワクしている品川。
その対照的に体調が悪くなり、ゲンナリしている南雲。
南雲にとっては絶望の一言だった。
「なんか奢ってやるからよ」
「もうどうにでもなれ」
人間が耐えられる程度の電流を体へ流す。
すると品川の足は駆け込みを始め、物の数秒後には、バッタバッタと上空へ舞い上がる警察官がいた。
(ここまできて、俺何もしてねぇな。ただ被害出したくねぇだけでパトカーを凍結させたのと、警官三人倒しただけやん)
一人だけ取り残された吹雪はアウェー感に苛まれていた。
だが、その時。吹雪の襟を強く引っ張られていた。
「中央突破だ。お前も吐くなよ?」
襟を掴んでいたのは品川であり、いちいち迫り来る警察官を相手してる時間は無い。なので、中央突破で警察官を薙ぎ倒し、アトラス財団まで向かう作戦だ。
「そこのキモロンゲと一緒にするな……って、めっちゃ早いやん!」
さっきまでの自信満々な態度は一瞬にして消え、未知なる速さで驚愕し畏怖にも陥っていた。
「「うげぇ~」」
もう目と鼻の先で南雲と吹雪は重力酔いで気持ち悪くなり、瀕死のグロッキー状態だ。
「やっといてアレだけど、なんかごめんな」
流石に急ぐとは言え、こうも深刻なグロッキー状態までなるとは思わなかった。
品川から罪悪感が汲み上げ、謝る。
「まあええわ。気分悪くても、ちゃんとアトラス財団前までこれたからな。まあ猛獣のオマケつきやけどな」
品川たちが立っている場所は、最も最難関である機動隊に囲まれた中央だ。
「無駄な抵抗は止めて、大人しく投降しなさい! 君たちは完全に包囲されている! これ以上、被害を出すと罪が大きくなるぞ!」
拡声器で犯人扱いの品川たちへ大人しく逮捕されろと要求する盾を持った機動隊たちだった。
「だってよ、どうする? 公務執行妨害、暴行、傷害、器物破損、覚えのないテロ行為。これで臭い飯一生食えるぞ?」
グロッキー状態から少し回復した南雲が、一門一句ずつ、今してきた行為を法律で語り、忘れじとテロ行為まで含め淡々と述べる。
「ホンマやな。どうする? ここから逃げて遠い所で隠れて過ごすのは? ミャンマー辺り」
「クレジットカード停止されて終わりだ。だったら答えは一つしかねぇだろ?」
「「「捕まるぐらいならアトラス財団潰して、ポリ公に迷惑かけて捕まってやらぁ!」」」
そう大声で叫び、南雲と吹雪は立ち上がった。
そうして一斉に拡散した。
品川は特技の腕力で機動隊が持っている盾ごと殴った。
密着している機動隊は盾を殴られても大人数で威力を殺すから、大した衝撃ではないだろうと思っていた。
けれど殴った衝撃は大きな波紋を生み出し、背後で支えていた大勢の機動隊が吹き飛んだ。
「おい、テーザーガンを出せ!」
「はい!」
一人の機動隊は常備していたテーザーガンを取り出し、品川へ向けって鎮圧するため発砲した。
「おい、クソリーゼント。邪魔だ」
南雲は背後から品川を蹴飛ばし、テーザーガンの変わり身として受ける。そして人が動けなくなるほどの電流を容赦なく流される。
「……やっぱ俺は天才だな。こんなテーザーガン程度の物を俺の体が超越するとはな。相変わらず、自分の天才ぶりが恐ろしくなる」
もはや、こんな状況で空気読めない発言している時点で馬鹿なのである。
「よし、満足したからこれはお返ししよう」
南雲は電流が流れている電極を身体から抜き取り、一人の機動隊へ投げ渡した。
あまりにも非現実な光景を目の当たりにし、呆然としていた機動隊が、受け取った。
ちゃんとテーザーガンは作動しており、機動隊は無防備なまま高電圧を喰らい、仲間に後退へ引き摺られる。
「ふぅ~今日は体を一杯動かすから暑いな」
吹雪は冬場にも関わらず、冷気をガンガン排出していた。
この時で東京の最低気温はマイナス十度となっていた。
警棒で吹雪たちを鎮圧しようにも、あまりにも予想外な冷寒なので、防護服からも通り越し、筋肉が縮こまり動けなかった。
「な、なんなんだ! この化け物たちは!」
「本部! 本部! 発砲許可を願います!」
あまりにも異次元な戦いなので機動隊も対抗して、拳銃の使用許可を上へ求めた。
「構え!」
どうやら発砲許可は降りたらしく、機動隊の数人は射撃体制へ入った。
「ちょっとやり過ぎたみたいだな……」
「なんかええ対策とかあるか?」
「はっ!」
南雲と吹雪が拳銃にビビっていると、品川が大声を発した。
すると機動隊が持っている銃口だけがゲル状となり項垂れ熔けていた。
「前に銀行強盗に会った時、太陽の炎で鉄が熔けるのを見てたからな。人体に影響与えず、物質だけをピンポイントに攻撃できねぇかと考えてた」
「……神崎忍と一緒のことしたな?」
吹雪だけは察することできなかったが、南雲は天才を自負する分、察した。
「どういうことやねん?」
「覇気には自動制御みたいな物が存在する。神崎忍みたいに“無意識の中での攻撃全てを透過する”という事を自動設定すればやってくれるみたいな物だ」
「覇気が意思持つんか?」
「知らん、俺もそこまでの境地に立ってない。だが、このクソリーゼントだけは俺たちを抜いて、先に立ってやがるって事だ。生意気なクソリーゼントだ」
「……ほんで、天才のお前は品川が何をしたんか知ってんのか?」
「おそらく、大声で発生した音波で生物と無生物を判別し、覇気が拳銃を融解した。根拠は機動隊の着ている物は、融解せずにいるからとしか言えんな」
全ては南雲の言った通りだった。
品川が忍と一緒に地獄で特訓している時、閻魔が応用として教えていた。
忍としては、応用より基礎を慣れさせたかったが、提案者が提案者なので思いっきり不機嫌な顔をしながら、品川に教えた。
その時、品川は「あ、こいつ俺に教えるより、指示する閻魔さんが滅茶苦茶嫌いなんだな」と察した。
「あぁ、キモロンゲの言う通りだ。これを修得すんのに条件がゲロレベルの厳しさだった。俺と忍と輝さんみたいな先天は使いまくって上手くなればいいが……」
「おい、それよりも機動隊が銃じゃなく警棒用意してきたで、そろそろ真面目な戦闘に戻った方がええと思うのは俺だけか?」
「おっと、そうだった。でもよ、多すぎて殺す方が楽だと感じてきたんだが?」
多少、思い通りにいかないストレスで殺意は湧いてしまうのが仕方ないことだが、品川が言ってしまうと実現可能なので、さらっと言ってほしくなかったなと思った吹雪。
「クソリーゼント、俺に考えがある。多分、殺すよりは効率的だ」
そこに南雲が挙手し、品川と吹雪に耳打ちして提案する。
「マジで? そんなんできるん?」
「やってみるしかねぇだろ。じゃあ吹雪のタイミングでやるぜ」
「……久し振りに『I.B.F』を使うわ」
吹雪の『I.B.F』は昔より進化していた。
今まで体全体に纏う氷はムラがあり、纏える部分もあれば脆い部分もあった。
だが、一瞬にして全身から濃い冷気を放出するまでに成長していた。
「た、隊長! 一人が液体窒素的な物を放出しています!」
「全員警戒! 何かアクションを起こせば退避行動……」
「もう遅せぇよ」
吹雪は地面へ向かって一発だけ殴る。
それと同時に品川は南雲を抱えて、大きくジャンプした。
殴った所から大きく冷気が広がり、それは機動隊全員を包み込んだ。
ある者は映画みたく一人ずつ倒されると思い、ある者は全員一斉、氷の彫刻にされると恐怖が過った。
だが、想像とは違い。機動隊全員の足元が動けないほど分厚く凍結されていたからだ。
「今だ、クソリーゼント。溶かせ!」
「小太陽!」
南雲の合図により、品川は右手で極小サイズの太陽を形成させ、放出した。
目映い光が周囲を照らし、太陽光熱で氷は瞬時にして水溜まりへと変化した。
「出番だぞ、キモロンゲ!」
「落雷!」
名前のまま南雲は水溜まりへ目掛けて、電撃を放出した。
氷から溶かしたので、ろ過されていない水溜まりは不純物だらけだ。
それを電気を流すと……
「ぐわぁぁぁぁぁッ!」
感電し、その範囲は氷が溶けた所まで届くのだ。
「運が良ければ死んでない。気絶どうかは知らんが……多分死なん!」
ここまで考え行動し、最終的には自信喪失する感情の起伏が激しい南雲だった。
「さてと、こっからだな。一番キツイのは……」
品川がそう発言すると、アトラス財団の入口から男二人出てくる。
スーツ姿の内藤と竹島だった。
「なんや普通に出てくるんのかいな。戦闘中とか乱入できたやろ?」
「今のお前に、そんな不意打ち通じひんぐらい知ってるわ」
吹雪は内藤へ
「……」
「おい木偶の坊、品川に負けた次は天才である俺に勝てるか? ん~?」
「……」
殺気立った竹島を南雲が煽る。
「……虹矢は何処だ?」
だが、竹島を阻めたのは品川だった。
「副社長は……」
「私はここだ」
そこへ桐崎と共に入口から出てきた虹矢が発言で、全員を注目させる。
桐崎の両手は縄で拘束され、顔は酷く腫れ上がり、所々が傷だらけで流血し、呼吸も絶え絶えでままならなかった。
虹矢は桐崎を長座で座らせた。
「……」
そんな桐崎を見て、品川は虹矢へ向かって歩いて行く。
品川は無表情で、強く両拳を握りしめていた。
「待て。コレが見えないか?」
虹矢の左手にはレンコン、リボルバー式拳銃が握られていた。
桐崎は人質なんだと理解した品川は、ふつふつと沸き上がる怒りを抑え、取り敢えずは虹矢の要件を聞くつもりだ。
「品川修二、この馬鹿げた行動について、お互い水に流そう。君との関係を良好にしたい」
「今のテメェの行動見てみろや。人の大事な者を拉致っといて、喧嘩売るまでやって、中途半端で劣勢になったら水に流しましょうってか?」
「身勝手なのは承知の上だ。だが、今の状況は五分と思えるか? 私達は人質、国家権力、財源がある。君達には仲間か分からない魔界連合、今の戦力が三人、そして瀕死の神崎忍がいるだけ。海道からも増援も無ければ君たちには……」
虹矢が言い終わる前に右足に重みを感じた。
確認すると桐崎が左膝で残りある力と体重で虹矢の右足に乗っかっていた。
「……こ、これで戦力は……よ、四人だぜ? 中途半端な数え方してんじゃねぇよ……クソエリート。そんなんだから社長代理なんて重荷背負っても、中途半端に終わるから、馬鹿にされんだろうが」
「おい、何してんだよ! そんなアホな挑発してんじゃねぇ! 今、この状況見えねぇのか! クソ師匠!」
命がかかっている場面で、いきなり桐崎が挑発的な態度に品川は憤りを露にした。
「おい、修二」
「!」
珍しく名前を呼ばれ、品川は怒りよりも動揺する。
そして正面へ向き直し……
「生きててよかったぜ。もう、これ以上に馬鹿騒ぎできて楽しかった」
初めて見せる屈託のない笑顔で桐崎は遺言みたいな事を品川へ残す。
「まさか!」
それに察知した吹雪は虹矢へ向かって走り出した。内藤、南雲、竹島は理解できず呆然としていただけ。
吹雪が動きだした事に、遅れて品川も動いた。
「……それが最後の言葉だな? ……人間」
虹矢は桐崎へそう言い、容赦なく引き金を引いた。
発砲された弾丸は後ろ頭頂部へ激突し、額から貫通した。
桐崎は力なく前から倒れ、その生命が無慈悲で簡単にも奪われた。
「!?」
桐崎が倒れたことにより、吹雪と品川は驚愕と動揺で立ち止まった。
「おい! そこまでする必要あんのかよ!」
今、行われた殺人により南雲が怒りを露にし竹島の胸ぐらを掴む。
「し、知らない。そこまでするとは聞いてないんだ!」
これには竹島は寝耳に水だった。
南雲は内藤の方へ目を向ける。内藤も竹島と同じ反応だった。
「……師匠……なに……やって……んだ……よ……」
品川からは涙が溢れ、もう亡骸となった桐崎へフラフラで接近した。
いかがでしたか?
もし良ければ誤字や脱字や意見や質問等があれば教えてください。




