第106話 衝撃だよ!
今回は彼等にとって衝撃的な話となっております
「おい、何してんだ?」
南雲は倉庫入口で修二が、ゴソゴソと何かしているので尋ねていた。
「? あぁ、刑事さんに教えておこうと思ってな。また急にいなくなると心配して捜査する人だから、ちゃんと何処かに行くと何かしら手紙とか置いておかねぇと……よし、これでいいや」
「……お前たまに常識はずれな事するよな? というか、大丈夫なのかコレ?」
南雲は愕然とし過ぎて、無表情で逆に心配していた。
堂々と倉庫に何処からか調達した黒ペンキで『敵は倒した! でも、大した情報得られなかったから先に行く。Sより』と書いていた。
「?」
自分の行動に何も疑問を思っていない様子だった。
「お前……本当えげつないよな? こんだけ迷惑な事しておいて……」
南雲が言いたかった事は他人の倉庫に落書きすると、器物損害罪や建造物損害罪等の罪に問われる事だ。
それも修二は質が悪いことにペンキで書いてある事だった。落とすのに時間が掛かる上、費用も掛かる。
チンピラよりヤクザが似合う事ばかりしていた。
「じゃあ『アトラス財団』を調べに行くか?」
「あぁ、それだが……『アトラス財団』を調べる前に、アイツを見つけた。堂々と東京で過ごしてた」
懐から南雲は写真を取り出して、修二へ見せた。
修二は無反応だが、真剣にマジマジと写真を見つめ、強く握り締めていた。
「いたのか。東京に……」
「桐崎さんの情報だから間違いないと思う。だが、心配なのはテメェだ。いきなり殴り掛かりそうだからな」
「……ちゃんと冷静にやるさ。俺も大人だ……けど、理由は聞かねぇと返答次第で戦争だ」
「それを止めろって言ってんだよ。今、派手に動いてみろ。今回は物わかりの良い刑事さんかもしれないが、普通なら俺達はムショ行きになるんだぞ? もう少しは自重しろ、でないと探せる物も探せなくなるぞ!?」
南雲の必死な説得により、修二はなんとか理性で抑えていた。
「……分かった。それで次は何処に行けば……神崎忍に会える?」
「ここに写ってるのは渋谷センター街だ。取り敢えずは渋谷を目指して、捜索し、情報交換する。殴り合いは無しだ」
「あぁ、アイツとは海道の丘で決着をつけるからな」
なんと桐崎が持ってきた写真には、渋谷センター街で黒服のパーマ男と話す忍が写っていたのだ。
(その前に、このパーマ野郎どっかで見たことあるんだよな? 何処だっけか……)
修二と南雲は偶然にも、忍よりもパーマ男が気になり、何処かで出会ったことあると記憶を遡ってみた。が、誰も思い付かなかったので諦めた。
「東京港から近い駅って何処だ?」
そんな他愛ない話をしながら四人は渋谷へ目指すのだった。
全員が駅に着いた。木戸が申し訳なさそうな表情で手を上げていた。
「私、そろそろ帰らないと……ここまで留守にしてると両親に心配させるから」
暫く留守にして両親に心配させるからと、今日は帰ると述べていた。
「あぁ、分かった。悪かったな一週間以上、俺達と付き合ってもらって」
ここまで滅茶苦茶でおかしく不思議であった道でも、付き合ってくれた事に修二は感謝していた。
「良いよ。ちょっと刺激的な体験だったけど、強くなれたから」
「そうか……じゃあ気をつけてな?」
「一応、『アトラス財団』の手下を倒したんだ。何時、報復されてもおかしくないから家まで俺が送ろう」
桐崎は木戸の安否を気遣い、家まで護衛すると名乗り出た。
そして四人は電車へ乗り、二人は別の駅で降り、木戸は修二と南雲へ手を振っていた。
「少しだけ寂しくなるな」
「……暫しの別れだ。人間っていつか終わりはあるだろ? それまで俺達が生きて再会できたら……ちゃんと卒業証書ぐらいは渡してやろうぜ?」
「そんな重い話だったか?」
「……たまに変な思考になって意味不明なこと言うことなくね?」
「それは……お前の頭がおかしいだけ」
話が噛み合わず、南雲は至極全うな正論を修二へ放ってしまった。
「……なんかすまん」
シュンと落ち着いてしまい、何故か喧嘩になると思いきや、謝罪してしまう意味不明な空気となり、気まずくなった。
(あの女刑事、よくコイツと暫く一緒に行動して、頭おかしくならなかったな? もしかして女刑事も頭おかしいのか?)
ちょっと修二が気の抜けたこと言っただけで、関係ない一華まで巻き込まれ、更には侮辱する失礼な南雲だった。
そんなちょっと変な空気の所為ではあるが、なんとか滞りなく渋谷駅へ辿り着き、徒歩で渋谷センター街へ向かうのだった。
「……人多いな。足立区とか新宿は少なかったのにな?」
人の多さに新宿と足立区を比べて、何かと皮肉しながら感心していた。
「こんなに多いと神崎忍を探すのも一苦労だな?」
「刑事さんがいてくれたら、簡単に見つかるかもしれねぇのにな?」
三日間という短い期間で、僅かな情報だけで修二を見つけだした事だけは、認められていたのだ。
「あぁ、畜生何処にいるんだよ? あのクソ生意気残念イケメン馬鹿野郎は……」
「本当だ。あのクソ生意気頭おか残念イケメン馬鹿野郎ウンコ野郎は何処にいんだよ?」
もはや呪文としか思えない悪口で意気投合する二人だった。
「ダメ元で交番に寄ってみるか? 確実に見た目だけで怪しい連中と思われるけどな……」
分かってて言うなという気分だが、確かに忍の情報は皆無だった。一度ダメ元で国家権力を使おうと南雲も考えていた。
「そうだな、一度ダメ元で……やって……みる……か?」
途切れ途切れで南雲はビルにある街頭テレビへ目を向けて、訝しんだ表情で見ていた。
そしてそれは唖然と表情へ変化した。
「おい、人の話聞いてんのかよ? マジで俺が冗談で言った事を真に受けてやろうと考えてんのか!? おいおい、勘弁してくれよ。お前散々人の事を……」
南雲は隣でべちゃくちゃ喋る修二の口元を押さえて、街頭テレビを指差しする。
何も理解できていない修二は浮かない表情で指示通り、街頭テレビへ顔を向けた。
そして南雲と同じく驚愕で唖然とした表情で見ていた。
「これって……夢?」
「夢なら悪夢だな。こんな所で意外な奴が意外な仕事して、それも普段とは違う印象で会えると思うと、少し閻魔さんが関係してんのか? って疑いたくなるな」
神様候補でもある閻魔も巻き込み、「もしかしたら、あの人が仕組んでるのか?」という程、修二と南雲にしてみれば前代未聞の出来事だからだ。
二人揃って見ていたのはアイドルが歌うプロモーションビデオだった。何の変哲もない、街頭テレビで問題なく流せる物だった。
だが、その人物が二人にしてみれば問題だったのだ。
『私と貴方は何時までも……変わらない主従関係です』
ファンシーな音楽と違い、何か思いが籠められているフレーズで二人は確信してしまった。
((なんで木元雅がアイドル衣装で踊って歌ってんだ!?))
二人が目撃したのは髪型をツインテールにし、ヒラヒラのアイドル衣装で縦横無尽に飛び回る。
修二を恨み、忍を尊敬し、神崎家に仕える忍者メイド長の木元雅だった。
「おい、待てよ! 木元雅がいるって事は……」
「アイツは忍につきっきりだから……」
「「アイドル事務所に神崎忍はいる!」」
大人の二人が血眼になってまで探している人物が、アイドル事務所にいるという、筋は通っている謎理論で答えを導きだした。
「おい、今すぐ木元雅が所属しているアイドル事務所を調べて行くぞ!」
「あぁ! そうだな!」
希望があると感じた二人はスマートフォンを取り出し、ネット検索で事務所を調べた。
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