第104話 喧嘩は図体だけじゃない!
更新です。久々の戦闘となります。
ゆっくりと入口のドアを開き、中の様子を注意深く観察する。
倉庫の中は暗がりで辺りは何も見えない状態だった。これでは暗闇から敵が襲われても対応できない状態だった。
「……暗いわね、ちょっと待ってて懐中電灯を――え?」
懐から小型の懐中電灯を取り出し、辺り一面照らそうとした。が、修二に左手で静止させられて、懐中電灯を懐へと仕舞う。
「刑事さん、記憶力は良い方か?」
「えぇ、でもどうして?」
「今から、ここは少し眩しくなるからな。その明かりで敵が配置してる場所を暗記して、俺に教えてくれ」
敵の気配を察知した修二は一華へ場所の暗記を頼んだ。
「何言ってるの? 相手は武器を持ってかもしれないのよ? 貴方が強いとはいえ……」
「ここは信じろ、数分で片付けてやる……やるぞ!」
一華は修二が一人で全員を倒すという無謀な行動を止めたかった。が、ここは信用しろと強調され、信頼するしかなかった。
そして修二は右掌に小さな『太陽』を作り出し、天へと向かって投擲した。
天井に衝突した『太陽』は大きく目映い光を放ち、暗闇を照らした。すると周りには目映い光で目が眩む、武装した集団がいた。
一華は修二を盾に辺りを確認し、敵の配置を全て暗記した。
「品川さん、記憶したわ」
「はいよ!」
激しく照らしていた『太陽』を自然消滅させ、戦闘態勢へと入る。
「先ず、正面に五人いたわ。それから……」
「作戦会議はいらねぇ! ぶっつけ本番でやる!」
「ちょっと!」
作戦を練るのかと思い、敵の配置を話そうとしていた。が、修二は先に暗闇へと走り入って行った。
自分勝手なことに一華は怒りを隠せなかったが、暗闇から修二ではない悲痛な叫びが倉庫に木霊していた。
「次!」
大きい声で修二は一華へ次の場所を尋ねる。
「……右ロフトに七人」
すると物の数秒には敵であろうという叫び声が、再び倉庫内に響き渡る。
「次!」
「左ロフト、四人」
一華はそう告げると鉄が大きくへこむ音が響き、左ロフトから靴の衝撃音が聞こえた。
するとロフトから銃による発砲音等が鳴り響いた。が、それは無茶苦茶に周りへ発砲していて、修二の居場所を突き止められていなかったのだ。
暫くすると発砲音は鳴り止み、静寂が倉庫を支配していた。
「電気点けるぞ?」
暗闇の中から余裕ある元気な声で、修二から尋ねてきた。
電気を着け辺りを見渡すと、そこには待機していた武装集団が倒れており、ロフトにもグッタリと倒れる者もいた。
倉庫内は無骨な内装で郵送された木箱に囲まれていた。
「凄い……物の数秒で倒しちゃった」
これに関しては一華も認めざる得ない状況となり、呆然としながら驚愕していた。
「だが、当の本人がいねぇ……」
そう修二が気になったのは、海道を襲った『土の覇気使い』がいない事だった。
「逃げたとか?」
「横浜の時は動き止めて空っぽにしてから逃げたんだろ? じゃあ、このまま証拠品残して逃げる訳にもいかないかもしれねぇな?」
それは修二の予測通りだった。倉庫の事務所から先程とは違う、覆面を被った大男と覆面集団が出現し、前へと立ちはだかる。
「まだリーダーは現れそうにないな。刑事さん、大男以外は任せる。できそうか?」
「……えぇ、任せて。貴方こそ、ここを任せても大丈夫なの?」
「なんとか頑張る」
「分かったわ……こっちよ!」
真っ先に一華は大男以外へ威嚇射撃をし、倉庫から出て、広場で戦うことにした。
大男以外の覆面集団は一華を捕縛するため、修二を素通りし、追い掛けた。
「さてと、アンタと俺とのタイマン勝負だ。アンタ無口そうだしな勝手な推測するぜ? 俺を無視してまで刑事さんを追いかけさせたってことは、アンタは幹部クラスの人間なんだろうな?」
自分勝手な推理だが、確かに修二の言っている事は不思議と腑に落ちていた。
「……」
大男は修二には返答せず、右足を大きく後退させ、右肩と上腕を修二に見せ、身体を前へと出した。
何かしようとは察していた。それはアメフトやラグビーとかで見られるタックルの体勢だった。
「来いよ」
修二はガード等せず、仁王立ちで大男のタックルを待っていた。
その言葉を放ったと同時、遠くから大男は助走つけず修二へ猛烈に向かって行った。
修二は避ける気配もなく真っ正面から受けるつもりだ。
「……」
大男のタックルは修二の胸と腹に衝突し、吹っ飛ばず接触していた。大男は追撃として足にも膂力を込め、思い切り押す。
押されている修二は足のみで耐え、後ろまで下がっていた。足へ力を込めている為、摩擦により焦げた靴跡が出来ていた。
暫くすると大男から体力は切れて、大量に発汗させ、激しく肩で息をしていた。膝から崩れ落ち、虚ろな瞳で修二を見上げていた。
「図体はデカくても体力がねぇ見かけ倒しか……ほら、そこで休んでろ。もうアンタには用がねぇからよ」
そう修二は何もしていないのだ。修二はただ立って、相手の体力が切れるのを待ち、力が掛かっている反発エネルギーのみで大男を倒したのだ。
そして興味がなくなると右片手のみで大男の左脇を持ち、邪魔にならないよう端まで運んで行く。
疲弊しきっている大男を座らせて、倉庫中央まで歩き戻る。
「おい! 次はテメェの番だ。早く出てこねぇとしらみ潰しに火の玉ぶつけんぞ!」
それは隠れている者に対しての脅しだった。
すると裏口からスポーツキャップを被り、口元を布で覆い、ブカブカのデニムを履いた。小柄の男が現れた。
「お前は確か海道で暴れたリーダーだな?」
「え、えぇ……そうです……」
海道と出会った時より威勢がなくなり、脅えた様子だった。
「どうした? 何をそんなにビビってんだよ? お前も『覇気使い』なら、ここまで近づいて戦えよ?」
「そ、そうじゃないんです。俺、このギャングのリーダーとかじゃなくて……」
するとリーダーと思わしき男の背後から、称賛するような拍手をしながら大男が現れた。
その大男が前へ出ると、リーダーも後ろから追尾して中央まで修二に近づいて行く。
「へぇ~すっかりと騙されたぜ。アンタいい人そうに見えて、ソイツ等を操ってたな?」
「噂通りの実力ですよ。品川修二さん、貴方を是非とも仲間に引き込みたいぐらいですよ」
その大男の正体は……水城将だった。
「おい、もう良いぞ。お前の犯罪歴は無くなった事にしてやるから消えろ」
「は、はい!」
リーダーの男は脱兎の如く裏口へと逃げ出した。
「アンタみたいな奴は海道の時にはいなかったよな?」
修二は懐から煙草を取り出し、ジッポライターで着火し、少し一服する。
「はい。俺は近くで観察していました。神崎忍を一目見ようと隠れていたんですよ」
「なんだよ。俺じゃねぇのか……そんで? その神崎忍に何か用があったのか?」
東京にまで知名度があったのかと期待した。が、忍の名前がアッサリと出て、少しショックを受けた修二だった。
ついでに忍を狙う理由を尋ねたのだ。
「会長が連れて来いとの命令だったんですよ。けど、もう海道にはいなかったらしいですね。少し骨折り損のくたびれ儲けな気分にさせられました」
「アイツはそういう奴だ。自分勝手な『最強』だからな?」
「でも、思わぬ収穫もありました。品川修二さん、貴方が『覇気使い』だとは……それも使いこなしている」
「前置きが長ぇんだよ。俺に一体どうさせようって言うんだ?」
遠回しに何か伝えようとしているのが、気分悪くなり、修二は凄味で水城を威圧し、要件を尋ねたのだ。
「……そうですね。では、品川修二さん――私達の仲間になりませんか? 『覇気使い』しか存在しない世界を目指して」
「あ?」
「私達、『アトラス財団』の一員として働きませんか? それも貴方にとって損な話ではありませんよ? 神崎忍を……始末できるチャンスです」
水城は修二に右手を差し出して握手を求めていた。
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