第103話 お礼参り。
少し遅くなりました。お礼参りというタイトルです。
私なら怖くてされたくもないし、したくもないですね。
渋滞から抜け出し、夕暮れになってまで数時間掛けて、一華が向かっていたのは東京湾だった。
その場には海外で輸入や輸出するコンテナが大量にあり、倉庫も管理しやすいよう沢山建築されている場所だった。
「倉庫か、あの時を思い出すな!」
五年前、半壊するぐらい海道倉庫にて、忍とギリギリな生死が別れた決闘を修二は懐かしんでいた。
あの時から、どれだけ強くなり、変わり、何が成長したのかは自分でも不明だが、早く忍と戦いたい気持ちはあった。
「聞きたくないけど、何があったの?」
また突拍子もない非現実的な話を持ち出すかと思い、驚かないよう相構える一華。
「五年前、『覇気使い最強』と戦って海道倉庫を半壊させたのを思い出してな?」
「はい、ダウト! そんな事してたらニュースになってるわ。それも五年前で半壊させるぐらいなら、周りのビルなんか……ごめんなさい。ちょっと混乱しただけよ。そうよね、有り得ない事があるんだから、それぐらいは慣れないと……」
結局、驚愕してしまい最終的には冷静になるという意味不明な症状へ陥ってしまい、頭を抱える。
「信じられねぇのは分かるけどよ……そんなヒステリック起こして、疑問を考えることねぇだろ?」
錯乱した一華を見て、修二は自分勝手ながらもドン引きした。そして友達感覚で心にもないことを発言してしまう。
「あのね、貴方は何か忘れてるかもしれないけど、私は刑事で貴方は弁護士なのよ? 自分の立場を弁えてくれる?」
「……仲間じゃなかったら殴ってた」
流石の修二もカチンときて、目力を強め、殺意が湧き出ていた。が、ここは大人となって落ち着いて、一応我慢した。
「――よし、ここは一旦やり直そう。ヒステリックていう発言をしてすまなかった。これで良いか?」
「……こちらこそ、悪かったわ。じゃあ、これで良いね?」
修二が先に詫びを入れて、確執によるお互いの足の引っ張り合いを防いだ。
少し感情的になっていた一華も、自分の非礼を詫びた。
「ここに連れて来た訳は?」
本題へと戻り、一華が修二を東京港まで連れてきた目的を尋ねた。
「三日前、私達を襲った犯人がアジトにしてる場所よ。私が暴れてる時に先輩の携帯電話をポケットに入れておいたのよ。そしてそこから携帯電話のGPSで捜索して、この三日間で出入りが激しかったのが、ここ東京港だったわけ」
話ながら一華はトランクを開けて、重い物が衝突させる音をさせながらゴソゴソと何か探していた。
「先輩は可哀想だな。携帯電話が紛失したと思えば、勝手に犯人追跡に使われているとは……俺だったらキレてる」
一華がトランクに集中している間に、修二は携帯電話を取り出して、素早く画面へタップしていく。何処かと連絡している様子だ。
「はい、防弾チョッキ。『覇気使い』でも被弾とかしたら命に関わるからね?」
トランクから取り出したのは成人男性用の防弾チョッキだった。一華は無断で本部から持ってきたのだ。
「……貰おう」
一度拒否しようと少し考えたが、右腕の件もあるので、ここは安全を取り防弾チョッキを受け取り、スーツの上から着替えた。
続いて一華も防弾チョッキに着替えて、更には日本では非公式のアサルトライフルは抱えて、拳銃二丁だけは靴下に隠した。
「……あのさ戦争に行くつもり? 俺は人殺しには手は貸さないぞ?」
こんな重装備で捜査するのかと疑問に思い、ジョーク混じりで尋ねた。
「これは防衛手段。アッチも調べた所によると危ない連中だから油断できないの」
「過剰防衛だと思うけどな?」
修二は軽くストレッチしながら準備を整えていた。途中で一華から拳銃を一丁だけ渡されたが、使い方を知らないという理由で断った。
「桜草! 遅かったな」
そこへ一華を呼ぶ誰かがコンテナ裏から現れた。修二より大きく屈強なガタイ、ベージュのスラックス、上は袖を肘まで捲った白いワイシャツ、青白で水玉のネクタイ、黒い安物の革靴、ソフトモヒカンで顔が熱血の男性だった。
「先輩! 紹介します。こちら神崎法律事務所の弁護士、品川修二さんです。品川さん、こちらは先輩の水城将さんです……」
「水城将です。今回は部下が勝手な真似して、すみません。弁護士でしたらお忙しかったでしょう?」
生真面目に修二の前へ出て、一華の行動へお詫びを申し上げていた。
「いえ。俺も何かと暇だったんで、刑事さんの助けになるならと協力しました」
修二は何も事情を聞かされていないが、ここは敢えて話を合わせ、状況分析する。
「それでは先輩、コレを!」
一華は再度トランクから武器を取り出し、水城へ投げ渡した。
それはアメリカ産のポンプアクション方式の黒い散弾銃だった。
(完全に戦争する気やろ? 刑事さんも人のこと言われへんな……この人もええ人そうに見えて、頭のネジが数本は飛んでんな)
完全にお前だけには言われたくない状況で、修二は無表情のまま、関西弁でツッコミをするのだった。
「俺は裏口から入る。桜草と品川さんは表から入り、もし出来ることなら説得か交渉で時間稼ぎをお願いします。桜草、くれぐれも品川さんに怪我がないようにな?」
空中で銃弾を融解させる人間に怪我させる方が難しいと思っていた一華。だが、ここで万が一に怪我をされても困るので、忠告は受けておくのだった。
「分かりました。先輩も無理そうなら早く逃げてください」
「あぁ、そうさせてもらうさ」
水城は散弾銃を構えて走り、倉庫の裏口へと回り込んだ。
「それで刑事さん、水城刑事がいなくなったんだ。そろそろ何をしでかそうとしてるのか聞いて良いか?」
「えぇ、ここで違法な物を扱って極道組織や半グレ集団に横流ししている組織があるの。それは……」
「核爆弾以外の兵器の密輸か?」
大体の推測で何が起きているのか分かった修二は答えを言った。
「そうよ。令状の用意はできてるから、後は弁護士の貴方も確認して、全員逮捕……なんだけど、そこで問題が起きたわ」
「検討はつく……摩訶不思議なことが起きた。つまりは『覇気使い』だろ?」
「えぇ、数ヶ月前だったわ。令状を持った捜査員が倉庫に進入した途端、変幻自在の土で拘束され、その隙にもの抜けのからにされて逃げられたわ。その時は東京港じゃなく横浜港だったけど……」
「土か……見に覚えのある『覇気』だな」
土という単語に修二はニヤリと笑い、嬉しがっていた。
「知ってるの?」
そんな修二の反応を見て、何か察した一華。
「ギャング集団のリーダーが使ってたな。まさか、こんな形で近づけるとは思わなかったがな? それで『覇気使い』が出たら俺の出番という訳か?」
「えぇ、お願いできるかしら? この件が終わったらリーダーは好きにしては良いわ。殺す目的じゃないのは分かってるから、援護だけはするわ」
「成る程……その前に煙草吸ってもいいか?」
「出来るだけ早くね」
近くのコンテナに凭れ、険しい表情で煙草を一本咥えて、着火し、肺まで大きく吸い込み、夜空へ向かって紫煙を吐き出す。
「……」
瞼を閉じ、小刻みに震える身体を落ち着かせ、もう一服吸い込む。修二は恐怖で震えているのではなく、武者震いしていたのだ。
今まで手応えのない奴等ばかり倒してきたので、命を掛けた。つまりは熱い喧嘩を期待している。
(あの時、何も反応できずにやられぱなっしだが、今度はこっちから仕掛けてやるぜ……デコピン一発で倒せたが、不意討ちの礼だけはさせてもらうぜ……)
そしてフィルターギリギリまで吸い終わると、胸ポケットから携帯灰皿を取り出し、そこへ煙草を廃棄した。
瞼をゆっくりと開き、一華が待ってる倉庫の入口へと近づく。
「キチンとお礼参りはさせてもらうぜ」
ネクタイを緩めて取り、思い切りと上空へ投げ捨て、いざ倉庫へと向かうのだった。
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