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マグナムブレイカー  作者: サカキマンZET
第3章 西と東 赤の書編
102/170

第102話 中分けと外ハネのドライブ。

久し振りに早く更新しました。

 喫茶店から出て、修二だけは近くにあった喫煙所で煙草を一本だけ咥えていた。

 そしてジッポライターで煙草を着火させ、至福の一服を満喫していた。深く肺まで吸い込み、口から紫煙を吐き出す。


「……煙草吸う事しかやることねぇよな」


 一華から準備があるから暫く待ってくれと伝えられ、暇になったので喫煙所を見つけ、ただいま本日、三本目の煙草へ手を出していた。


「最近、チェーンスモーカーになりかけてんな。吸う本数減らすか……禁煙っていう手も――有り得んな」


 最近、立て続けに煙草を喫煙している為、このままチェーンスモーカーになるのではと心配した修二だった。

 自分自身が禁煙する方法も考えたが、そんな事は完全に有り得ないので鼻で笑ってしまった。


「終わったわ、ちょっと説得に手こずったけどね」


 暫くしていると背後から修二の左肩をチョンチョンと右人指し指で振り向かせ、準備できたと報告しにきた一華だった。


「そうか。ちょっと待ってくれ、今吸い終わる」


 修二は煙草を少しだけ吸い込み、紫煙を吐き出し、灰皿スタンドに火種を押し潰し、中へと廃棄した。


「ねぇ? 健康状態とか大丈夫? かなり吸ってたけど?」


「この前の健康診断はオールオッケーだ。それに百メートル走は学生時代と変わらず、五秒台で走れた!」


「それ盛ってない? いくら『覇気使い』でも、そんな世界記録を塗り替える嘘は駄目だよ?」


 ジト目と呆れた表情で一華は修二の話を信じていなかった。

 それもその筈、肺はニコチンによって汚染されている様な輩が、世界記録を簡単に塗り潰しことなど有り得ないからだ。


「じゃあ走ってみようか?」


「馬鹿言ってないで車に乗るわよ。貴方にとって有益な情報があるんだから」


「……はいよ」


 修二は百メートル走を実演してみせようとしたが、時間も無いので相手にされなかった。

 けれど、一華から修二に関する有益な情報がある事なので、ここは大人しく言う通り従うのだった。

 二人は近くのコインパーキングへ赴いた。

 コインパーキングの遠くからでも目立つ、マツダ産の赤く光沢で煌めくデミオが停車していた。


「これ目立たねぇ?」


「……仕方ないでしょ……結構、気に入ったんだから……」


 色と形と値段が気に入って衝動買いしたなんて言えない一華は、恥ずかしがりながらも返答する。


「まあ、別にいいけどよ。これって新車?」


「そうよ。十年ローンで契約して買ったの」


「公務員って給料良いって聞くけど、俺達の想像以下なんだな……」


 修二の何気ない一言で、一華の何かがプツンと切れる音が響いた。


「はあ!? こちらも言わせてもらいますけど、弁護士だって客が入らないと公務員以下の給料じゃない!?」


 いきり立ちながら、修二の顔近くまで接近し圧迫していた。


「……俺、月給制なんだけど?」


「……幾ら貰ってるの?」


 月給と聞いて冷静となり、興味が込み上げて修二に尋ねた。


「……あんまり誰にも言うなよ?」


 ゴニョゴニョと一華へ耳打ちで、自分自身の給料を正直に告白する。


「え? 嘘でしょ? なんで? 弁護士というより、そこで働くだけで大金持ちになれるの?」


 一華が知ったのは、忍から教えてもらった海道が政府からの税金も掛からず、伸び伸びと儲けている事に唖然と驚愕を隠せなかった。


「政府公認だから、ここで住所置かない限り俺に税金とか掛からない」


「でも、怪我したりとかは?」


「一度も入院費を支払ったことはない」


「治安は?」


「海道で暴れようという勇気があればな?」


 そんな無法地帯で危険な海道に頭が真っ白となり、一華は茫然としていた。


「……なあ? そろそろ行かねぇか?」


 話どころか移動すら出来ていない状況なので、痺れを切らした修二は車に乗ろうと催促していた。


「え、えぇ……そうね」


 車のオートキーでロックを解除し、二人は車内へと入って行った。因みに、内装はオシャレなピュアホワイトレザーとなっていた。


 暫く緩やかに走行しているとスリップ事故で二人は渋滞に巻き込まれた。

 助手席の修二は心底つまらなそうな表情と見た目の所為か、端から見れば怒っているようにも見えていた。


「まだ時間に余裕はあるから大丈夫よ。夕方には港に到着すればいいから」


 渋滞で不機嫌だと思われる修二を見て、時間には余裕がある安心してと宥める。


「いや、別に怒ってもいない。ただ……」


「ただ?」


「なんで俺なんか捕まえて、話なんか聞こうと思ったんだろうなって考えてた。俺じゃなくても他にも怪しい奴はいると思うのに……」


「答えは単純――貴方が見た目通りに放っておけなくなったからかな? まあ、私の勘なんだけど、貴方は何かかしら一杯抱えすぎて潰れそうで危なっかしい人だから、誰かが面倒見てあげないと思ったの……以上」


 一華は最初に修二を見た瞬間、何かを感じていた。一つは孤独、二つは喪失、三つは躊躇の三つだった。

 けど、それを感じて人として刑事として放っておけなくなり、修二とコンタクトを取ったのだ。


「……そうか」


 なんとなく修二は納得し、これ以上は自分から話をする気はなかった。


「ねえ?」


「?」


「なんで弁護士になろうと思ったの? 貴方の特技とか生かせれば格闘界で有名にもなれたのに、なんで複雑な弁護士だったの?」


 一華は気になっていた。何故、破天荒で無茶苦茶な人間が、法律を重視する弁護士への道を進んだのかを。


「知識が必要になったからだ。普通に喧嘩するなら知識なんて必要ねぇけど、俺が挑もうとしてる奴は、知識以上の事を知らなければ勝てない奴だからだ」


「貴方以上の化物がいるの?」


「残念ながら四人知ってる」


 修二は苦笑いに、神崎兄弟、閻魔光、ウロボロスを想像していた。


「……もう特殊部隊使わないと勝てないわね」


「あぁ、そうかもな……逆に聞くけど、刑事さんも何で警察になろうと思ったんだ? 給料は安いし、税金泥棒とか言われる御時世でよ?」


「私? まあ、犯人を捕まえるとスカッとするからかな?」


「……もう少し暗い話になるのかと思ったが、意外と単純なんだな?」


「私、実は警察就く前は大学生でニートだったから……特にやりたい事もなかったし、貴方みたいに『覇気使い最強』なんていう夢もなかったから……刑事になろうとした原因はアニメの影響なの……」


 一華は原因がアニメの所為だとはハッキリと修二に言えなかった。彼が見た目通りなら、馬鹿にされるのが落ちだと思ったのだ。

 けれど、彼も正直に語ってくれたので自分自身も素直に告白したのだ。


「へぇ~アニメね。良いじゃん、何か趣味見つけて、それを叶えたって事だろ?」


「でも、アニメだよ? 普通は馬鹿にされるよ?」


「そんな物はな? 実行した事ねぇ奴と世間体で生きてる奴が、何の根拠もねぇ事をベラベラと言ってるだけや。俺は恥ずかしいとは思わへんし、胸張って堂々としてろや。今、刑事さんの隣には、有り得へん事をしでかそうとしている大馬鹿野郎がおるんやからな」


 素の修二が関西弁で一華を卑下せず、認め馬鹿になどせず励ましていた。これは強者だから余裕があるのか、同情したのかは分からない。

 けれど、本心で喋ったことには間違いないのだった。


「……ありがとう」


 一華は修二に感謝の礼を呟き述べた。


「……ほら! もう前空いてんで? 早く前行かんと、また渋滞すんで?」


 暫く話込んでいたので空いている事に気づいた修二は一華を急かした。


「そ、そうよね。ごめんなさい、集中してなかったわ……それにしても――」


「?」


「貴方って関西弁似合わないね?」


「しゃあないやろ、産まれも育ちも関西で大阪や。たまには素は出んねん、それぐらいは許してくれや」


 暫く渋滞は長く続きそうな様子だ。

いかがでしたか?

もし良ければ誤字や脱字や意見や質問等があれば教えてください。

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