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彼らが人を殺す理由  作者: 真西七海
9/12

純潔の為

魔女乃森まじょのもり まじりの場合


魔女乃森まじょのもりは十代後半の女性。

名家のお嬢様然とした態度、日本人離れしたコバルトブルーの瞳、そして、とてつもなく美少女だった。


それでも、66人の男性を殺している殺人鬼だ。


―――あなたは何故、人を殺したのですか?


「私の身を守る為に、仕方なく」


―――自分の身を、守る為?


「はい

………わたくしは、その、なんと言いますか、

殿方の情欲を刺激してしまいやすいようでして、

昔から危ない目にあって参りました。」


………何となくわかる。

目の前の少女は、この世の者とは思えない妖艶さを持っている。

現時点でも振り撒いている。

私も正直、ガラス越しだから普通に会話できていると思う。というのは言い過ぎだろうか。


「小学校六年生のとき、初めて街中で男性に声をかけられました。その時は丁重にお断りしたのですが、しつこく付き纏われまして、

………昼間で人通りの多い道でしたので、すぐに警察の方々が助けて下さいましたが、その時の恐怖は忘れることがございません。


その日を境に、男性に声をかけられることが多くなりました。


中学校に進学すると、とてもたくさんの男性から告白されるようになりました。

同級生や先輩もですが、先生からも告白されるようになりました。


わたくしがお断りして、すぐに諦めてくださる方はよいのですが、中には激高して憎悪を向けてくる方もいらっしゃって、

ついには学校に行けなくなってしまいました。


学校に行けないわたくしを、両親は慰めてくださいましたが………

家の中も安全ではございませんでした。」


―――?


「父に、襲われました」


―――!!?


「わたくしをベッドに押し倒す父を、必死に押し返しました。

父をはよろけた拍子に机の角に強く頭を打ち、気を失いました。

その間、わたくしは母に助けを求めました。

わたくしの話しを聞いた後、『私が守ってあげるから』とわたくしに言うと、


………気を失っている父を、包丁で突き刺しました。」


―――!?!?


「母は、わたくしを励ましてくれました。

『あなたは何も悪くない。

悪いのはあなたに襲いかかってくる人間だ。

あなたが生きるのを遠慮する必要なんか、何もない。

あなたは幸せになっていいのよ』」


―――素敵なお母様ですね


「ありがとうございます。

ですが、母はまだ服役しています。

わたくしの大好きな母は、

わたくしを守ってくれた母は、

人殺しの犯罪者ということになっています。


………それが、どうしようもなく悲しく、悔しいのです


だからわたくし、

自分の身は自分で守ると、決めたんです。」


―――なるほど


「最初は鞄の中に、ナイフを入れて持ち歩いておりましたが、すぐに止めました。

いざというときに、取り出す時間がかかりますし、ナイフを奪われでもしたら、いよいよ抵抗する手段を失ってしまうからです。


最終的には、グローブとソックスに毒針を仕込んで着用しております」


―――え?毒?


「はい。毒です。致死性の。


わたくしが断っても、

しつこく付き纏う方には、

わたくしから『休憩』をご提案致します。


そうすると、必ず男性は、わたくしの提案を受入れて下さいます。


部屋に入ると、最後に男性に確認します。

『わたくしはあなたと性行為をしたくない。

それでもわたくしに手を出すのであれば、

自衛の手段を取ります』と。


ここで諦めて下されば、わたくしも何も致しません。

しかし、部屋まで来る男性であれば、諦めて下さる方はほとんどおりません。


その時は、男性に抱擁を求める振りをして、


………毒針を刺します。


人によっては、わたくしの両手を拘束する方もいらっしゃいました。

その時は、ソックスに仕込んだ毒針で刺します。


………でも、なぜ男性の皆さんって、

ブラジャーやショーツは脱がしたがるのに、ソックスだけはあまり脱がそうとしないのでしょうか?」


―――………さ、さぁ?趣味嗜好は人それぞれですから


嘘です。ちょっとわかります。


―――あなたは、自分の殺人に罪悪感を感じることはないですか?


「今は………もう無いですね。

初めて人を殺したときは罪悪感を感じました。

わたくしが罪悪感を感じるときは、母を思い出す様にしております。

でなければ、あの時、身を挺してわたくしを守ってくれた母の想いを、無駄にしてしまうことになりますので。」


―――なるほど。


―――ところで、魔女乃森まじょのもりさんは、どんな男性がタイプですか?


「ふぇ!?」


―――いえ、たくさんの男性に好かれるので、逆にどんな男性だったら交際したいと思うのかなと


「ふぇ!?いえ!あ、その、えーっと………

そゆこと、考えたことなくて、

だから!えと、えっと、えーっと………


最初はただの友達だけど、一緒の時間を過ごしてく中で、何となくこの人いいなあって、それでそれで…………


あ、や、違う!違うんです!やっぱなし!!

ノーコメント!ノーコメントですぅ!!

あぁ恥ずかしい………」


どうやら、彼女は普通の女の子のようだ。

ただ、彼女の美貌は、もはや呪いだ。


周りの男性を狂わせ、

そして彼女の人生を狂わせた。

そしてこれからも、すべてを狂わせ続ける。


それは彼女が悪いのか?

彼女の色香に引き寄せられた男共を悪いと断ずるのは、あまりに酷だろう。

これは魔性の色香だ。


―――そろそろ、お時間ですね。貴重なお話、ありがとうございました。


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