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彼らが人を殺す理由  作者: 真西七海
8/12

祈りの為

慟哭山どうこくやま 忌三太きさんたの場合


慟哭山どうこくやまは七十代後半の男性。

薄くなった頭頂を覆い隠す様に髪を貼り付け、終始気味の悪い笑みを浮かべている。


彼は、同じ村に住む女子高生を一人、焼き殺している。


―――あなたは何故、人を殺したのですか?


「作家先生、それを語るには、

その前に村の風習を語らなければなりません。


うちの村の風習に『結炎式けつえんしき』というのがありましてな


六十年に一回、暦が廻るごとに行ってます。


内容は、村の神様に娘を嫁に捧げる、俗に言う『生け贄』ですな


やり方は、最後に儀式をやった十二年後に社を一つ建てる。

その十二年後にもう一つ。

そのまた十二年後にもう一つ。

そして、六十年かけて五つの社を作る。


そして六十年目、贄役の娘に五つの内一つの社を選んでもらい、一晩入ってもらう。


神の使徒役の、この場合私ですな。

使徒役の私が、五つの内一つに火をかける。


そこで娘が燃やされれば、それは神が欲したということ。

無事に神様のもとに嫁げたということになります。


反対に、娘が燃やされなかったら、今回は神様が欲してなかったということ。

娘は世俗で生きることになり、儀式はまた六十年後になります。


ああ、ちなみに残った四つの社は、翌日の夜に燃やしますな」


―――ということは、まさか


「はい。今回は無事に神様のもとに嫁いだ。ということです。これで、次の六十年、村も安泰です。」


後日、私は、その村の男性に取材することに成功した。


「………確かに、うちの村にその儀式はあることはあるんだけど、誰もやりたがらないよ。

この時代に生け贄って、時代錯誤にも程がある。


ただ、長老(慟哭山)がやる事を強行したんだ。

俺らは、じゃあ贄役は人間の代わりに人形を用意しようとか、色々言ったんだけど、長老は聞かなかった。


その内、娘の方が『20%なら大丈夫でしょ』って妥協して、俺らも、まぁ確率五分の一ならって思ってたけど、まさかこんなことになるなんてなぁ………


ん?六十年前?

六十年前は俺は生まれてないけど、

確か六十年前の儀式でも、一人死んでるって聞いてるよ?」


再び慟哭山どうこくやまに取材する。


―――六十年前の儀式について、教えて下さい。


「………六十年前なんて聞いてどうするのですか?

まあ、答えますが。

六十年前も今回と同じように、女子おなごが一人、神様に嫁いでいますよ。」


―――その女性は?

「『号泣川ごうきゅうがわ なげき

………当時の私の交際相手でございました。」


―――!?


―――あなたはもしかして、今回被害者が居る社がわかってて、火をつけたのではないですか?


「………作家先生、どうしてそう思ったのですか?」


―――作家の勘、でしょうか。


「なかなか良い勘をお持ちでいらっしゃる。


………そうですな。私はどの社に娘が居るか、わかっておりました。


そもそも十二年毎に社を建てて回ったのは私なんですよ。

社と言っても素人が作った、人がひとり寝られるかどうかくらいの小屋ですな


そんな建物、作って放置しておけば、

すぐ傷みましょう。


四つの傷んだ建物と、一つの真新しい建物、うら若き乙女が選ぶならどの建物でしょうな?


まぁ、だから娘は、素直に最後の社を選んだのでしょうな」


―――素直に?自分が死ぬかも知れないのに?


「あの娘は聡い。聡かった。

燃やされることがあるとしたら、使徒役が娘がいるかどうかわからない社を選んで、偶然燃やされるパターンしかないと思っていた。

まさか、自分が入っていると知ってて、わざと火にかけることなんかないだろうと、な」


確かに、確実に死なせてしまうとわかってて火をつけること、私なら絶対しないだろう。


―――でも、あなたは知ってて火をつけた。何故です?


「六十年前、私の『なげき』も殺されました。

あの時の長老連中に殺されたのです!


………その時私は決意しました。

こんな思い『なげき』一人に押し付けたら可哀想だと!

絶対に他の奴らにも味あわせてやると!

絶対に『なげき』で終わりなんかにさせない!

未来永劫恨みと憎しみが連鎖すればいい!!


あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ


慟哭山どうこくやまは別室に連れて行かれてしまったので、

彼がいた席に向かって、軽く会釈をした。


―――貴重なお話し、ありがとうございました。


コメントありがとうございます。書いてて大丈夫かと思うこともあるので(色んな意味で)励みになります!

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