表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼らが人を殺す理由  作者: 真西七海
3/12

知恵の為

無垢郎むくろう 真名火まなびの場合


無垢郎は十歳にも満たないの男の子。

利発そうな少年という印象だった。

元気そうだが、乱暴ではなく、

おとなしそうだが、暗くはない。

この年齢で、臆さずきちんと大人の私に受け答えできるので、歳の割にしっかりしているのだろう。


だが、この子は無差別に20人程殺傷している、極めて危険な殺人鬼だ。


―――君は何故、人を殺したのかな?


「殺すつもりはなかったんだけど………」


―――?


「僕は…………ただ知りたかっただけなんだ」


―――知りたかった?


「いちばん最初は『この横断歩道で前の人を突き飛ばしたらどうなるかな』と思ったんだ。」


―――何故?そんなことを?


「なぜって言われても………気になったからですよ?」


―――車の走る道路に人を突き飛ばしたら、どうなるかわからなかったのかい?


「………おじさんは、わかるの?」


―――そんなの誰だってわかるだろ!大怪我するかもしれないし、下手すると死ぬんだぞ!


「つまり?」


―――え?


「つまり、結論は?」


―――だから、大怪我するかもしれない、下手すると………


「そう!おじさんは怪我する『かも』って言ったじゃん!

だから、大怪我か

もしかしたら無傷か、

死んじゃうか、

ひょっとしたら軽傷ってこともある!

これだけでも、少なくても四択だよ!

おじさんは、この四択から、正しい結果がわかるの?」


言われて気付いた。

私は考えられる可能性をいくつか述べただけで、結果なんて分かっていない。

結末なんて知らない。

確かにこの子の言うとおり、結果は見てみるまでは確定しない。


―――すまない。確かに君の言う通りだ。私は分かっていなかった。


「なんだあ、残念。

大人になったらそういうのすぐわかるようになるかと思ってたけど、大人になってもわからないんだねぇ」


確か、事前に読んだ資料では………


―――突き飛ばされたサラリーマンの男の人は、軽自動車に轢かれて大怪我を負ったんだっけ?


「そうそう!おじさんよく知ってるね!

あのおじさん、頑丈そうだったし、車も小さかったからね!

結構飛ばされたと思ったけど、あのおじさん生きてたよ!


だからねぇ、人間の方がもっと弱そうで、車の方がもっと大きかったら、多分死んじゃうと思ったんだ?

頭いいでしょ?」


―――それで?


「今度は僕より小さな女の子を、大っきなトラックが来た時に突き飛ばしたんだ!

そしたらねぇ!予想ピッタリだった!」


そりゃそうだろう………


「そしたらねぇその子、血がいっぱい出ててぐちゃぐちゃだったんだ!

それを見てたら今度はねえ、


人間って、どれくらい血が詰まっているのか知りたくなっちゃったんだ!」


………なんてことを思いつくんだ


「それから、学校の裏山に木がたくさん生えているだけど、そこにクラスの子を吊るして首を切ってみたんだ!

凄い血の量だったよ!


だからねぇ、大人の人だったらもっとたくさん血が出ると思って、

今度は先生を吊るして首を切ったんだ!

凄い凄いたくさんの血が出たけど、

クラスの子の隣にしちゃったのは失敗だったよ!

周り全部血だらけで、どっちの血かわからなくなっちゃったんだ!


だから、次の先生は別の木に吊るして………」


この子は純粋に、誰でも持ってる知識欲に従った。ただ、興味の方向性が異常だっただけだ。

悪意がない。それ故、悪質だ。凶悪だ。


―――お父さんやお母さんは?


「………お父さんもお母さんも嫌い

実験のこと、凄く凄く怒ってた

大きな声で怒られて怖かったんだ」


確か、資料では、

この子の両親はこの子に殺されていたはず


―――お父さんやお母さんも殺したのかい?


「………分かんない

お父さんは、そんなに怒鳴らないでって突き飛ばしちゃったら、もう怒ってなかった

それを見てお母さんは叫び声あげて、びっくりしちゃって突き飛ばしたら、黙っちゃった」


事前に読んだ資料に書いてあった。

先天性の筋肉の異常発達。

子供ながら、成人男性の10倍の力を超える。


子供の背丈に関わらず、

人を簡単に突き飛ばしたり、木に吊るしたりできてしまう力。

人を突き飛ばしただけで絶命させる力。


この子が、異常な興味を実行できてしまったのは、この力があった所為もあろう。


―――真名火まなびくん、君は次、何を調べたいとかあるかい?


「うーんとねえ!内蔵!特に腸ってどれくらい長いのか見てみたいんだ!」


無邪気だから、邪悪。

こんな恐ろしい存在があったのか。


―――そろそろ、時間だね。今日はお話してくれて、ありがとう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ