表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼らが人を殺す理由  作者: 真西七海
2/12

正義の為

帆乃尾ほのお 音対ねついの場合


帆乃尾はニ十代前半の男性。

目鼻立ちがくっきりとした、凛々しい男前だった。


彼は老若男女問わず、五十人以上殺した殺人鬼だ。

最初に素手でボコボコに殴り、

次に刃物で滅多切りにし、

最後に爆殺するという残忍な方法は

すべての殺しで一貫している。


―――あなたは何故、人を殺したのですか?


「これはおかしなことを聞く。貴様まで俺を罪人扱いするのか?」


―――違うんですか?


「違う違う!俺は悪を滅ぼして来たに過ぎん!

俺は正義の味方だ!」


―――正義の味方、ですか?


「そうだ!正義の味方だ!俺は悪の怪人を倒してはきたが、それ以外に手を下すことなんざしない!」


―――あなたは正義とおっしゃいましたが、あなたの正義はどう証明するのでしょうか?


「これはおかしなことを聞く。正義の証明をしながら戦うヒーローがどこにいる?

俺は俺の正義に従うのみだ!」


―――身勝手な正義ですね?


「はは!身勝手?大いに結構!

元より正義は身勝手なもの

我が『身』が『勝手』に行うのだからな!

勝手に行わない行為、つまり誰かに命じられて強制されて行うのはすべて『命令に従う』だけだからな!

それでは、正しさを貫けない!」


―――屁理屈だ!


「ならば、貴様の理屈を通してみよ!」


―――失礼、質問を変えましょう。

あなたが悪と遭遇した時、警察に連絡するのではいけなかったのでしょうか?


「貴様も勘違いしているな?

警察は法の味方であって、正義の味方ではないぞ?」


―――え?


「警察の仕事は、法を逸脱した人間を取り締まること。そして業務命令に従うものだ。

警察の人間に、正義の心がないとは言わない。

正義の心がある者もいるだろう!

しかし、彼らは組織の人間だ。自分勝手な行動は許されない。

例え一人が正しい行為と思っても、組織がNOと言ったら、動けない。」


―――あなただって、法には従わないといけなかったのでは?


「俺は正義に従うと言ったはずだ。

法は法だ。正義ではない。

正義の一環として、法を守ることはあっても、

法を守ることが、すべて正義とは限らない!」 


―――つまり、あなたは法的には間違っていると


「ははは!おもしろいことを言うではないか!

その通りだ!

俺は俺の行動が間違っていたとは思わない。

しかし、法を逸脱しているのは、事実として認めよう!

今はまだ、悪の怪人が人間に擬態してたら、それはまだ人間として扱うことになっているからな!

直に近い未来、法の方が改められるだろう!」


―――法を犯した時点で、やはりあなたは正義ではないのでは?


「くどい!

確かに俺は、俺自身の正義は証明できぬが、

貴様だって俺を悪だと証明できぬではないか!

ただの言いがかりだ」


―――その論法では、私は私の正義に従って、あなたの行為を悪と断ずることができるはずですが


「貴様は自分自身が正義の味方だと、常に正しい行いをしてきたと、天地天明に誓って言えるのか?

俺は言えるぞ!

日和見で、その時の気分で正義を名乗るのは、決して正義の味方なんかじゃないぞ!

もう一度訊く。貴様は他人をどうこう言えるほど、自分は正しいと、正義の味方だと、本当に言えるのだな?」


言い返せない。

彼の言うことを否定したい。

間違っていると糾弾したい。

しかし、私は彼ほど正しく生きてはいない。

日常、いつもどこか『これは違う』と感じても、

『仕方ない』『自分だけじゃない』と妥協して生きている。

この瞬間だけ、

私は私の正義に燃えている。

目の前の悪に憎悪している。

それは―――

酷く不誠実な生き方のような気がした。



―――失礼、質問を変えましょう。

どうしてあなたは正義に拘るのですか?


「それは単純な話だ。

正義の味方が好きだからだ。それだけさ!」


―――あなたにとって正義とは何ですか?


「悪の敵であること!」


―――人々を守ることことではなく?


「正義の味方が、力及ばず犠牲を出してしまうことはある。

しかし、悪を許すことは絶対にない!」


―――だから、あなたにとっての正義は「悪の敵である」こと?


「そうだ!

常に悪を怒り、憎しむ気持ちを忘れないこと!

決して悪を許さず、容赦しないこと!

それが俺の正義だ!」


―――それでもあなたは今こうして捕らえられていています。それについてはどうお考えですか?


「警察は組織の人間だ。

俺を捕らえろと命じられれば、そうせざるを得まい。

だが、俺が正義の味方と知れば、すぐに勘違いを正して、解放してくれるだろう!」


―――解放されない場合は?

「その場合は、敵に組織を乗っ取られたか洗脳されたか………

いずれにせよ、悪の手に落ちた敵として戦わねばならない。

尊い犠牲だが、必要な犠牲だ!」


―――………誤解、解ければいいですね?

「ありがとう!

だが安心したまえ!

正義の味方は、どんなピンチに陥っても、必ず最後に勝つ者、だからな!」


―――そろそろ、お時間ですね。貴重なお話、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ