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彼らが人を殺す理由  作者: 真西七海
11/12

施しの為

余綿里よわたり 城鐘しろがねの場合


余綿里よわたりは四十代の前半の女性。

大きな眼鏡とややふっくらした体型が、実年齢以上………失礼、年相応の印象を与える。


彼女は元は保険の営業で、自分の顧客を次々と車で轢き殺した、殺人鬼だ。


―――あなたは何故人を殺したのですか?


「そりゃああんた、お金の為よぉ!」


―――お金の為、ですか?


「そう言ってるじゃない!」


―――あなたが、被害者を殺すことで、金銭を受け取っていたということですか?


「え?アタシ??違う違う!

アタシは一円も貰ってないのよぉ!

本当よぉ!」


―――では、お金の為というのは?


「お金を受け取ったのは、あくまでアタシのお客様!

この場合、保険金の受取人になってる人ね!

被保険者が亡くなったから、受取人が保険金を受け取る、当然のことよぉ!」


―――あなたのお客に保険金が入るようにする為に、人を殺したということですか?


「そうそう、そゆことそゆこと!」


―――殺人を、依頼されたということですか?


「いーやいや、依頼はされてないわよぉ!

アタシは『契約とったら終わり』の、そんな冷たい営業じゃないわぁ!

ちゃんと定期的にお客様の元に足を運んで!生活状況を聞いて!そして!お客様にベストな提案をさせていただいてるの!

だからぁ!そのご家庭に大きなお金が必要かどうか、ちゃーんとわかってるの!

でねでね!『あ、これはお金必要としてるなあ』ってわかったら、ちゃーんと保険金が支払われるように死なせてあげるの!」


―――死んでまではお金がほしいとは思わないのでは?


「あらそお?

死んじゃう方は可哀想だけどねぇ!

残された方は『助かりました』って言ってるわよぉ!

言っちゃあ悪いけど、ただ生きてたって、大事な家族救えない人だっているわよぉ!」


―――立場が代わって、あなたが死んで大事な人が助かるなら、あなたは死を選びますか?


「え、いやよそんなの?」


―――あなたが殺した人も、死にたくなかったとは思わないのですか?


「そりゃあ死にたくないに決まっているでしょう?

アタシが言ってんのは、死にたいとか死にたくないという話じゃなくね、

一人死んだら死んだら三人助かるけど、このままだったら四人助からない、

そういう話をしてるの!

勝手に話をすり替えないでちょうだい!」


―――じゃあ例えば百人助かるなら、あなたは死ぬことを許容しますか?


「アンタさぁ、もし、自分が生きてたら世界が滅ぶけど、自分が死んだら世界が助かるならどうする?って聞かれて、

アンタは、世界は滅んでいいけど自分は生きる!っていうわけ?

結局どこかで自己犠牲させたいわけでしょ?

そんな思考ゲームになんか意味あんの?」


―――質問を変えましょう。保険金を支払って、会社は損をしないのですか?


「損とか得とかじゃないの!

万が一の為にお金を積み立てて、

万一の時にお金を受け取る、それが保険なの!

逆に万が一の時にお金が支払われない会社の保険に、あなた入りたいと思う?思わないでしょ!


保険金がちゃーんと支払われて、

受け取った側が大丈夫になって、

ここ大事よ!

金額の大小じゃないの!

必要な時に必要な額!

足りなければ保険の意味がないの!

多すぎなら、普段の保険料がもったいない!

だから必要な時に必要な額!を貰えて

『良かった助かった』と思ってもらう

それを見た人が『アソコの会社はいい!そうだアソコに入ろう』って信頼してもらう!

だから契約者が増える!


それがあるべき姿なのよ!」


―――えーっと、損ではないと?


「損じゃなくて投資よ!と・お・し!」


―――あなたにとって、お金って何ですか?


「うーん、そぉねぇー

『あったら嬉しいもの』かしら?

たくさんあれば、その分買えるものも増えるし!やれることも増えるし! 


でもね

高くて美味しいご馳走を食べたら幸せになるけど、食べ過ぎたら太るし病気になる。


好きな服、思いっきりかったらとっても楽しいけど、買いすぎれば家を圧迫する邪魔になる


我慢に我慢してら預金通帳をいっぱいにしても、潤いのない人生は果たして楽しいのかしら?


お金は、いっぱいあっても、人を幸せにしてくれない。

いっぱい使っても、人を幸せにしてくれない。


やりたいときやりたいことができる!

これが幸せな人生!

お金は、その選択肢を広げてくれる。


だからお金は大事なの!


自分の幸せなの為、

自分の周りの幸せなの為に、お金を使うべきなの!

くれぐれも虚飾の為にお金を使うべきではないの!


アタシは職業柄『金さえあれば』って言う人、いっぱい見てきたわ!

そういう人の大半は、お金だけあってもきっと満たされないわ!

一部本当にお金だけ必要な人もいるけど。

本当に後はお金だけって人は、例えそれが途方もない大金だったとしても、額が決まっているの!


額が決まってない人は、必要のはお金じゃなくて自己分析ね!」


耳が痛い。

なるほど、このご婦人は

お金が好きで

お金を使うことが好きで

お金の力を信じているのだろう


まぁ、その金の為に用いた手段についてだけは、到底理解したくないのだけれど。


―――そろそろ、お時間ですね。貴重なお話、ありがとうございました。


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