ポスト・ヒューマン
「幼い頃、私は神様に会ったことがある」
恵海を呼びに行った縦川が寺務所に帰ってくると、残っていた上坂と倖がおかしな話をしていた。昨日から美夜が上坂のことを神様神様と呼んで慕っていたのは知っているが、まさか倖までもが同じようなことを口走るとは思わず、縦川はぽかんとしてしまった。上坂を見れば、彼の方も困惑しきりと言った感じで、いつもよりも眉間のシワに深い影を落としていた。
しかし倖が狂ったとも思えない。きっと比喩か何かなのだろうと、話の続きを促した。時間は正午をだいぶ回っており、丁度小腹も空いてきたところで、一同は出前を取って食卓を囲むと、彼女に詳しい話を聞いてみることにした。
「幼い頃、私は神様に会ったことがある。それも一度ではなくて二度も……もちろん、こんなの子供特有の夢か何かだと、切り捨てることも出来たんだけど、自分のことですからね。私はそれがただの夢だったとは思うことが出来ず、以来、その時に出会った神様を探して、この道に進んだのよ」
すると、彼女の言う神様と言うのは、どうやら比喩や何かではないようで、
「それじゃあなたは本気で神がいるって言うんですか?」
「ええ。本物かどうかはわからないけど、神様がいるとしか思えないような出来事に二度遭遇したの。一度目は母が死にかけた時。二度目は自分が誘拐されたときね……もし、あの時、助けが入らなければ、私は死んでいたかも知れない。神を信じるようになる切っ掛けなんて、それで十分でしょう?」
そして彼女は自分に起きた出来事をかいつまんで話しはじめた。
彼女の言う神様とやらは、彼女がピンチになった時に、誰かに憑依するという形で現れた。神様はまるでラジオの周波数を合わせるかのように唐突に現れ、その神様本人も、どうして自分が他人に憑依しているのかわからないと言った感じであったそうだ。その様子から察するに、それは彼の意思ではなく、あたかも魂だけが他人の体に混信してしまったようだったそうである。神様はこの世に現出している最中に、目の前に居た倖の問題を解決し、そしてまたラジオの周波数を合わせるように、ぱっと居なくなってしまった。
「そんなことがあったから、私は小さい頃から人間の肉体と魂は別々のところにあって、魂だけを入れ替えるということが出来るんだと思っていたの。つまり、人間の意識や記憶は脳の中には無いと考えてたのよね。
それで、実際にその魂ってのがどこにあるのかと言えば、私はそれを我々の住んでいる四次元時空の外側、もっと高い次元にあると考えたのよ。我々の魂は例えば五次元時空に存在し、その魂が見る夢のようなものが、私達四次元時空の体なんじゃないかって。
こんな考えとても科学者のものとは言えないでしょうけど、私のそれは原体験が元になってるから、いくつになってもどうしてもその考えは捨てきれなかったのよ……それで、肉体と魂が別個にあるとして、どうすればあの時に現れた神様が存在できるだろうかと考えた。それでカルツァ・クライン理論から超ひも理論の高次元宇宙に可能性を見出したんだけど……」
その、なんとか理論ってのは何なんだろう……縦川がまるで地蔵みたいな表情をしていると、空気を察した彼女は言葉を止め、ちょっと考えるように首を回してから、話を変えた。
「そうね。何から話し始めたらいいかしら……? 19世紀に出版されたフラットランドって本があるの。これは当時の世相を風刺したSF小説で、主人公は2次元のフラットランドに住んでいる四角形氏という、変わったストーリーなんだけど……ちょっと、思い浮かべてちょうだい。
フラットランドに住んでいる人たちは2次元の住人だから、みんなお互いを見ても線としか認識できないの。例えばテーブルに乗せられたコインは上から見ると丸いけど、徐々に視線を下げていって、テーブルと平行になると一本の線にしか見えなくなる。こんな具合に、フラットランドの住人は、三角形や四角形、円形などの形をしてるんだけど、お互いに見えるのはただの線なのよね。彼らが自分たちの体がどういう形をしているかを知るにはコツが要って、一番手っ取り早いのはお互いに触れてみること。フラットランドの住人は、そうやって暮らしていた。
ところがある時、四角形氏のところに三次元からやってきた球体氏が訪問するの。彼は四角形氏の前に伸縮する円として現れた。フラットランドの人たちに、3次元の物体は、出たり消えたり伸び縮みしたりする、妙な形として認識されるのよ。
これは例えば、一枚の紙を通り抜ける球体を考えてみればいいわ。球体は紙に触れた瞬間、紙の上では点として現れる。紙を通り過ぎる間は、徐々に大きな円になっていって、半分を過ぎたら今度は逆に小さくなっていく。そして最後にまた点に戻って、次の瞬間、パッと消える。
四角形氏はその伸び縮みする円がどうなってるのか、仕組みを一生懸命考えたけどわからなかった。訪問者は、自分のことを3次元の球体だと言うが、それを信じられない四角形氏はついに球体氏を嘘つき呼ばわりしてしまう。すると怒った球体氏は四角形氏を捕まえて飛び上がり、彼を3次元空間へと連れて行ってしまうのよ。
生まれて初めて“上”からフラットランドを見た四角形氏はそこにいた仲間たちを見て驚くの。『人間の中身が見える』って。フラットランドの住人は、お互いが線にしか見えてなかったけど、上から見ればその形だけじゃなく、体の中身までもが全部見えるのね。そして彼は三次元空間で球体氏を見て、初めて立体がどういう存在であるかを知った。3次元には光と影があり、遠近法がある。2次元にも多少はあるけど、それは殆ど感じられない。そしてフラットランドの住人は、実は3次元方向から来た光に照らされた影みたいな存在だったんだと彼は気付くのよ。
こうして不思議な体験をした四角形氏は、フラットランドに戻ってくると、みんなにその体験を話して回るの。きっとキチガイに思われると分かっているのに、あの鮮烈な体験を前にしては、そうせざるを得なかったのね。案の定、彼は社会を惑わすペテン師だと呼ばれて裁判にかけられ投獄されてしまう。球とはなんだ、立体とはなんだ、おまえは光が3次元方向から来ると言うけれど、“上”というのはどの方角にあるんだと問われても、四角形氏はもうそれに答えることが出来ないのよ」
倖はそこまで話を終えると、話に聞き入っていたギャラリーをぐるりと見回してから、区切りをつけるように一拍置いてから続けた。
「さて、フラットランドの話は一旦おいておいて、ちょっと話題を変えましょう……
アインシュタインは光速度不変の原理から特殊相対性理論を導き出したんだけど、わざわざ特殊と断っている通り、実はこれ、特殊な状況でしか成立しない理論なの。具体的に言うと、それは重力の働いていない空間での話。ところが、実際にはこの宇宙で重力がまったく働いていない場所ってのは、まず無いでしょう? それじゃ、この理論は役に立たないじゃないかってことになりかねないので、彼は早急に一般にも対応出来る理論を作り上げる必要があったのよ。
そこで、あの有名なエレベーターの思考実験が出てくるんだけど、彼はエレベーターに乗ってる時に、ハッと閃いた。もしかして加速度と重力は同じものなんじゃないかって。これを等価原理と言うんだけど、彼はこれを思いついたお陰で、懸案だった一般相対性理論を完成させることが出来た。
だいぶ端折ったけど、こうしてかの有名な2つの相対性理論は完成したわけだけど、先に作った特殊相対性理論でニュートン力学と電磁気学を統合した彼は、今度はそこに新たに作った重力の理論も組み込もうと考えた。ところがこれは、だいぶ後になってから分かる話なんだけど、現代でも不可能ってくらい難しい問題だったのよ。そうとは知らずに、彼はその研究に一生を捧げて人生を終えることになる。
アインシュタインが電磁気力と重力を統合しようとしていることは、かなり有名な話だった。そんな中、当時は高校の教師だったテオドール・カルツァは、アインシュタインの作った一般相対性理論を5次元に拡張してみようと思いついた。一般に、私達の住む宇宙は3次元の空間と1次元の時間を持った、4次元時空として考えられてるから、この5次元目の値はなんの意味も無いはずなのよ。
ところが、彼が試しに、一般相対性理論を5次元の理論として組み替え、新たに計算をし直してみたら、驚いたことに4次元目に電磁気に相当する力が現れたのよ。
これがどういうことかって言うと、彼の理論によると、4次元に現れた重力と電磁気力は、5次元の重力に統合されるということ。4次元時空でこの二つは別々の力なんだけど、5次元に行くとそれは同じ力として扱えるというわけ。
これを後にクラインが修正したのがカルツァ・クライン理論と呼ばれるもので、もしこの理論が正しいとすれば、この宇宙には私達が認識することの出来ない高次元が存在するということになる。
こうして生まれた高次元の理論は、現在では、より高度な超ひも理論やM理論に取って代わり、それが主流になってるんだけど……それは要するに、現代の科学者の大部分は、どうやら宇宙は高次元の中に浮かんでおり、私達が認識しているのはその一部だけだという風に考えているってわけ」
それによると宇宙は11次元の紐で出来ているらしい。科学者は4次元時空に住む我々の上に、7つも余分な次元があると考えてるわけだが、それがどんな世界なのかは想像するより他ない。フラットランドの住人が光を知らないように、どうあがいても我々にはそれを認識も知覚も出来ないのだ。
「でも、一口に私達が認識できない高次元って言われても、一体なに? ってなるわよね。そこでさっきのフラットランドの話を思い出してちょうだい。
フラットランドに現れた球体氏が、伸縮する円として四角形氏の前に現れたのと同じように、私達の前に4次元の存在が現れたとしたら、それは絶えずうねうね動いて形を変える不思議な物体として現れるでしょう。
それは私達の住む3次元空間を通過する一瞬だけ形として認識できるけど、少しでも離れてしまうと消えてしまう。フラットランドに現れた球体氏が“上”からやってきたように、それは4次元方向からやってくる。
もし、私達がその4次元方向へと行くことが出来て、そこから3次元の世界を見たらどうなるか? 四角形氏が『人間の中身が見える』と言ったように、私達にも人間の中身が見えるでしょう。中身が見えると言っても、それはドクドクと脈打つ内臓が見えるって感じじゃなくって、もっと細かい部分、私達を形成する分子構造の全てが一目で分かるって感じでしょうけど。
ところで、4次元方向からなら人間の中身が全て見えるということは、逆に考えれば、私達の体を構成する分子や原子、素粒子は、全て4次元に触れているということよ。フラットランドが3次元空間に浮かんだ紙みたいに表現出来たように、私達の世界も4次元空間に浮かんだ紙みたいな世界として表せるはずで、その世界はどこかミクロな部分で4次元とつながってる。
さらに、フラットランドを紙と表現したせいで、もしかしたら重ねれば本みたいな厚みが出来てしまうように感じるかも知れないけど、実際のフラットランドは厚みがないから、無限に重ね合わせてもその厚さはゼロのまま、無限に重ね合わせることが可能なのよね。
だとすれば、それを私達の世界に当てはめて考えてみてちょうだい。4次元ないし、それ以上の高次元空間では、私達の宇宙はいくらでも複製できて場所を取らない。重ね合わせることが出来る。すると、もし私達の世界がパラパラ漫画みたいに時系列に並んだ紙に描かれていて、一冊の本のようにまとめられてるとしたら、私達の世界の現在も過去も未来も、無数に枝分かれする泡みたいな並行宇宙も、高次元からは全て閲覧することが可能なはずよ。
つまり、もしも私達が高次元方向へ行って、また帰ってくることが出来れば、パラレルワールドへ移動することや、過去に戻ることも可能かも知れないってわけよ」
なるほどわからん……縦川は細かい部分はいまいち良く分からなかったが、ただこれだけはわかった。彼女は、時間旅行をしたり、パラレルワールドへ行ったりする方法があるかも知れないと言ってるわけだ。
「そんなことが本当に可能なんですか?」
「私はそれが出来るかも知れないと思って今まで研究を続けてきたのよ。残念ながら、なんの手がかりも得られなかったんだけど……ところがさっき、美夜が観測したと言うカルツァクライン粒子ってものが見つかったことで、どうやら私達はその尻尾を捕まえたらしいってことがわかったの」
「どういうことですか?」
「KK粒子ってのは、高次元方向へのベクトルを持った仮想粒子のことなのよ。
実はフラットランドの住人は、自分たちの姿は光に照らされているから見えていると言うのに、その光を認識することが出来ないの。光は電磁波……それは直交する電場と磁場の波のことで、3次元の広がりを持っている。フラットランドの人たちは3次元を知覚することが出来ないから、自分たちの体が光に照らされていることは分かっても、その光がどこからやってくるのかが分からないわけ。
同じように、私達も高次元の方向からやってくるKK粒子が、私達の宇宙を通過する瞬間だけは認識出来ても、それがどこから来るどんなものなのかは認識出来ないのよ。せいぜい仮説を立てて、推論するだけ。あと出来ることは、その推論から導き出される答えを実験で確かめて、どうやらそれはホントかも知れないと消極的に結果を積み重ねるくらいね。それも、どこまでやっても確定とまでは行かないわ。なんせ観測できないんですもの……」
倖がそう言うと、彼女の話を熱心に聞いていた上坂が首を傾げて、
「あれ? でも、さっき彼女は観測したって……」
「そうね。だから、美夜の言ってることを信じるなら、彼女は高次元方向への知覚を持っているということになる。それがどれくらいズレているのかはわからないけど、見た目は私達と同じように見えるけど、彼女は今現在も別世界に片足を突っ込んでるってわけよ。道理で、オリジナルと違ってボケボケしてるわけよ。彼女はここに居るけどここに居ない、幽霊みたいな存在なのね」
「どういうことですか、先生? 美夜はパラレルワールドを跨いで存在しているってことですか?」
すると彼女は頷いて、
「多分、そういうことね。もしくは意識だけが平行世界の彼女とリンクしている。上坂くんの能力が、彼女の言う通り世界改変能力であるならば、あなたは……あなたの魂は世界を変えるたびにパラレルワールドを移動してしまうわけよ。美夜はそんなあなたを捕まえるために、高次元方向をじっと見つめていた。そして昨日、ひょっこりやってきたあなたを捕まえたのね……我が発明ながら、恐れ入ったわ。さすが私」
「自画自賛はいいから。それじゃ、俺もその平行世界に片足突っ込んでるって状態なんですか?」
「え……?」
「俺も平行世界を移動してるんなら、そういうことでしょう? 俺も美夜みたいに、高次元のベクトルを認識できるような、何か特別な機能が備わってるのかな……全然実感ないけど」
「いいえ、上坂くんの能力はそれとは別に説明が出来るはずだけど……でも……そうか……そういうことか。時空間跳躍、KK粒子……上坂君だけじゃない。世の中に超能力者ってのが、何故突然現れたのか。彼らの能力はどうやって実現しているのか。その答えはここにあったのね……」
倖はそう独り言のようにぶつぶつと呟きながら、周囲のことなど眼中に無くなってしまったかのように、何かを考え始めてしまった。たまらず縦川がそんな彼女に喚くように尋ねた。
「あの、立花先生。一人で納得してないで、ちゃんと説明してくださいよ」
倖はハッと顔をあげると、バツが悪そうに苦笑してから、ゆっくりと、一つ一つを検討するような口調で話し始めた。
「あの災害後、この世界に登場した超能力者ってのは、超能力と言ってるけど、実際にはその力は見せかけのものなのよね? 彼らの力の正体は、FM社の陰謀のせいで脳に作られた有機半導体とネット家電が連動し、それっぽい力に見せかけていたものだった。その通信手段は謎だったけど、多分仕組みはそれで間違いないと考えられた。だけど、それだけじゃ辻褄が合わない現象が一つあった。
超能力がAIの誤動作なら、能力者をAIの無い場所に閉じ込めてしまえば、彼らは力を使えないはず。ところが、実際にそうしてみると、不思議とどこからかAIの方から能力者の近くへやってきて、能力が使える状態になってしまうのよ。その誤動作したAIを調べてみると、それは長ければ数ヶ月前から、その日その場でそうするように、予めプログラムされていた。あたかも未来予知していたかのように……
この現象があるために、超能力の正体は一概にAIの誤動作だけと考えられなかったわけだけど……でも、能力者とAIの通信手段に、KK粒子を使っていたらどう? 私達は能力者とAIの通信手段を観測できないけど、能力者は過去のAIに命令を出せる……
尤も、それは観測が出来ないため、どこまで行っても仮説でしか無いんだけど……超能力者ってのはつまり、高次元を通じて他世界に干渉できるようになった新人類なのかも知れないわね」
新人類……それは流行語大賞のような意味ではなく、本当の意味で進化した人間といった感じの意味だろうか。言われてみれば確かに、超能力者というのは、自分たち普通の人間とは別種と言っていいくらい、飛び抜けた能力を持っている。進化論からすれば、あとはどちらが淘汰されるかという話になるのだろうが……
「なんにせよ、調べてみなきゃ何もわからないわ。とにかく、いつまでもここに居ちゃ何も出来ないし、美夜のことも良く調べなきゃだし、早くドイツに戻らないと……上坂君、悪いんだけど、出来るだけ早くこちらを発てるように、身辺整理急いでくれる?」
「俺は身一つだから、政府や東京都からOK出たら、すぐにでも動けるけど……」
「そっか……仕方ないわね。一応、あなたを解放するために努力してくれたみたいだから、争いたくはないけど。AYFの白木から圧力かけて貰いましょうか。家族が一緒に暮らすんだもん。文句なんか言わせないわ」
「あの……いっちゃん。ドイツに連れて行ってしまうんですの??」
それまで会話に入れずに、手持ち無沙汰に黙って椅子に座っていた恵海が、不安げな表情で口を挟んだ。彼女からすれば5年も待ち続けて、ようやくこうして上坂と再会出来たというのに、また離れ離れになってしまうのかと、気が気でないのだろう。
しかしそれは杞憂のようで、
「何言ってるの。あんたも一緒にドイツに帰るわよ?」
「え?」
「あんたの家族だってドイツに住んでるんでしょう。こうして上坂君が見つかった以上、あなたが東京にいる理由も無いんだし。あ、いえ……もしもあるのなら、もちろんここに残っていいわよ?」
すると恵海は首がちぎれるんじゃないかと言うほどブンブンと頭を振って、
「もちろん私も行きますわ! 一人で残るなんて寂しいですの……でも、せっかくご縁が出来たシャノワールのクロエさんになんてお話したらよいものやら……定期的にお店で演るって約束もしてしまったのに」
「すぐに片付けろとは言わないけど、ちゃんと身ぎれいにしときなさいよ。引き継げるあてがないか、お母さんにも聞いてご覧なさい。上坂くんも、腰掛けとは言え学校に通ってるなら、そっちの方にもちゃんと挨拶しときなさいね。私も出来ることなら何でも協力するから」
「はい」
「さあ、それじゃ忙しくなるわよ。縦川さん、突然バタバタしちゃって申し訳ないけど、これから数日間、どうかよろしくおねがいします」
立花倖のその暴風雨みたいな有無を言わさぬ言葉に、縦川は少し気圧されながら頷いた。




