二人は二人のために
「双子……ですか」
昨日の夜にあった出来事を話すと、バルドが最初に言葉を発した。
「マナトも知っていると思いますが、私たち神族は子を為すことができません。それ故に、こちらの世界へマナトをお呼びする事態になった訳ですが……」
それはこの世界に来て最初に教わったことだけど、しっかり覚えている。
「うん……それは分かっているけど、確かに俺の娘だって言ったんだよ」
「ふむ……わしも神として顕現して久しいが、子が生まれたという話は聞き覚えがないのう……」
このおじいさんのことだから、何百年ではきかないんだろうな……。
思わず、俺もこの世界にいたら、エルダと何百年も一緒にいたりできるのだろうか、なんて考えてしまう。
「僕も聞いたことがないな〜。でも、一つ気になったんだけど、その双子ちゃんが消える直前に激しい頭痛がしたんだよね?」
「はい。しばらく痛みが続いた後、意識がなくなって……」
今朝だって、頭が重くてぼんやりしたのを引きずっていたくらいだ。
「それってさ〜、典型的な魔力切れの症状なんだよね〜」
「魔力切れ?」
「そう。僕の考えが合っているなら、その双子ちゃんはエルダ君の身体を媒介として、勇者君の力によって生み出された存在なんじゃないかな〜?」
「俺の力……?」
まさか。だって現に、検査でははっきりと結果が出ているし……。
「あの時した検査はね〜? ただ単に、その人が持っている抗魔力を測るものでしかないんだよ〜。だから、こんなイレギュラーな能力……と呼べるかはわからないけど、それが結果に反映されるわけなかったんだね〜」
そうだったのか……。でもそれが本当なら……
「もしも……もしもマナトに神を生む力があるとしたら……」
「わしらを救う英雄足り得るだろう」
バルド達に話を聞いてもらい終わる頃には、外は綺麗な星空が広がっていた。
「俺に神様を生む力、か……」
研究所の屋上テラスには、ほどよい風が吹いていて気持ちいい。
今日の話で、俺にも役に立てる力があるかもしれないと分かって、正直嬉しかった。
でも、俺の力には……
その時、ガチャリとテラスの扉が開く。
「わぁ、風が気持ちいいですね。マナトさん」
声の主は、ゆっくりと俺の隣にやってくる。
「エルダ……」
そう。あの双子に会うためには、彼女の協力が必要だ。
「今日のマナトさん、すごくカッコ良かったです……」
「えっ⁉︎ そ、そうかな?」
いきなり褒められてドキッとする。
「そうです。あのゼウス様の前でも堂々として、自分の思いを話せていて……。とても、素敵でした」
そんな風に思ってくれてたのか……。自然に嬉しさがこみ上げてくる。
「ありがとう。でもそれは、エルダが隣にいてくれたからだよ」
しっかりと彼女の目を見て言う。
「マナトさん……」
二人の視線が交わる。
「エルダ。俺はユグドの為に、役に立ちたい」
「はい」
「そして、その為にはエルダの力を借りなくちゃならない」
「はい」
「まだ、自信が持てない俺だけど……隣にいてほしい。いつも、どんな時も」
人生二回目の告白。今度は勢いなんかじゃない。思いが、溢れ出した。
「……それだけ、ですか?」
「えっ?」
「マナトさんが、私に側にいてほしいのは、ユグドの為だけですか?」
違う。俺がエルダに側にいてほしいのは……
「俺のために」
強く、言葉にする。
「俺が、エルダのことが好きだから。エルダの声も、笑顔も、心も、全部が好きだから。エルダと一緒に生きていきたいから」
こんなに強く、側にいてほしいと思える人は、エルダ以外にはいないだろう。その想いを、この言葉に乗せよう。
「俺と、結婚してくれませんか」
……言った。俺の気持ちは、全て。
だから、次は彼女の番。
「……私は、今でも、戦場でユグドの為に戦いたいと思うことがあります。それは、私一人じゃあ、叶いそうもありません。でも、二人なら……マナトさんなら、叶えてくれますか……?」
「それで、エルダの役に立てるなら」
もうとっくに答えは出ていた。
「…………嬉しい。わたしも、マナトさんのことが大好きです!」
その言葉を合図に、俺は彼女の唇にキスをした。軽く触れるだけの小さなキス。
二人の体温が、互いを離すまいといつまでも残っていた。