為すべきこと
「この道をまっすぐ行くと、右側に見えますよ」
「ごめん。付いてこい、なんて言ったくせに道が分からないなんて……」
「仕方ありませんよ。まだ、来て日も浅いんですから」
今日向かっているのは《ユグド魔力研究所》。初めてこの世界にやって来た時、バルドに連れられて来たところだ。
……いつかはちゃんと戻って来なきゃと思っていたんだ。怒られるだろうけど、しっかり謝って、そしてあの双子のことを聞かなくちゃ。
エルダと並んで歩いていくと、見覚えのある景色が見えてくる。
そして、研究所の前に白衣を着た男性が立っていた。
「やあ、勇者くん。二日ぶりだね〜」
ひょろりとした長身にのんびりとした喋り方、間違いない。
「ノドンス先生! あの……」
「まあまあ、とりあえず中に入ろうよ〜。お客さんもたくさんだよ〜」
行き先も告げず逃げてしまったことを謝ろうとするも、先生に背中を押されて、研究所の中へと導かれる。
「今日はこの間とは違うところで話を聞くからね〜」
そう言って、以前入った手術室のような部屋とは違う、豪華な雰囲気の部屋の前まで通された。
「ここは応接室だよ〜。僕的には落ち着かなくて好きじゃないんだけど、今日ばっかりはそうも言ってられなくてね〜。さ、入って入って」
ノドンス先生がドアを開けてくれる。軽くお礼を言いつつ中に入ると、先客がいた。
「マナト、 お久しぶりです! 覚えてますか?」
「バルド! どうしてここに?」
「うむ。元気そうじゃのう、少年」
「ゼウスのジイちゃ……おじいさんまで……」
俺の姿を見ると真っ先に立ち上がって声をかけてくれたバルド。それにユグドの最高神までもが研究所の一室に集まっていた。
「エルダ君が今日こっちに来るって教えてくれたからね〜。みんな君を心配してたんだよ〜?」
ノドンス先生の一言でハッとなる。
そうだ。ちゃんと言わなくちゃ。みんなそのために来てくれたんだ。
一度、静かに深呼吸をする。
「あの、いきなり飛び出して行ったりして、すみませんでした! あの時の俺は自分の事で頭が一杯で、みんなへの迷惑とか全然考えてなかった。でも、今は自分がどうするべきか見えてきたんです! 俺にはユグドを救う力なんてないけど、自分ができる事でユグドの力になりたい。だから、もう一度、チャンスをください!」
……言えた。自分の今の思いをしっかりと。ずっと胸につかえていたものが取れた気分だ。
「よく言った!」
ゼウスが大きな声で言う。
「わしは逃げる事は良い事だと思わない。だが、主は逃げた先でちゃんと自分の為すべきことに気づけた。ならば、最早それは逃げではない」
立ち上がり、しっかりとこちらを見据えるゼウス。
そして破顔。優しい眼差しになる。
「許そう。そして、こちらからもお願いする。今一度、わしらに力を貸して欲しい」
「はい! ありがとうございます!」
深く頭を下げる。
「男子三日会わざれば、とはよく言ったものじゃ。もっとも、二日しか経っていないが。少年も男の顔になってきたのう。のう、バルドよ」
「ええ、どこか雰囲気が変わったような気がします。逞しくなった、と言いましょうか」
ゼウスとバルドの二人に褒められると、嬉しいな。これからは、期待に応えられるように頑張らなくちゃ。
「そちらのお嬢さんは……エルダ、と言ったかのう。君の存在も、少年の心に少なからず影響しておるようじゃ」
「いえ、わたしなんかは……」
「はい。彼女は俺にとって、かけがえのない人です」
エルダの言葉を遮って、ゼウスにはっきりと伝える。
「そうか。良き相手に巡り会えたのじゃな」
ゼウスから包み込むような優しさを感じる。これが、神様の頂点に立つ器なのか……。
「さあさあ、勇者君もエルダ君も座って座って〜。今日は話があって来たんだよね〜?」
先生に促され、ゼウス・バルド・ノドンス先生とテーブルを囲む。俺の隣にはエルダが座っている。
「ほう? それはわしらも聞いていいものなのかのう?」
「はい。是非お願いします」
神様のトップに聞いてもらえるのはこちらとしても有り難い。
「実は……」