二人の朝
「き、君たちは一体、誰……?」
突然現れた二人の女の子。あまりの出来事に動揺が隠せない。
「「あたしたちはパパの娘だよ!」」
「娘⁉︎ ……いやいや、そんな訳ないでしょ」
子どもどころか、俺とエルダは恋人って訳でもないんだし。
「あー! 信じてないんだ?」「パパ、さいてー!」
ぐっ…………。そうは言っても、やっぱり俺に娘なんているはずが……。
「あたしたちの顔をよく見てよ〜」「ママにそっくりでしょ?」
確かにエルダの面影がある。それに、この子たちはエルダの身体から発せられた光の中から出てきた。
「もしかして、本当に……? ううっ……頭が、急に痛く……」
まさかと思ったその瞬間、激しい頭痛が襲ってきた。
「あーあ、もうお別れかー……。もっとお話したかったのにー!」「パパ、次に会うときはもっと強くなっててね!」
だんだんと強くなる痛みに、頭を押さえてうずくまる。
「ま……って」
あぁ……意識が…………遠く………………
「ばいばい、パパ!」「ママにもよろしく!」
その声を聞いたことを最後に、俺の意識は夜に溶けていった。
「…………さん。マナトさん。起きてください」
つんつん。
「そろそろ起きてくださいよ〜。私、この体勢はちょっと恥ずかしいです……」
つんつんつん。
「ううん、分かった……起きる……」
なんだかいつもより頭が重い……
自らの眠気を覚ますためにモゾモゾと手足を動かす。
「ひゃっ…………マナト、さん……そんなとこ、さわっちゃ……ぃやぁ……」
ぎゅぅぅう。
一緒に寝ていたエルダが俺の服を強く握りしめた。より密着する体勢になったため、彼女の顔が近くにある。
ああ、いい匂いがする……。なんか柔らかいし……。
……ん? 柔らかい?
「…………ぁんっ………………」
エルダが小さく身じろぎする。まさか、これって……
「マナトさん、えっちです……」
目の前の彼女を見ると、耳まで真っ赤になって小さくなっている。
そして俺の右手は……。
「ごごごご、ごめんなさいでしたーーー!!!」
一気に眠気が吹き飛んだ。
彼女の身体を離してベットから飛び降りる。
俺の一日は、床の上で土下座をかましながら始まっていくのだった。
「…………」
「…………」
き、気まずいーーーーー!!
テーブルで向かい合うように座る俺たち。互いに相手の顔を見ることはできず、沈黙が朝の食卓を支配していた。
「あの〜、エルダ……さん?」
「ひゃいっっ!?」
静寂に耐えかね声をかけると、とても上ずった返事が返ってくる。あんなことしてしまった後だ、警戒されても無理ないか……。
「エルダ。ご、ごめんっ!」
「ええっ? どうしてマナトさんが謝るんですか……?」
「何でって、そりゃあ……エルダの身体、触っちゃったし……」
「そ、それは確かに恥ずかしかったですが、謝らないといけないのは私の方です。私が昨日、あんなこと言っちゃったから……マナトさんに、迷惑かけてしまったんじゃないかって……」
どうしてそんなこと思うんだろう?
俺はエルダの頼みだったら、こっちから頭下げてでも聞きたいくらいだ。
「迷惑だなんて、そんなことある訳ないよ! それに、昨日のエルダはとっても可愛い……ってそうだよ! 昨日の夜! エルダは覚えてない? あの双子たち!」
「双子? すみません、昨日はいつの間にか眠ってしまったみたいで……」
エルダは覚えてないか……。でも、昨晩の出来事は絶対に夢なんかじゃない。
このことを確かめるにはどうしたらいい?
どこか話を聞けそうなところ……。そうだ、一つだけ知ってるじゃないか。
「エルダ、今日は行きたいところがあるんだけど、付いて来てくれない?」




