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双子!?

「おー! 賑わってるなー!」

「すごいですよね! 私はここに来るたびにワクワクします!」

俺とエルダはその後、ユグドで一番大きなケレス市場に買い物にきていた。

当初の予定通り、俺がエルダの家に住ませてもらう際に必要なものを買うためだ。

開けた大通りに、たくさんの屋台、忙しなく行き交う人々。その全てが、地球のそれとはスケールが違った。

「八百屋に、魚屋、肉屋……エルダの作ってくれた料理もそうだったけど、食べ物は地球のと変わらないんだな」

俺がお上りさんのようにあちこち見回しながら歩くのを、エルダは隣を歩きながら、ニコニコと見ている。

そうしているうちに、よそ見をしていたためか、エルダが横を通る人とぶつかりそうになる。

「あ、ほら、ちゃんと前を見て歩かないと危ないぞ?」

「ごめんなさい。でも楽しくって、つい」

俺が注意すると、ぺろっと小さく舌を出して恥ずかしそうに笑う。

年はほとんど変わらなく見えるのに、彼女の仕草は小さな女の子のようだ。

でもこのままじゃ、またぶつかってしまうかもしれないな……。それなら……

「エルダ。手、繋ごうか」

俺はドキドキしながら彼女の手を取った。

戦の女神のものとは思えないほど、柔らかくて小さな手。触れるだけで身体が熱くなる。

「あ……」

エルダが小さく息をもらす。

今迄はしゃいでいた彼女が、急に大人しくなった。

「……あったかい」

「え? そ、そうかな?」

うわ、緊張してるからかな……。思わず、繋いでいない方の手を頬に当てて確かめてしまう。

一人で勝手に焦っている俺をよそに、エルダは繋いだ手を両手で包むように握った。

「エ、エルダ? どうしたの……?」

「わかりません……。でも、ちょっとだけ、こうしててもいいですか?」

「いい……けど……」

好きな子に手を握られて嬉しくない訳はない。ただ、これは恥ずかしいぞ……。

俺たちがこうしている間にもすぐ横をたくさんの人が通っていく。

「あのー、お兄さん達? 仲がいいのはいい事だけど、お店の前ではちょっと……ねぇ?」

服屋の売り子をしていたお姉さんが、苦笑いを浮かべながら話しかけてきた。

「ご、ごめんなさい〜〜!」

あまりの恥ずかしさにエルダの手を引いて市場の端まで逃げてきてしまった。

見られてるのはわかってたけど、声に出して注意されると……。エルダも顔が真っ赤だ。

「マナトさん、手……ありがとうございました」

「あ、あぁ……もういいの?」

「はい。 もう大丈夫です……」

エルダの手が離れたことで、少しだけ寂しさを感じる。

「そろそろ、買い物を再開しましょう」

「そうだね。まだほとんど見てないし」

ゆっくりと来た道へ向かうエルダの後について、俺も歩き出した。

そして、必要なものもあと一つだけになった時……

「うん……まあ、そうだよね。俺たち、着替えを買いに来たんだもんね……」

俺とエルダは、先ほど手を握っていて注意された店の前に戻ってきていた。

そういやこのお店、服屋だったよな……。

「あら、あなた達は……」

売り子のお姉さんも、バッチリ働いてらっしゃる。

「どうも、さっきはお騒がせしました」

「いいのよ、今度はお店を見に来てくれたんでしょ? ゆっくり見て行ってね」

お姉さんの視線の背中に感じながら、なんとか買い物を終えることができた。


「ふーっ、疲れたー!」

新品の寝間着に着替えてベットに倒れ込む。

「こっちの世界に来てから一日がずっと長く感じるな……」

こうやって、充実した生活ができるのも全部エルダのおかげだ。俺も早く彼女の力になれる事を見つけなくちゃ。

「あの〜、マナトさん? まだ起きてますか?」

ドアがノックされ、エルダに呼ばれる。

「うん、起きてるよ」

「ちょっとだけ、お部屋に入れてもらってもいいですか?」

改まって、何の用だろう?

「もちろん大丈夫だよ」

お邪魔します、とパジャマ姿のエルダがやってきた。心なしか顔が赤いようだけど……。

「マナトさん。お願いです……私を、抱いてください」

「え? ……えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーー!!!」

「どうしたんですか? 早く……」

「ちょっと待って! ちょっと待って!」

抱くって⁉︎ 抱くってやっぱりそうゆう事⁉︎

「マナトさん、早く、私をぎゅってしてください……」

あ、そっちね……。そうだよね。だって俺、そうゆうのは教えてないしね。

……って、そんな場合じゃない!

「私、今日市場でマナトさんと手を繋いでから、ずっと胸の奥がポカポカして、キューってなって……。今だって、ずっとマナトさんのことばかり考えちゃって……。だから、お願いします…………マナトさん……」

「わ、分かったよ……ぎゅってすればいいんだね?」

「はい……」

俺はエルダの言う通りに、彼女の細くて柔らかな身体を強く抱きしめた。

「あ……」

エルダが小さく息を吐く。すると、彼女の身体が光り始めた。

「これ、どう言うことだ……?」

驚きに目を見開く。

どうして? 何がどうなって、こんな……?

エルダの体から発せられた光は次第に収束し、そこから二つの光の玉が現れる。

そして二つの光が弾けると、中から小学生くらいの女の子が二人、ベットの上に降りてきた。

女の子達は俺とエルダを交互に見回して言う。

「「初めまして! パパ、ママ!」」


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