一緒にいたい
「俺と、結婚してくれませんか」
告げた瞬間、時が止まった。……ような気がした。
ああ……言っちまった。でも、後悔はない。勢いに任せた告白だけど、気持ちに嘘はないから。
「……結婚…………」
エルダは未だ何を言われたのか理解していない様子で、きょとんとしている。
あまりに突然の出来事で処理が追いついていないのだろうか。
冷静になって考えてみると、会って一日しか経ってないのにプロポーズって……。俺、やっちまったか......?
いろんな意味でドキドキしながら彼女の顔を見る。
「あの……結婚って、何でしょうか?」
………………ん?
いや、落ち着け。この流れで哲学的な話はしないだろう。
「えっと? どういう意味?」
今度は俺の方も処理が追いつかなくなってきた。
すみません、言葉が足りませんでしたとエルダが続ける。
「マナトさん。結婚って、初めて聞く言葉なんですが……どういった意味なんですか?」
……俺は夢でも見ているのだろうか。
「…………マジで言ってる......?」
「はい。マジです」
……おおぅ。
しかし、一体なぜだ⁉︎ この世界の情操教育はどうなってるんだ!
ユグド側に問題があるのか、それとも単にエルダが純粋なのか。……頼むから誰か教えてくれ。
「ねぇ、エルダ。知り合いの中に夫婦の神様とかはいないの? ほら、例えば……」
言いかけて、ふと思い出す。
そういえばバルドが、“神様は子孫を残すことができない”って言ってた気がする。
そもそもこの世界には、結婚という概念が存在しないんじゃないか?
だったらエルダが知らないのも理解できる。
「あの、どうかしましたか? 差し支えないようだったら是非、その結婚というのについて教えて欲しいです!」
「うん……そうだね……」
好奇心で目を輝かせているエルダ。
告白してしまった手前、逃げることはできず、彼女に結婚とはなにかを説くことになってしまった。
ほんの数分前までの真剣な雰囲気はどこへ行ってしまったんだ……。
会話のテンションの変化の激しさに心の中で愚痴をいいつつ、エルダに当たり障りのない程度に説明し終える。
すると、彼女は何かに納得したようで......
「好きっていうのはよくわからないですけど、でもマナトさんとは一緒にいたいです!」
と笑顔で話してくれた。
これも、彼女なりに考えて出してくれた答えだろう。
「ありがとう。それで十分だよ」
俺の人生初の告白は予想外の展開で、期待していた答えとはちょっと違うけど......。
エルダの、俺と一緒にいたいというその一言が、たまらなく嬉しかった。
「マナトさん。私と一緒にお買い物、行きましょう!」
本当に優しい子だよな、こんな俺に良くしてくれるなんて。
いつか、返せるといいな……
「よろしく頼むよ」
「はい! 頼まれました!」