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力比べ


「出た! あいつが門番よ!」

門まであと数メートルという所まで迫った前衛チームから声が上がる。

その巨大な門が開くにつれて、中から筋肉の発達した巨躯のバケモノが姿を現した。

「ついに始まったな……」

身体中に緊張が走る。

自分の出番はまだだと知っていても、つい身構えてしまう。

「ウチは対魔族部隊V班の特攻隊長のベルガ! アンタとウチで力比べといこうか!」

ベルガさんが門番の前に躍り出て名乗りを上げた。

すると、言語を理解しているのかは分からないが、門番もウオオォォォと呻く。

ベルガさんが口の端をニッと釣り上げる。

「いいねぇ! 燃えてきたわ!」

その瞬間、大地が震えた。

ベルガさんが加速のために地面を蹴ったからだ。

「食らえええぇぇぇぇぇぁ!!!」

彼女が門番の反応よりも早く、手に持ったハルバードで斬りつける。

斬った足からは鮮血が吹噴き出した。

ぐらり、と門番の体勢が崩れる。

すかさずベルガさんはハルバードを構え直し、続けて斬りかかった。

「おりゃあ! どりゃあ!」

肉を裂き、骨が砕ける音がこちらまで聞こえてくる。

グオオォォ……

息つく暇ない斬撃が効いているのだろう。

門番は苦しそうに鳴いている。

「ベルガの相手はかわいそうね。ああも体格が良くちゃ、あの脳筋の大振りでも難なく当たるわ」

俺の隣でクフレが呟く。

その顔にはただただ門番への憐れみの感情だけがあった。

再びベルガさんへと視線を戻す。

すると、攻撃を受け続けた門番の足が無惨にも斬り落とされてしまっていた。

「……ふう。やっぱタフだね、アンタ。でもこれでウチの勝ちだ!」

力無く地面に横たわった身体に、ベルガさんが最後の一撃を加える。

オオオォォ……ォ……

短い断末魔を残して、門番は力尽きていった。

「さすがベルガです! では、この隙に中へ進入しますよ!」

フィヨルさんの指示に全員で返事をする。

そして、そのまま進軍を再開した。

「やー! 気持ちよかったわー! マナト、ちゃんと見ててくれた?」

真っ向勝負でバケモノに勝利したベルガさんが、休憩のために下がってきた。

彼女はいつになくツヤツヤした表情で笑う。

「はい、さすがのパワーですね!」

「う、うん……でも、もうちょっと褒めるとこあるんじゃない?」

なんだかモジモジして言う。

ベルガさんはどんな答えが欲しいのだろうか?

返事に困っていると、クフレがやって来た。

「あんたはガチムチなんだから、素直に喜びなさいよ」

「うわっ、クフレ! 誰がガチムチだって⁉︎」

また始まったよ……。

でも、俺には聞こえてしまった。

「ベルガには負けてられない……」

とクフレが小さく呟いたのが。

……そして、俺たちはついに魔領デミスへと足を踏み入れた。

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