初訓練!
「あら? マナトさんとクフレちゃん、お帰りなさい」
「大丈夫でしたか? マナトさん」
クフレを連れて演習場に戻ると、フィヨルさんとエルダが待ってくれていた。
そこに駆け足で戻る。
「班長、ただいま戻りました。エルダも、待っててくれてありがとう」
「ありがとうございます。心配かけてしまってすみませんでした」
俺がお礼をいうと、続いてクフレも礼儀正しく頭を下げて謝る。
その顔は先ほどまでの曇った表情ではなくなっていた。
「いいのよ。クフレちゃんは若いんだからいっぱい悩みなさい。私も先輩達には、いっぱい迷惑かけたもの」
そう言って笑顔で受け入れてくれた。
フィヨルさん、大人だ。元の世界でも、こんなお姉ちゃんが欲しい。
「でも、何事もなかったみたいで安心したわ。そろそろ午後の訓練が始まるけど、大丈夫ですか?」
「ああ、それなら大丈夫です。クフレに少し教えてもらいましたから」
俺が言うとフィヨルさんは、ふふふと上品に笑った。
「なんだか、前よりもずっと仲良くなったみたい。羨ましいわ〜」
「そうですね。さっき友達になりました!」
「えっ! マナトさん、クフレさんとお友達になったんですか? 私もクフレさんとお友達になりたいです!」
俺の話を聞いて、エルダもクフレの友達に立候補する。
「あ、アタシは……別に構わないけど……」
口調こそ素っ気ないが、口元が緩んでいるのがバレバレだった。
「じゃあ決まりですっ! よろしくお願いしますね!」
了解を得られたエルダはとっても嬉しそうで、いつも以上にニコニコしている。
すると、クフレが俺の袖を引く。耳を貸せ、ということらしい。
「マナト、あんたのパートナー? すっごく可愛いわね! 私にくれない?」
「面白い冗談だな」
こんな軽口が言いあえるくらいには、仲良くなれたってことでいいよな?。
しばらくして、いつもの事務員用の制服から、軍服に着替えたバルドが演習場にやってきた。
「V班、全員集まっていますか」
バルドがフィヨル班長に目配せする。
「結構。では、訓練を始めます。今日は新しいメンバーがいるみたいですので、軽い実践形式での訓練にしようと思います」
いつもはゼウスのジイさんの部下として会っていたバルドが、今は俺の上官として目の前にいる。不思議な感覚だ。
「それでは、ツーマンセルでの実践を行いますのでペアを作ってください」
すると、班の子達は次々と仲良し同士でペアを作っていた。
フィヨル班長はやっぱりと言うか、人気があるようで四、五人くらいが周りに集まっていた。
そんな中、一人でぽつんと立っている少女、クフレを見つける。
「よっ! ペアは決まった?」
「……あんた、バカにしてる?」
ちょっとした冗談だったのに睨まれちゃった。どうやら、地雷を踏んだらしい。
「まだなんだったら俺と組もうよ。誰も誘ってくれなくてね」
謝るジェスチャーをしながら、押し付けがましくないよう意識して誘ってみる。
「……ありがと」
目を合わせてはくれなかったが、ギリギリ聞こえるくらいの声量で呟く。
……こいつのこういうとこ、可愛いと思うんだけどな。
クフレの目標を達成するためにも、俺に頼ってばかりじゃダメだ。積極的にメンバーと関わっていけるようにならないと。
「これから、少しづつ頑張ろうな」
「あんたに言われなくても分かってるわよ」
こうして、クフレ、マナトペアwithエルダチームが結成された。
しばらく待っていると、再びバルドから号令がかかる。
「注目! 全員、ペアは組み終わったようですので、次に呼ばれたペアは前に出てきてください。まず一組目はフィヨル、ベルガペア」
さっそく班長のいるペアが名前を呼ばれる。相方のベルガって子はよく知らないけど、凛とした雰囲気の綺麗な子だ。
「続いてもう一組は」
そこでバルドと目があった。嫌な予感。
「マナト、クフレペア。前に来てください」
あちゃー、いきなり班長と試合か。
……もしかしなくても、バルドがわざと仕組んだよな。
「よろしくお願いしますね。マナトさん、クフレちゃん。手加減はしませんから」
フィヨルさんも戦闘モードだ。気を引き締めていこう。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
お互いに挨拶をして、定位置につく。
「相手は強敵よ。注意していくわよ」
「おう!」
「わかりました!」
フィールドから他のメンバーがいなくなったのを確認して、バルドが笛を鳴らす。
「両チーム、状況開始!」




