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決闘よ!


「……え? 今なんて?」

「何って、決闘よ。ケットウ! 知らないの?」

「そういう言葉は知ってる。でも、何で俺は初対面の女の子に決闘を申し込まれているんだ?」

「なんでも何も無いの! とにかく、アタシはあんたを倒したいの!」

理不尽すぎる!

「いいんじゃないかしら」

ニコニコした表情でフィヨルさんが言う。

「私もマナトさんの実力には興味がありますから。でも、決闘ではなく練習試合という形で、ですけど」

「アタシはそれでも構いません」

「俺は構います!」

なに勝手に戦う流れを作ってるんだ。配属初日からもうこれ以上やらかしたくないのに……。

「アタシと戦うのが恐いの?」

上から目線で挑発してくるクフレ。

なんでこんなに突っかかってくるんだ? どっかで会ったって訳でもないし。

「……エルダ、どうしよう?」

エルダに助けを求める。

「わたしも初めて会う子なので……。でも、練習試合でしたら、一度くらいなら試運転には丁度いいと思いますよ?」

うーん。まあ、エルダもこう言ってるし、いいか。でもこのままじゃ、挑発に乗せられたみたいで嫌だから……。

「分かった。練習試合ならやってもいいよ」

「ホント⁉︎」

おもちゃを貰った子どもみたいに目をキラキラさせるクフレ。

「ただし、俺が勝ったら何か一つ言うことを聞いてもらう。もちろん、そっちが勝ったら俺も何か一つ言うことを聞く。それでどう?」

「いいわ。そっちもそんなこと言って、負けた時にナシとか言わないでね!」

「決まりみたいですね。では演習場に行きましょう」

そう言うと、全員に転移魔法をかけるフィヨルさん。

……この人もなんで俺とクフレを戦わせようとしたんだろう。なにを考えてるんだろうな。

そして、演習場に全員が転移すると、当事者の俺とエルダ、クフレ以外には審判をするフィヨルさんだけがフィールドに残った。

「それでは、準備は出来ましたか?」

「あ、その前に一つ」

試合をするにあたって、言っておかなければならないことがある。

「あの、俺の力ってエルダがいないと使えないものなので、彼女と一緒に戦うって事でいいですよね?」

「はい。私の方も、エルダちゃんはマナトさんの武器的な扱いで特別に軍に配属させたと聞いていますので、問題ありませんよ」

「わたしもマナトさんの武器になれるなら、問題ありませんよ」

エルダが変な事を言いだしてしまったので、試合を始めたい。

「それでは今度こそ始めますよ」

俺とクフレが同時に頷く。

「試合開始!」


結果から言って、俺の圧勝だった。

例のごとく、エルダの身体を媒介としてライテとリンデ呼ぶ。そしてベリトの時と同じく目にも留まらぬ速さで無力化。

一瞬で片が付いてしまった。

観客席からは班のメンバー達から賞賛の声が聞こえてくる。

しかし、目の前で地面に座り込んでいたクフレは居たたまれなくなったのか、どこかへ走り去ってしまう。

「マナトさん。あの子を追いかけてあげてくれませんか?」

フィヨルさんが俺に声をかける。

「でも……」

俺が行ったとしても、彼女のプライドを傷つけてしまうだけじゃないか。そんな風に思ってしまう。

「行ってあげてください、マナトさん」

「エルダ……」

「わたし、なんだかあの子の気持ちが分かる気がします。今、クフレさんにはマナトさんの力が必要だと思うんです。だから、ね?」

「……分かった。行ってくるね、エルダ」

「はい。待ってますね」

エルダの笑顔に見送られて、俺はクフレの後を追って走りだした。

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