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終末のイストリア  作者: 狗賓
再会の章
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第38話 嵐の前触れ

 久しぶりの投稿!

 お待たせして申し訳ありません……。

 夕方。

 今だ興奮が冷めやらぬ中、アスティオたち一同は宿に集まっていた。裏通りに面した安宿は2部屋取るのがやっとだったため、男女で別れて泊まることとなった。


「すごいっすね~!王都の祭りは、やっぱ他んとことは大違いっす」

「……シフォンは、他の都市の祭りも行ったことがあるの……?」

「えぇまぁ、といっても故郷の方とウレオの祭りだけっすけどねぇ」

 シフォンの故郷のポッピィは、農業が全ての中心となる都市だ。故に豊かな稔りと、自然への敬意を意味する【恵みの祭り】は重要視されそれなりに盛り上がっていた……はずだ。

 だが、アスティオはシフォンには故郷の記憶があまりないことを知っている。

 シフォンは……とある理由で長い間家に引きこもり、やっと出られるようになった後は周囲に冷遇されていた。そして、シフォンは自ら故郷を離れ、軍事都市・ウレオへと移ったのだ。

 そのウレオでは祭事は兵士の見せ場として扱われていた。故にいわゆる子供が喜びそうな屋台などは必要最小限に留まる。

 今、懐かしそうに目を細める少年の中で思い出されているのは、はたしてどちらの祭りだろうか──。

「……ちっさい頃、父さんに手ぇ繋がれて屋台を回ったんす。

 そのとき、お花の飴細工のついたキレイなお菓子があって、母さんに見せたくて買ってくれってワガママいったんすよ、オレ。ちょっと高いものだったんすけどね。

 そしたら、いつもは『高いもんはダメだ』って言う父さんが、『仕方ないなぁ』って笑って買ってくれたっす。懐かしいなぁ」

 シフォンはアスティオの心を知ってか知らずか、そうポツリと溢した。

 そういえば、昼間に歩いた通りでシフォンの視線がとある屋台に釘づけになっていた。

 あれは確か普通の飴屋だった気がするが、もしかしたらシフォンはその思い出と重ねていたのかもしれない。

 その事に思い至り、アスティオはフッと笑みを浮かべた。──普段、シフォンはこの手の話をしてくれないので、純粋に嬉しかった。

「──……さて、と。……僕、少し出掛けてくる……」

「【精霊(ガレス)】様のところっすか?王都の周りに森なんて……」

「……森じゃなくても、彼らはいるよ?」

 シフォンの言葉にアスティオは首を傾げる。



 アスティオと共にいると忘れられがちだが、普通【精霊】は人間を含むあらゆる生き物に対し不干渉を貫く存在だ。

 彼らは自らが()であるが故に、強すぎる光──陽の元に出ることができない。他の動物の姿をとれば多少の耐性はつくが、その本質が基本は影の中を好む性質(たち)であることにはかわりない。

 【精霊】の多くが森にいるのは、森は影も闇も多い上、基本的に人々の中で“不可侵”という思想が根強いため、人の訪れが少ないからだ。

 つまり、裏を返せば少ないものの町中に【精霊】がいることはありうる。

 それに加えてアスティオは、さっきから何度も【精霊】の気配を感じていた。

 王都は【明かりの絶えない都市】である商業都市・パーレダス並みに照明技術が充実しているのにも関わらず、街中の【精霊】が思いの外多いのだ。

 ……ほとんどは、動物形態をとっていたが。

「分かったっす。……夜明け前には帰ってくるんすよ?あと、迷子になったら、近くの人──出来れば若い女性、健康そうな──にこの宿の名前を出してくださいっす」

 いいっすね?と、シフォンに言われ、アスティオはそんなに信頼がないのかと、半ば落ち込みながら部屋を出ていった。……本当に今更な話である。




「……うん、いい所だ。大気も……他の都市より綺麗で、何故か居心地もいい……」

 アスティオは結局、宿屋が視界に入る距離の裏路地で【精霊】と会っていた。

 目の前にいるのはどう見ても普通のハツカネズミや、白い小鳥たちだった。

 ……幸い、周囲に人はいないので“動物に話しかける寂しい(もしくは残念な)青年”の図は見られていない。

 【精霊】──いや、小動物たちはアスティオに群がり積極的に話しかけていた。

 彼ら曰く、この都市に【精霊】が多いのはドラグレイナ様の影響である。と。

 彼女が発する気配、または雰囲気といったものが【精霊】に近く、馴染みやすいのだという。そして、それはアスティオにも似ていると。

 

「……そう、なんだ。……ありがとう……」


 アスティオは微かに笑みを浮かべた。











「────どうでした?」

 祭りの明かりから外れた、王都のどこかの路地裏。

 青年──ノヴォルーニエの前には、白い猫がいた。昼間に彼が別れた例の猫である。……が、その瞳の色は儚げな水色から、荘厳で重厚感のある黄金に変わっていた。

 そして、白猫は語りだす。


「……あの人たちの計画は、もう、始まっている。残念ながら、阻止は出来なかった。

 それと、あの子が間に合わなかったのは……たぶん、私のせい。

 だから、やるしか、ない────私が」


 優しくて、強い少女の声。

 主語の抜けた言葉には、それでも確かな力が籠っていて、聞く者にその人物の覚悟の度合いを伺わせる。

「……貴女の覚悟なら、充分に理解しているつもりです。ですが、出来ることなら貴女にも生きていてほしいのです。

 自分に出来ることはあまりにも少ない。だからこそ──アス」

 ノヴォルーニエが続けようとした言葉は、突如吹いた風により掻き消された。驚いて視線をくれると、白猫を中心に強い風が渦巻いている。

「……それ以上は、言わないで」

「ここに来て覚悟が揺らいでるのですか」

「違っ……いえ、その通りね。

 私はあの子を使う(・・)のが嫌なのよ……」

 目に見えてシュンとしてしまった白猫を見て、ノヴォルーニエは僅かにたしろぐ。その間、白猫はノヴォルーニエを射貫くかようにじっと見つめた。やがて、降参したように首を振った。


「了解、します────フィルシェリア殿」


 フィルシェリアと呼ばれた猫は、そう言われると困ったように顔を洗い始めた。

 やはり次回更新は未定です。


 なるはやで更新できるよう精進します……。

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