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終末のイストリア  作者: 狗賓
帰郷の章
32/43

第28話 急変

 しばらくgdgdが続きそうです……。

 そして、指が痛い(泣)

「はへー……そんなものがねぇ」

 イレミアはシフォンが手にしたしおりをピンッと弾いた。アリスはまじまじとそれを見つめ、首を傾げた。

「ただの飾り……と言うには不思議な紋様が付いてますわね。まるで──」


「────……鍵?」


 アリスの言葉を引き継いだのは、意外にもアスティオだった。

 シフォンからそれを受け取ると、部屋の明かりの下でじっくりと眺めた。

 見覚えのある、鎖状紋。

 それが蛇のように巻きつき、複雑な絵柄を作っていた。

 アスティオは僅かに顔を引きらせ、背中に冷や汗を感じながら慎重に詠唱を始めた。

「マギィ・ツァイト・フェアガンゲンハイト・ゼーエン。過去よ、我が前にその姿を──」


──やめて、アスティオ!


「……っ!?」

 最後まで言い切る前に、脳裏をその言葉が掠めていった。その弾みに、発動しかけていた魔法も溶けるように消えていく。

 それと同時にチリッと焼けるような痛みが左腕を走った。

「ア、アニキ……その、腕は……?」

 驚愕の表情を浮かべたシフォンの視線の先を追うと、左腕に火の渦が巻きついていた。

 決して熱さは感じないが、赤黒く妖しく輝くそれは、どこの誰が見ても異常だと分かる。

「……こ、こここ、これっ!……い、一体、どうしたら……!?」

 気づいたアスティオは慌てふためき、腕を振り回す。それを見かねたディクシアが机の上に乗せてあった水差しに気がつき、素早く水をかけた。だが、火の勢いは全く変わらず不気味に燃え続ける。

「う、うぁ……ア、タマ……痛い……」

 禍々しいその火に魅入られたイレミアは、頭を抱えて膝をついた。

「ひ、姫様……!」

 駆け寄ったアリスも平静な振りをしているようで、額から汗が吹き出していた。

「こんなの、どうしたら……」

 フラフラとその場に座り込んだアスティオを見つめ、困惑したシフォンは動けずにいた。


「全員離れろ」


 低く冷たい、男の声。

 場を圧倒するその存在に、全員が書斎の扉を振り返った。

「……シグ兄さん、キオ姉さん……!」

「待ってろ、今俺たちが何とかしてやる」

 昨日とは別人のような張りつめた気配に、一同は身を竦ませた。キオナティの手には薬箱、そしてシグラスは魔導書と古びた杖を持っていた。

「姉さん、あれを」

「分かってる」

 キオナティは薬箱の蓋の裏から小瓶を取り出すと、シグラス手渡す。中の液体は一見すると普通の水のようだが、魔法使いではないシフォンやイレミアにも分かるほど高濃度の魔力がこめられていた。

シグラスは瓶の蓋を開け杖に魔力を籠めると、ほんの1滴だけ取り出した。

「さて、始めるぞ」

 ゆっくりと目を閉じると、書斎に魔力を解放した。瞬間、空気が震え、凍えるような冷気が漂い始める。

 そして、その魔力に反応するように魔導書がひとりでにパラパラ捲れ、とあるページでピッと止まり、そのまま千切れた。

「……我、この力を用いて、場を支配し得る者なり。その者に蔓延る悪しき流れよ、我が力の前にひれ伏せ」

 詠唱を進めるにつれアスティオを中心に魔方陣が現れ、場にある魔力がアスティオに──正確にはその左腕に──集束していく。

「……っつうぅ!」

 アスティオは少しずつ顔色が悪くなり、左腕を抑えながら身を捩る。苦しげに表情を歪め、全身から溢れる汗で足元に水溜まりが出来ていた。

(……アニキ!)

 シフォンはシグラスの後ろから見ていることしかできない自分が悔しくて仕方なかった。

 アスティオを守るのは、自分だと自負していたのに……。

「大丈夫よ、シフォン君」

 キオナティは落ち込むシフォンの頭をくしゃりと撫でる。まるで子犬を撫でるように優しく、包み込むような手つきで撫で続ける。

「シグが何とかするって言ったから、大丈夫」

 キオナティの目は、まっすぐと弟たちの方に向いていた。


「マギィ・ヴァッサ・ズィーゲル!炎よ、鎮まれ!!」


 最後の詠唱に反応し、空中にポツリと浮いていた水滴が増幅する。渦を巻くように膨らんでいき、最後には人ひとり呑み込める大きさまで膨れ上がるとアスティオの元で弾けた。

「……うわぁ!」

 弾けた水は反射的に左手で避ける仕草をしたアスティオの全身に盛大に当たり、その瞬間に火はじゅうぅと音を立てて消えた。

「あーっ!しんどかったぁ……」

 それを見届けたシグラスはその場にどかっと腰を下ろすと、乾いた声で力なく笑った。よく見ると、その顔にはじんわりと疲労が滲み出ている。

「アスティ、腕見せて。その次にシグもね」

 キオナティは薬箱をもってアスティオの元に駆け寄ると、有無を言わさず左腕を捲り上げた。そこには赤々と鎖状紋が浮かんでいる。

「えーと……少し熱を持ってるからこの薬液とこれをかけて、それから包帯を巻けばいいかな」

 キオナティはテキパキとアスティオの腕の治療を終えると、今度はシグラスの右足首を診る。そこにも、アスティオと同じような……それよりも色の薄い紋様があった。

「これならこの軟膏を塗って包帯を巻けばいいね。……うん、終わり」

 あっという間にすべての作業を終えると、キオナティは水を取りにパタパタと書斎を出ていった。

 危険が去ったことを確認すると、シフォンはそろりとアスティオのもとへ歩いていった。

「……アニキ。もう、大丈夫……っすか?」

「…………あぁ、大丈夫だ。……心配させて、すまなかった……」

 アスティオは左腕を庇うように押さえながら、静かに言った。それから、シグラスにお礼を言うために扉の方に振り返ると、呆然としたイレミアと目があった。

「“龍炎紋”を、何で貴方たちが……?」

 イレミアは思わず言葉に出してしまってから慌てて、はっと口を抑えた。しかし二人の従者は、知らなかったようで共に首を傾げていた。

 イレミアは焦点の合わない目でアスティオを見つめ、一歩一歩踏みしめるように歩み寄ると、震える手でアスティオの両手を掴み、握りしめた。

「……いたんだ、本当に。【空の王】に刃向かう、強者つわものが」

 イレミアの様子に動揺した一同は、混乱したまま一人として動くことができなかった。

「……アリス、ディクシア、決めたわ」

 キオナティが戻ってきたのを見とめると、イレミアは立ち上がって宣言した。

「【海の王】第8王子・ ・、イレン=サーレッシャーの名において、我が最重要機密の開示を決行する!尚、異論は認めぬ」



 そこにあったのは、いつもの間抜けなお姫様の姿ではなく。正しく王家の者が持つ威厳と迫力だった。

 次回はできれば水曜日の更新を目指します。

 尚、保証はしかねます……orz

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