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終末のイストリア  作者: 狗賓
帰郷の章
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第21話 キトへの道

 パーレダスを出て数日、一行はキトまで道半ばというところまで達していた。ここまで早く着いたのは、もちろんシフォンの計算のおかげである。その手際に、アリスとディクシアは思わず舌を巻いていた。

「さて、あとはこの山を抜ければキトが見えるっすね」

 そう言ってシフォンが歩き出そうとした、そのとき。


 「……あ」


 突然、一番後ろを歩いていたアスティオが、急に声を上げる。

 それは掠れていた上にとても小さな声だったが、今の今までアスティオは全く一言も言葉を発していなかったので、一同は驚いて振り返った。

 アスティオは注目されたことに若干困った顔をしたが、シフォン達の急かすような視線に押し負け、ポツリと呟く。

「……そっちはダメ。……この時期は、熊が出る」

「え!?」

 シフォンは驚いた。

 今までアスティオが道のりについて口を出したことはなかったし、そもそも地理には疎いと思っていたのだ。

「……キトに行くなら、こっちのが近い。……たぶん、あと1日で着ける」

「……1日っすか!?」

 そう言うとアスティオは山の横を歩き始めた。

 残された者達は、互いにかおを見合わせポカーンとしていたが、だんだんアスティオの姿が遠く離れていくのを見て、渋々といった形でついていった。

 やがて一時間ほど歩くと、アスティオは山の中に入っていき、辺りの草むらを探り始めた。

「……何をしているのですの?」

 20分ほど経った頃、ついにしびれを切らしたアリスがアスティオに声をかけた。ちなみに暇をもてあました他の者達は、あくびをしていたり、地図を見直したり、周辺の雑草をむしってみたりと思い思いに過ごしている。

「……あと、もうちょっ……あ!!」

 アスティオはパッと顔をあげると、自身が見つけたものを見えやすいように少し身体をずらす。

 そこにあったのは人が一人通るのがやっとなほど狭く、深そうな丸い穴だった。

「……さぁ、降りるよ」




「穴の中に、こんなところがあったなんて……」

 一同は穴を通った先にある広い空間を歩いていた。

 アスティオによるとここは鉱山跡地で、少し先には当時荷物を運ぶのに使っていたトロッコがあるらしい……とのことだった。

 それを裏付けるように、しばらくすると足元にレールが現れる。定期的に磨かれているのか、比較的きれいだ。

 上を見上げると一応電気も走っているようで、電球が吊り下げられている。今はアスティオの魔法光で照らしているが、スイッチさえ見つければこっちで照らした方がはるかに明るいだろう。

 アスティオがピタリと立ち止まると、そこには真新しいトロッコが3つ置いてあった。

 なれた手つきで中にはいるとテキパキと点検を始める。

 そこにあったのは普段ののんびり屋でマイペースなアスティオからは想像できない姿。

 シフォンはその様子を、「顎が外れるような」という表現がピッタリと当てはまるほど口をポカンと開けて見ていた。

「……これで、大丈夫」

 アスティオはそう言うと一同を呼び寄せた。

 トロッコは5人で乗るには少々狭く感じたが、無理矢理になら入れなくもない大きさだった。

 アスティオは全員が乗り終えたことを確認すると、手元にあるレバーを思いっきり引っ張る。


 ──ギャリリリリリリリリリリリリリリリリィイイッッ


 突如として響き渡る不快音、アスティオ以外は思わず耳を塞いだ。そして、アスティオはそのタイミングで思い出したようにポツリと呟いた。

「……どっか掴まった方が、いい……かも?」

 しかしそれは誰にも聞かれることはなかった。

 耳を塞いでいた所為もあるが、アスティオが呟いた次の瞬間聞き返すまもなくトロッコは急発進し、いつの間にか下り坂を走っていたからだった。


「ぴいいぃやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ――――っ!!!」


 耳をつんざくような悲鳴が轟く。

 慌ててシフォンが振り返ってみると、アリスとディクシアの前でイレミアが白目を向いて失神していた。

 どうやらよほど怖かったらしい。シフォンはやれやれとため息をついた。

 しばらくすると平坦な道に出て、だんだん速度が落ちてくる。

 シフォンはこの時ようやくアスティオが操作をしているのではなく、自動操縦なのだと気づいた。

 ──カタンカタンッ カタンカタンッ

 前方に小さな光が見え、出口が近い様子が伝わってくる。

「──っ!」

 出口に差し掛かった瞬間、一同はあまりの眩しさに目を瞑る。

 次に目を開けたとき、そこにあったのは大勢の山登り装備の人の姿。皆、アスティオ達を見てポカーンとしていた。

 アスティオ達は浴びる視線に若干の気まずさを感じながらトロッコを降りた。

「……こんにちわ」

 アスティオがそう言って会釈すると、辺りが一気にざわつき始めた。


「おい、こいつ……シグ坊んとこのチビ助じゃねえか?」

「なんだって!?」


 一人がそう言うと、アスティオ達は人に囲まれる。

 その視線の先にいるのはアスティオのみ。当の本人は困ったような表情(かお)でフードを目深に被っていた。そこに、


「どうした?今日はいつも以上にみんな騒がしいな」


 良く通る明朗な声が響く。

 シフォンが声のした方に目を向けると、長めの金髪を後ろで縛ったいかにも好青年と言ったメガネの男が立っていた。

 男の声を聞いたアスティオはサッと後ろを向くと完全に縮こまってしまった。心なしか身体が震えているようだ。

(あの人……どこかで──?)

 シフォンが男の正体を考えていると、近くにいた人集りが男の方へと移動した。

「エフケヴィンさん!丁度良いところに!!」

「あの黒ローブ、あんたんとこの坊主じゃねえか?」

「そうそう!カルさんが連れてきた養い子にそっくりさね!」

「まてまて!一編に話すな、何言ってるか分からん!!……取り敢えず、客人をほったらかすなよ」

 ワーワー元気に叫ぶ人々を見た男は、鬱陶しそうに人集りを散らしながら一同の方へ歩いてきた。

「よくこのルートを知ってたな。お前達は一体……って、ん?」

 一通り人となりを見渡すと、やはり男もアスティオを見て動きを止める。

 やがてツカツカと近づくと至近距離からじっと見つめ続け、ついにはフードを剥がした。


「アスティ……なのか?」

「…………お、お久しぶりです。……シグラス、兄さん」


 しどろもどろになったアスティオが絞り出すように呟く。

 それを見た男は突然アスティオの胸ぐらを掴むと、拳に息を吹きかけて全力で頭にげんこつを叩き込んだ。

 久しぶりに書いたせいで事前に考えてた内容吹っ飛びました……。

 こんな調子で次話が予定通りに更新できるかは分かりませんが、精一杯頑張ります。

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