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終末のイストリア  作者: 狗賓
出会いの章
21/43

買い物珍道中 前編

 今回は以前予告していたコメディパートです!

コメディ……なのか?

 と思われるかもしれませんが、本編よりかは面白おかしくかいたつもりですのでよろしくお願いします!

 ディクシアとの戦いの翌日、シフォンは港の市場の方に来ていた。

 消耗品の買い足しと、看病用の道具の購入のためだ。もちろん、必要経費はあちらさんに払ってもらう。

「ま、待って……」

「待たないっす」

 そして、何故かイレミアも一緒だ。

 正直、このお姫様はかなり目立つので、ついてこないでほしかった。

 だが、アスティオの前ではそんなこと口が裂けても言えない。

 優しいあの人は、自分が言われたわけでもないのに酷く傷付いてしまうだろうから……。

 仕方がないので、絶対に目の届く範囲にいるようにきつく言い聞かせて連れてきた……のだが。


「あ、カワイイ!これいくら!?」

「20アルジーンと50コッペルだよ」


 ……さっきからずっとこの調子である。

 10歩進むかどうかで近くの雑貨屋に入っていってしまうので、なかなか目指すところに辿り着けないのだ。

(護衛の人達、苦労してんすねぇ……)

 ふいに、シフォンの脳裏に赤い髪と白い髪がちらつく。

 自分もアスティオのことでかなり苦労しているつもりだったが、このお姫様(イレミア)と比べれば何だかそれもかわいく思えてくる。

 ため息をついてイレミアの近くに寄ると、そのまま襟首を捕まえ引っ張っていく。

(このままでは日が暮れてしまうっす)

 そう考えたシフォンの英断だった。


 それでも、目的の店の前に着く頃には真っ昼間になっていた。どこからか漂ってきた美味しそうな匂いに、腹がぐうぅっと鳴る。

「……食べる?」

「あんたっすか……」

 振り返るとイレミアがどこで買ったのか、やけに大きなサンドイッチを抱えていた。その内1つをシフォンに向けている。シフォンはもともと他人に遠慮するような性質(たち)ではない、素直に渡されたサンドイッチにかぶりついた。

ふみゃひ(うまい)

 口に入れた瞬間溢れんばかりに広がる肉汁とほのかな酸味、シャキシャキとした葉物野菜が後味をさっぱりとさせているのでクドさもない。大きさの割にとても食べやすかった。

「ふぅ……、これおいしー♪」

 シフォンが食べ終える頃にはイレミアがどこで買ってきたのか分からないが、普通の人なら飲むのをためらうような……そう、例えるなら泥水に藻が生えたような見た目の物体を嬉々とした表情(かお)で飲んでいた。

(もう、いいや。いちいち突っ込むのも疲れたっす……)

 シフォンは一応イレミアから目を離さないように気を付けながら店の中へ入っていった。




「……で、なんすか。この状況は?」

 店を出ると、そこには2メートルはあるだろう強面の男×5と張り合うように背伸びしながら仁王立ちするイレミア、その後ろに庇われるような形で美女が座り込んでいた。



「おうおうおおぅ!そこどきな、ちっこいお嬢ちゃん!!用があんのは後ろの女だけだかんよおぅ」


「るっさい!おっさん達、ほっといたらまたこのおねーさんのこといじめるでしょ!?そんなの許せない!!」


「なんだとぅっ!」


 どうやら痴話喧嘩に首を突っ込んだらしい。

 ここでイレミアの知り合いと公言するのは、はっきり言ってすごくめんどくさい。シフォンは正直自分で何とかしてくれないかな……と、思っていた。

 とは言えここでイレミアの身に何かあると彼女の従者達にはもちろん、アスティオにも怒られかねないので、いつでも助けに行けるよう野次馬の間を(くぐ)り抜けて最前列に入る。少し屈めば簡単に通れるので、こういうときばかりは背が低くて良かったと思う。するとさらに状況がよく見えた。

 ちょうど一人がイレミアに殴りかかっていくところだった。一瞬シフォンは助太刀に入るべきか?と思ったが、イレミアが不敵に笑ったのを見て立ち止まる。

 イレミアは右足を下げるとイノシシのように突進してきた男を紙一重で避けてやり過ごし、相手の勢いを利用してでんぐり返りさせるように背中に手を添え、くるりと転がした。

 男はそのまま近くのごみ箱代わりの樽へと突っ込み、目を回してしまった。


「さ、次はだあれ?」


 軽く構えをとってみせるイレミアを見てシフォンはまだまだ甘いところもあるが、基礎はそこそこできている印象を受けた。

 だが、全体に均等に気を配れてないようだ、背中が完全にお留守だった。


(……やれやれ、とんだ茶番っすね)


 荷物を持ったまま素早く駆け寄ると、シフォンはイレミアの後ろにいた女性の手を思いっきり蹴り上げた。その手に握られていた物はクルクル回転しながらと放物線を描き、近くの八百屋の果物に刺さった。――サバイバルナイフである。


「痛いじゃない!何するのよ!!」


「ナイフ使いとまともに近接戦闘をすんのはバカがやることっす。第一、あんたは殺気と下心が隠しきれてないんすよ。下手くそっす」


「なっ……」


 この女の態度と目線を見れば大体の筋書きが読める。

 つまるところ、この6人はグルで、最初からイレミアの財布を狙っていたのだ。大方、イレミアが男連中と闘っている隙に女が財布を掠めとるつもりだったのだろう。

 こんな場所でさんざん金貨を見せびらかし、物を買い漁っていた報いである。

「レミィ、こんなコソ泥達の相手してる暇なんてないっすよ?さぁ、帰るっす」

 王族であることも考慮して実名を伏せ、適当な名前で声をかけるとイレミアはぽかんとした顔をしながらもしっかりついてきた。

 後ろの方で悲鳴と罵声が響く。

 今頃コソ泥達は、野次馬連中にとっちめられているだろう。それほどに腕っぷしが強そうな輩が数人いた。この都市で不正を働いた者達は皆こうして裁かれるので、憲兵達を呼ぶまでもないのだ。




「さて、何か言うことはないっすか?」

「ご、ごめん…なさい」

 シフォンが若干の嫌悪感を混ぜたような目で睨むと、イレミアは思いの外素直に謝った。それを見て、シフォンは少しため息をついて言おうと思っていたこと――小言はやめた。

 二人は既に中央通りまで戻ってきており、買い物も終わったのであとは宿に戻るだけ。何事も起こらなければ、日暮れ前には宿に着く。

 ……そう、なにも起こらなければ。


「あら?イレミア様にシフォン殿、随分とお時間がかかりましたね」


 目の前にいつの間にか人(だか)りが現れ、そこから声がかかる。名指しで呼ばれたせいか、集団の視線がすべてこちらに向いた。

 この声は……


「あ、アリス!今日もモテモテだね!!」


 よくみると集まった人々の中心には赤い髪が見える。男女比はほぼ半々、ほんの僅かに男の方が多いだろうか?

「お褒めに預かり、光栄ですわ」

 アリスがニコリと微笑むと、近くにいた一人が嬉しそうに涙を流した。その隣では別の女性が気絶している。

 シフォンは見た目で相手を判断するタイプの人間ではないが、この様子を見て何となく察した。

 アリスはどうやらかなり美人……それもクールビューティ系に見られているようだ。

(中身はどうしようもないほどのブラコンっすけど、ね)

 アニキは気づいてないようっすけど……、とシフォンが思っている間にアリスは人集りを抜けて出てきていた。

(わたくし)もこれから戻るところですの。ご一緒しても?」

 見ると背中には大量の荷物を背負っていた、どうやら前の宿を撤収してきたようだ。

「……どーせゴール地点は同じっすから……」

 シフォンがそう答えると、アリスは余裕たっぷりに微笑んだ。


(あぁ、やっぱめんどくさいっす……)


 もう何もかも諦めたシフォンは盛大にため息をついた。

 後編は若干シリアスな上に短くなる予定です

 ……あくまでも「予定」なので、さてさてどうなることやら……

 たぶん次回は10月22日更新です!

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