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あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
墾田永年私財法 しょーり
95/189

ほけんたいく

「醜い戦いっつったって、何やるんだ? どうすればいいんかわかんね」


 首を傾げて、短距離走は頭を掻いた。


「自分が勝者であるということを認めさせれば、投票なんてしなくても勝者になれるのよね。他の人を全員棄権に追い込めば、絶対的な勝利。いいとは思わないかしら」


 冗談かと思ったが、墾田ちゃんだから他の皆は言い切れなかった。

 皆さすがに冗談だとは思っているが、自信を持っていうことは出来なかった。


 なぜなら、墾田ちゃんは笑っていたから。


 彼女の笑いは実に妖しく、本当に棄権へと追い込んで行きそうだった。

 だからこそ、恐れるような素振りは見せちゃいけないと考えた。


「それ、いい。潰し合う」


 完全な無表情で、色彩は墾田ちゃんに同意の意を示すような言葉を発した。

 まるで最初に戻ってしまったかのような、冷たい無表情を浮かべている。


「そんじゃ、自分が得意なことに持っていけばいいんだね。自分の担当教科で勝負すれば、敗北は絶対に有り得ない。ほら、ミスターエックスくんみたいにね」


 ニヤッと笑い、パイはミスターの方をちらっと見る。


 それに一瞬怯えるような表情を見せたが、ミスターは自信気に笑っていた。

 彼にしては珍しく、不安な表情に自信が見え隠れしていたんだ。

 ということは、かなり自信があるということである。そうでもなければ、彼の表情に自信なんて浮かばないから。


 それを感じ、パイも少し不安を見せる。

 しかし彼だって、それを表情に出したりはしない。


 素直ではあるが、単純ではないから。


「いかに私が醜態を晒したとしても、咎めたりはしないで下さいね? 貴方達がそうしろと仰るのですから。私は異常なまでに卑怯で醜いので、それだけは忠告しておきます」


 普段通りの微笑みで、かあさんはぺこりと頭を下げた。


「そんなの知ってるよ。初めてあんたを見たときから、すぐにわかったしずっと思ってるよ」


 それに対し、墾田ちゃんは馬鹿にするように言って鼻で笑う。

 少なからず腹は立てたが、かあさんはそれを全く顔に出さない。


 二人の攻防は続くかと思われたが、続かせなかった。


 自分たちが不利に立つのが二人ともわかっていたから。

 醜態や欲を晒したとしても、性格の悪さは隠そうと思ったから。


「きゃぁっ」


 全員が防御の体勢に入ってしまっていたので、かあさんが動いた。


 シャープに触れたタイミングで、わざと悲鳴を上げて転んで見せた。


 彼女はそうしようとしたのだが、思わぬ邪魔が入った。

 短距離走である。


「大丈夫か? 怪我はないよな」


 転ぶ前に、かあさんの体を支えてしまったのである。

 だからかあさんは倒れることなく、アピールすることも出来なかった。彼は優しさのつもりで取った行動だが、彼女の計画の妨害という結果に終わった。


 結局かあさんの計画は、自分のイメージアップに行ったのに短距離走のイメージアップを助けてしまう。

 誰にもばれないように、小さく彼女は舌打ちをした。


「私が悪いのです。ごめんなさいね」


 短距離走の得意は勝利へ繋がった。

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