ぎじゅつかていか
「喧嘩ってのは、もう終わりにしたいんだ。仲良く争うのも、それはそれで子供らしくていいわ。でも、どちらかにしない? 仲良く争い友情を深めるか、醜く汚く本気で潰し合うか」
かんなが笑顔で言ったあと、玉結びが怪しい微笑みを浮かべた。
「そんじゃ、今回は醜い争いをやってみる? さあて、何で戦おうかしら」
目を輝かせ、墾田ちゃんがそう言った。
彼女がここまで興味を持つと言うのは、ある意味珍しいことだろう。
性格が悪いとかではない。
墾田永年私財法。
彼女は、人間の醜さを見るのが好きであった。
そしてそれは、この中にもう一人いる。
「いいえ。仲良く、皆で仲良く勝者を決めればよいではありませんか。誰が勝ったって、最後に楽しかったと笑えるような戦いにしましょう」
過酸化水素水である。
このように言ってはいるが、人間に対して研究対象以外の感情を持っていない。
優しさなんて、本当は一欠けらも持ち合わせていなかった。
「どんな戦いだって、きっと最後には友情は深まっていると思うぜ? それだったら、このグダグダよりも本気で競いたいと思う。仲良くはしたいけど、競技中に仲良ししている人なんていないし。確かに、卑怯な真似はしたくないと思うけどさ」
短距離走は、素直にいい子で。
素直に彼らしい意見を述べた。
三人が自分の意見を言ったので、他の面々もそれに続く。
「甘い戦いは嫌いです。厳しいのは怖いですし嫌いです。しかし、馴れ合いはもっとずっと嫌いです」
何かに怯えたような瞳をしていたが、ミスターもはっきりと答えた。
これはこれで、酷く彼らしい意見であった。
素直と言えば素直でもあるだろう。
「捻り潰してやりますよ、容赦はしません」
低い声を出そうとしている感じはしたが、やはり高い声で倒置は言った。
そしてその可愛らしい努力に、シャープはうっとりとしていた。
それに気付いて、当然のように倒置はシャープを冷たく睨み付ける。その視線を、シャープは嬉しそうに受け止める。
きっと、ここまでが一連の流れだろう。
「仲良く、ね? 手加減はしないけど」
色彩の答えは、なんだかはっきりしない答えに聞こえた。
しかし彼女の無表情の冷たさに、全員が彼女がどちら派なのか感じ取ることが出来た。
それほどまでに彼女は感情を表すことが出来るようになっていた。
又は、他の皆が人の表情を窺えるようになったのだろう。
「仲良くしましょうぅぉお♩」
醜い争いを求める意見が多い中、シャープはそう歌った。
かあさんに対しては皆予想通りである。
それでもシャープがこちらを選ぶと言うのは意外であった。
「仲良くしていてよ。皆で仲良ししているところ、僕が纏めてぶっ倒してやるから」
そしてパイは、いかにも彼らし過ぎるような意見を出した。
そんなことを笑顔で言うんだから、そこも彼らしいだろう。
「話し合い、全員の意見を纏めていこうか。はいはいっ」
かんなは自然に仕切り、自分の望む方へさりげなく引っ張っていく。
結論は、醜い争いを繰り広げるということに決まった。
情けや容赦の不要さも、温かい笑顔で説明した。
かんな&玉結びの得意は勝利へ繋がった。