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あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
墾田永年私財法 しょーり
93/189

びじゅつ

「今日は、何で戦おうか。そろそろうんざり、決着を付けよう」


 飽きっぽい色彩は、毎日ここに来るのもめんどくさくなっていた。


 元々彼女は、基本的に芸術と感じたものにしか興味を示さない。


 彼女が芸術と思えば徹底的に愛し、嵌り尽くす。

 しかし芸術と判断しないものに関しては、本当に興味を持たない。


 少しは付き合ってあげるが、すぐに飽きてしまう。


「そんじゃ、芸術を鑑賞しようよ。ふふっ」


 何を思ったか、パイは明らかに色彩の得意科目で喧嘩を売った。


 これは、彼の優しさだったのだ。


 勝利しようと言う気がある訳ではない。

 勝利させることで少しでも機嫌をよくさせてあげようと言う、そんな考えであった。


 彼は、彼女の態度から不機嫌さに気付いたのである。


「それで、最も自分の感じた芸術を表現出来た人の勝利。なんて、そんなのどうかな? 芸術作品を今この場に用意は出来ないけれど、記憶を辿って説明しては貰えないかい」


 お願いをすれば、ものを用意することくらい可能。

 そう。可能ではあるのだが、誰もが芸術を感じるものなんてないことはわかっていた。


 だから表現力だけでなく、想像力や多少の記憶力を必要とする方法にした。


 彼自身、それが得意と言う訳ではない。

 それでも色彩の為、そう提案したのだ。


「わかった。受けて立つ」


 自分の芸術を皆に説明出来る企画。

 それは、色彩にとって嬉しいことであった。


 どうすれば色彩が喜ぶかも、パイは完璧にわかっていたのである。


「どう、かな……」


 遂に披露の時間。


 皆、それぞれに合った方法で自分にとっての芸術を表現した。


 その中で、色彩だけは際立っていた。


 勿論、得意の絵で表現してくれた。

 感じたものをそのまま絵にするではなく、感情も入れた素晴らしい絵であった。


「恥ずかしいですね」


 照れ臭そうに、ミスターは頬を掻いた。


 色彩はミスターの絵を描いたのだ。

 自分にとっての芸術で、ミスターを。


 彼の絵を描き、それに自分が抱く感情を加えた。


 そこにいた誰もが芸術を感じた。

 誰もが芸術を感じるものなんてない、パイもその考えを捨てそうになるほどであった。


 その美しさに皆、見惚れることしか出来なかった。

 描かれたミスターも、照れ臭そうにしながらも彼女が描いた絵を見つめていた。


 色彩の得意は勝利へ繋がった。

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