表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
墾田永年私財法 しょーり
92/189

おんがく

「そうね。今日も英語で続けてみる? 小僧に負けたのが悔しくてね」


 なんだか可笑しなテンションで、シャープはそんなことを言い出した。


「ごめんなさい。小僧が勝ったりして、ごめんなさい。英語代表のくせに恥ずかしげもなく英語で戦ったりして、ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 シャープの恐怖に、ミスターは謝ることしか出来なかった。

 涙目になりながら、手で顔を覆って謝り続けた。


 彼の臆病さは、結局何も変わっていなかったのだ。


「こんなくそガキ。ギャーギャー騒いで、謝ることしか出来なくて? なんでここに来たのよ、あんたみたいなのが」


 誰にも理由はわからないが、シャープは酷く不機嫌であったのだ。


 それは、ミスターに負けたのが悔しかったからではないだろう。


 そう考えて、倒置は動くことにした。

 さすがにミスターが可哀想だと感じたのだ。


 そしてミスターがそんな目に遭っているのだから、色彩だって勿論動く。


「負けるのが悪い。五月蝿いよ? 謝る必要はない。戦おう。そして、もう一度勝てばいい」


 懸命にミスターのことを励ますが、その程度の言葉は彼の耳にすら届かない。

 ましてや、閉じてしまった心に届く筈なんかなかった。


「どうしたのですか、あなたは。嫌いですよ、そうゆう姿。落ち着いて取り戻して下さい、いつもの綺麗なあなたを」


 冷たく接するかと思ったが、倒置から出た言葉は温かいものであった。


 優しく優しく、シャープにとても優しく声を掛けてあげた。

 そんなことを倒置に言われてしまっては、シャープだって機嫌を直すしかない。


「謝るのです、あなたの得意なもので」


 必死に背伸びをしてシャープの頭を撫でると、倒置はいつものように微笑んだ。


「醜い八つ当たり、ごめんなさいぃぃい♩」


 本来なら、詩で謝るなんて相手を不快にさせても可笑しくない。

 きちんと真面目に謝れと、そう怒られても不思議ではない。


 それでも涙目だったミスターも、睨み付けていた色彩も和まされた。


 それほどまでに、綺麗な歌声であった。


「ミーも悪かったデス。ごめんなさいね」


 シャープの得意は勝利へ繋がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ