えーご
「そろそろ二人きりという話題から離れましょう。それよりも、本格的に戦闘開始デスよ」
いつまでも前回の企画について話していた。
だからミスターは新しい企画を始めようと提案したのだ。
慎重な彼。
何も考えずにそんなことを言う筈がない。
賢い彼。
自分に不利なことを言う筈がない。
しかし今回は少し、足りなかった。
「海外の文化について、話し合ってみるとかどうでしょう。戦闘開始は少しずつでいいでしょう? 激論ではなく、簡単な知識で行われる話し合い程度のものです」
ミスターだけに有利なようには見えない。
むしろ文化ならば、墾田ちゃんの方が有利であろう。
そう他の人は考えた。
だから墾田ちゃんは、なぜミスターはそんなことを言ったのかと考える。
勝負するならここまで一人に有利なものにはしない。何か自分を陥れる為の罠があるのではなかろうか、そう考えた。
彼女は深読みをしてくれたが、当のミスターは墾田ちゃんが有利なことに気付いていない。
「いいわね。喧嘩上等だわ」
自信満々に、墾田ちゃんは言う。
ミスターがなぜこんなことをしたのか、探りたかったのだ。
素直にそれに興味があった。
「……あ」
しかし今更、提案した項目が地理に当たることに気付いたミスター。
もう時既に遅し。
皆ヤル気満々、提案を取り下げなんてとんでもなかった。
そこで彼は、少し卑怯な手段に出た。
短期間ではいい手段が思い付かなかったのだ。
だからストレートに、自分の得意へと持って行った。
英語で話し合いを始めたのだ。
他の人は、文句を言っても許されたであろう。
それでも無駄なプライドで、誰も文句は言わなかった。
ミスター、色彩、墾田永年私財法、過酸化水素水。
殆んどこの四人の会話であった。
英語力で競うなら、さすがに英語代表が負ける筈がない。
「おいらが悪かったんかな。ごめんなさいね」
ミスターエックスの得意は勝利に繋がった。